今年はいくらになったかな?

 例年、この季節になると昨年の物価指数の結果が出る関係上、来年度の年金の支給額が決まる時期となっていますね。昨年もこの時期に同様のブログを書いたのですが、今年も、今年4月からの年金金額の改定がありましたので、どのようになったかを見ていきたいと思います。ちなみに、特殊な場合を除き、年金の支払い月は偶数月の15日となっていますので、改定後の年金となるのは・・・4月・5月分が支払われる6月支払い分からとなります。

 年金額の改定方法においては・・・昨年のブログで書いていますので、今回はさらっと触れていくぐらいにしよーかなぁと思います。詳しく知りたい方は下のブログか、もっと頭のいい人の書いた文章をお読みくださいませ。

過去ブログ年金の金額が決まりましたっ!

 今回は若干端折りながら、今年の年金額を見てみたいと思います。

①年金はどんな感じで改定になるの?
②令和7年度の年金額はいくらなの?
③国民年金保険料も上がったのかなぁ?
④その他、付随して金額が上がるものはあるの?


あら?去年の年金額のブログと同じような見出しになっちゃった・・・。

①年金はどんな感じで改定になるの?

 これは去年のブログでも書きましたが、簡単におさらいしておこうと思います(おさらいしないと忘れちゃう・・・主に私が・・・w)。
 毎年の国民年金金額の改定は『780900円×前年までの改定率×今年の改定率』という計算で行われます。これに『納付月数/20歳から60歳までの月数(480月)』を掛けてそれぞれの人の国民年金の金額が決まるのですね。まぁ、この納付月数には免除(免除には全額から1/4免除まであり、それぞれで加える月数が変わります。)があったりすると、ちょっとだけ複雑になりますので、免除期間がある方は少し計算が面倒なことにますので注意ですね。ちなみに『昨年までの改定率』は1.045(104.5%)となっています。
 そして、『今年の改定率』には基本2種類あって、68歳前か後かで計算方法が変わり、それは次のような感じになります。

・68歳前(67歳までの改定率)
昨年の消費者物価指数 + 2~4年前(直近3年度平均)の実質賃金変動率 + 可処分所得割合変化率 = 名目手取り賃金変動率

・68歳以後(68歳からの改定率)
昨年の消費者物価指数

 ざっくりの感覚で言うと、67歳までは名目手取り賃金変動率、68歳からは物価変動率を基に年金を改定する感じになるのですね。
これを前年度の改定率に掛けて求めるのですが・・・妙なルールが2つあります。
 1つは既裁定者(68歳以上の方)は基本・・・物価変動率で今年度の年金額改定率が決まるのですが、『名目手取り賃金変動率(67歳までの新規裁定者) < 物価変動率(68歳以降の既裁定者)』の場合、名目賃金変動率で年金額改定値が決まるという事になります。要するに物価変動率と名目手取り賃金変動率の低い方で既裁定者(68歳以上の方)の年金は決まっちゃうことになります。うーん・・・なんか損する方で計算しないといけないというのは・・・なーんか腑に落ちない気もするけど、こんな感じになっています。
 その改定率における物価上昇率と名目賃金変動率の関係は下の図のようになっています。

                                    厚生労働省『令和7年度の年季額改定についてお知らせします』より

 今年はどの様になっているかというと、ピンク色に塗られている⑥の状態となっています。まぁ、実際の数値としては次の段落で書いていきたいと思います。

 2つ目のルールとしては、『マクロ経済スライド』です。これが実に厄介な存在で、実質的な年金額を下げる(名目上は上がるのですが、インフレ負けする結果になります。)ルールとなります。
 どういうルールかというと・・・現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」』を上記物価や名目賃金から算出された『改定率』から差し引くルールとなっており、将来の現役世代の負担が過重にならないように緩やかに改定率を調整するものとなっています。
 確かに・・・厳しい年金財政と団塊世代が後期高齢者に突入する2025年問題の事もあり、超高齢社会な日本においては理解できる・・・くっ、理解できる制度ではあるのですが、このマクロ経済スライドルールの適用はじわじわと年金世代の受給水準を下げてしまう事になります。ただ、政府も無い袖は振れない訳で・・・その減少分は貯蓄から賄うしかないのかなぁと思ったりもします。
 ちなみにこのマクロ経済スライドは本来の『改定率』がマイナスの場合や伸びが小さく、マクロ経済スライドを適用した場合・・・マイナスになる場合は適用されません。厳しい状況の中なので良かった・・・って思うかもしれませんが、2018年から適用しなかった分のマクロ経済スライドは翌年以降に繰り越されることになっています(キャリーオーバーと呼ばれます。宝くじなどのキャリーオーバーは嬉しいのに・・・。)。とんだぬか喜びですね💦2019年、2023年は繰り越し分のマクロ経済スライドも適用され、思ったより年金額が上がらなかったという年もありました。ちなみに今年は繰り越し分はありませんので、とりあえず一安心ですね。

②令和7年度の年金額はいくらなの?

 と・・・①のようなルールの『改定率』と『マクロ経済スライド』で決まる年金額ですが、令和7年度はどうなったかというと・・・
今年の新規裁定者では・・・

昨年の物価変動率          ・・・+2.7%
2~4年前の名目手取り賃金変動率  ・・・+2.3%
マクロ経済スライドによる調整    ・・・-0.4%

今年の年金額改定率         ・・・+1.9%

昨年の改定率(1.045) × 今年の改定率(1.019) ≒ 1.065
780900円 × 1.065 ≒ 831700円(月額69308円)

となっています。令和7年度においては名目手取り賃金変動率の方が物価変動率よりも低かったこともあり、既裁定者(本来は物価変動率を参照する)、新規裁定者(本来は名目賃金変動率を参照する)のどちらも名目手取り賃金変動率を基に改定率を算出することになりました。また、これにマクロ経済スライドの調整率である0.4%を差し引いて(被保険者数の変化率-0.1%と平均余命の伸び率-0.3%を合わせたもの)、最終的には1.9%の増加という結果になりました。
 という事は令和6年度の満額の国民年金の金額が816000円(月額68000円)となっており、これが、1.9%増えるので・・・令和7年度の満額の国民年金の金額は831700円(月額69308円)となります(計算機を連続して叩いてると若干ズレるのですが、所々四捨五入が入った計算結果となっています。)

 上の数値は新規裁定者と既裁定者の一部の年金金額となっていますが、数年前に新規裁定者と既裁定者で金額がずれたことがありました。いつだったかな・・・あっ、令和5年度でした。一昨年だったんだねぇ。物忘れが激しくなったものだ。年は取りたくないなぁ・・・。という事で、2年前で68歳以上だから・・・70歳以上の方(正確には昭和31年4月1日以前生まれの方)の満額の国民年金の金額はすこーし違ったりします。どのようになったかというと・・・

昨年の物価変動率          ・・・+2.7%
2~4年前の名目手取り賃金変動率  ・・・+2.3%
マクロ経済スライドによる調整    ・・・-0.4%

今年の年金額改定率         ・・・+1.9%

昨年の改定率(1.042) × 今年の改定率(1.019) ≒ 1.062
780900円 × 1.062 ≒ 829300円(月額69108円)

70歳未満の方の場合は+15700円(月額+1308円)、70歳以上の方の場合は+15600円(月額1300円)となります。うーん、この年金額のずれって・・・名目手取り賃金変動率が物価変動率より高い年がある度に発生するんだよなぁ。どんどん複雑になりそうで、なんかやるせない・・・。
 これを見ると年金額が増えるのは嬉しい事ですけど、どうしても物価負けは否めませんね。節約もしくは貯金で切り抜けなくっちゃ・・・。って、まぁ、このマクロ経済スライドなどの年金生活者に厳しいルールはいろいろ検討はあってるものの、しばらくは続きますので、まだ年金世代でない方はしっかり貯蓄・投資をして、自己防衛しておかなければいけませんね。

 厚生年金においてはお給料の額や厚生年金への加入期間によって受給額は様々なのですが、厚生労働省が出している平均的な収入のモデル(平均標準報酬45.5万円(賞与含む)で40年間勤務)の場合・・・月額232784円となっており、令和6年度から4412円増加することになります。ただ、これは本人の厚生年金+国民年金、配偶者の方の国民年金を足した金額となっており、一般的な夫婦の家計全体の年金金額という事みたいです。

③国民年金保険料も上がったのかなぁ?

 次に現役世代には苦しい・・・納付する方の国民年金保険料ですが、これも上がっています。これは名目賃金の変動に応じて改定されますので、昨年の名目賃金を考えると・・・致し方が無し・・・と言ったところでしょうか。これは令和8年度までの金額が出ており、次のような金額となっています。

基準額令和6年度令和7年度令和8年度
月額17000円16980円17510円17920円
増減+460円+530円+410円

 基準額は平成31年4月に国民年金第1号被保険者の方に産前産後の保険料免除制度が施行された事を契機に16900円だったものが、令和元年度分より100円アップし、17000円に変更となっています。
 確かにここ数年・・・名目賃金は上がっているとは言え、3年間で1400円の上昇かぁ。結構辛いものがありますね。ただ、令和元年度基準が17000円で、令和8年度が17920円だから・・・8年間で5.4%上昇と思うと、まだ何とかなる数値だとも思えますね。まぁ、今年の春闘の賃金上昇率も期待できる状況ですので・・・賃金上昇自体は嬉しい事ですが・・・国民年金の保険料アップも結構な金額となりそうな点は残念なことになりそうです。

④その他、付随して金額が上がるものはあるの?

 去年の年金金額のブログでも触れた通り、今回の年金金額改定に付随して、金額が変わったものが結構あったりします。すこーしだけ見てみたいと思います。

1.在職老齢年金
 これは支給停止調整額を引き上げるかどうかで、結構議論になっていますね。働きながら年金を頂くと、年金額が減額になるという悲しい制度です。その基準額が1万円上昇しています。この上昇自体はいま議論になっている事とは関係なく、名目賃金の上昇により変更になったものです。議論の結果・・・撤廃になるのか上限が引き上げられるのか・・・これは今後に期待ですね。
 実際の調整額の変更としては・・・下の様になっています。

在職老齢年金の支給停止調整額・・・50万円 → 51万円

 ちなみに在職老齢年金の支給停止調整額というのは・・・標準報酬月額とボーナス(月割)、厚生年金(月割・国民年金含まず)の合計がこの支給停止調整額を超えてしまうと・・・年金額が減額されて行くという仕組みで、高給取り(高給取り自体はうらやましいなぁ・・・)になればなるほど、年金額が減額されて行くという仕組みです。
 具体的に言うと・・・

月収   ・・・40万円(標準報酬月額41万円)
ボーナス ・・・120万円(月割10万円)
厚生年金 ・・・120万円(月割10万円)

の場合、その合計額は『41万円(標準報酬月額)+10万円(ボーナス)+10万円(厚生年金)』の61万円となり・・・これから支給停止調整額を引いた金額に1/2を掛けた金額が支給停止となっちゃいます。ですので、令和6年度と令和7年度を比べた場合・・・

令和6年度の場合
(61万円 - 50万円(支給停止調整額)) × 1/2 = 5.5万円

令和7年度の場合
(61万円 - 51万円(支給停止調整額)) × 1/2 = 5.0万円

と令和6年度の場合は月額5.5万円、令和7年度の場合は月額5万円の厚生年金が支給停止となっちゃいます。ちなみにこの差額に1/2した金額が厚生年金の支給額を超えてしまちゃった場合は・・・厚生年金は全額支給停止(国民年金は支給されます。)となっちゃいます。また、この全額支給停止となっちゃった場合、一定条件の年下の奥様がいらっしゃる場合に支給される加給年金も支給されなくなりますので、ダブルパンチで痛い状況となっちゃいます(一部でも厚生年金が支給される場合は加給年金も支給されます。)。
 このように引っかかると悲しい状況となってしまう在職老齢年金ですが、65歳を超えてもこれだけの高給を取れる方は結構限られるのかなぁとも思いますし、この制度の是非については・・・確かに頑張って長い間保険料納めたのに減額もしくは全額支給停止になるのは何とも切ないとも思うし、でも、高給頂いてるからなぁって思いもあるし・・・私の考え自体はふわふわしてる感じかなぁ。

2.年金生活者支援給付金
 年金で生活していらっしゃる方で、年金等の収入が低い方に対する支援金額も増額となっています。この年金生活者支援給付金には『老齢・障害・遺族』と3種類あり、それぞれに要件が違いますので、該当する可能性がある方は一度調べてみてもいいかもしれません(最後にリンクを付けておきますね。)。
 で、この金額がどのように変わったかというと・・・

老齢障害1級障害2級遺族
令和6年度5310円6638円5310円5310円
令和7年度5450円6813円5450円5450円
差額+140円+175円+140円+140円

      ※この金額は満額の月額であり、保険料納付状況で減少しちゃったりします。

 ちなみにこの上昇率は物価変動率の上昇に伴っての上昇となっています。

3.その他の給付金など
 その他の金額が変わった給付金などとしてはひとり親でお子様を養育されている方へ支給される児童扶養手当ですが、これも金額が少し上がっています。収入要件で『全部支給・一部支給』があるのですが、この金額も物価変動率の上昇に伴い、増額されています。全部支給の場合の月額は以下の通りとなっています。

第1子第2子
令和6年度45500円10750円
令和7年度46690円11030円
差額+1190円+280円

 次に特定条件の障害をお持ちの方に対する給付金もあるのですが、その給付金自体の内容は割愛しちゃいますが、金額は次のように増額となっています。

特別障害給付金特別児童扶養手当特別障害者手当障害児童福祉手当
1級2級1級2級
令和6年度55350円44280円55350円36860円28840円15690円
令和7年度56850円45480円56800円37830円29590円16100円
差額+1500円+1200円+1450円+970円+750円+410円

 と、こちらも物価変動率の上昇を基に金額が増額されている状況です。まぁ、これらの給付に当てはまる可能性があるなぁ・・・と思われる方は下にリンクを貼っておきますので、一度ご覧になってもいいかもしれません。


 と、今回は令和7年度の年金額がいくらになるかを書いてきました。去年も書いたので、毎年この時期になったらブログに書くのかしら?年中行事になりそうな気がします。まぁ、物価や賃金の上昇に合わせて年金額が上がるのは良い事なのだけど、制度の設計上、どうしても物価上昇に負けていくんだよなぁ。特にマクロ経済スライドは・・・単年で見た場合の減価率は少ないものの、毎年じわじわと効いてくるんだよなぁ。このマクロ経済スライドもどのように終わらせるか協議している最中みたいなので、出来るだけ負担の少ない形で終わらせて欲しいなぁっと思う所です。

 最後に今回のブログと関係ありそうなリンクを貼っておきますね。

厚生労働省令和7年度の年金額改定についてお知らせします
厚生労働省在職中の年金(在職老齢年金制度)
協会けんぽ令和6年度保険料月額表
厚生労働省年金生活者支援給付金制度について
こども家庭庁児童扶養手当について
厚生労働省特別障害給付金制度
厚生労働省特別児童扶養手当について
厚生労働省特別障害者手当について
厚生労働省障害児福祉手当について

おっと・・・リンクがいっぱいになっちゃった・・・。最後に需要があるかどうかわからないけど、去年の私のブログのリンクも貼っておきますね。

年金の金額が決まりましたっ!

今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。