新たな助成金が始まってます!①

 今年1月から先行して、育児等に対応した新しい助成金が新設されました。4月に令和6年度の予算が成立し、継続実施となっていますので、今回と次回でその話をしていきたいと思います。
 この助成金は『両立支援等助成金』の一つとなっており、『育児中等業務代替支援コース』と言われるものです。手続き的には結構めんどくさい(まぁ、手続きがめんどくさくない助成金なんてないんですけどね・・・。)助成金ではあるものの、育児休暇などの従業員さんの業務を代替する人に対して手当等を出した場合、支給されるものとなっており、かなり職場環境を良化してくれるのではないかと思います。同僚などからのマタハラ・パタハラの原因として、何の見返りもなく(残業になれば残業代は出るでしょうけど・・・)、育児休暇中を取っている従業員さんの業務が割り振られることにより、従来は自分の業務ではない業務が増え就業時間を圧迫する事が考えられると思います(私が勝手に穿った考え方してるだけかな?)。その代替する業務に対してこの助成金を利用して手当を出すことにより、割り振られた業務に対して正当な見返りが得られ、マタハラ・パタハラが減り、育児休暇に対する後ろめたさも減少、育児休暇の取得率が上がるのではないかと思われます。
 今回はこの『育休中等業務代替支援コース』以外に『両立支援等助成金』にはどのような種類があるのか?また、その概要はどんな感じなのか?を、次回は『育休中等業務代替支援コース』の種類と概要を中心に書いていきたいと思います。

①両立支援等助成金の種類は?
②出生時両立支援コースってどんなの?
③介護離職防止支援コースってどんなの?
④育児休業等支援コースってどんなの?
⑤柔軟な働き方選択制度支援コースってどんなの?
⑥不妊治療両立支援コースってどんなの?

①両立支援等助成金の種類は?

 両立支援等助成金は仕事と育児・介護との両立を目指して、働きながら育児・介護を行って行けるような環境づくりを目指し、女性の活躍推進のための取組を行う企業に金銭的な支援を行い、より働きやすい企業を目指す制度となっています。また、これらの助成金はすべて中小企業が対象となっていますので、大企業の方は適用されませんのでご注意ください。ちなみに中小企業の範囲は下の表の通りとなっています。

小売業(飲食含む)資本額又は出資額が5千万円以下、又は常時雇用者50人以下
サービス業資本額又は出資額が5千万円以下、又は常時雇用者100人以下
卸売業資本額又は出資額が1億円以下、又は常時雇用者100人以下
その他資本額又は出資額が3億円以下、又は常時雇用者300人以下
                                                     中小企業の範囲

 この両立支援等助成金の中身としては『出生時両立支援コース』、『介護離職防止支援コース』、『育児休業等支援コース』、『育休中等業務代替支援コース←今回新設』、『柔軟な働き方選択制度等支援コース』、『不妊治療両立支援コース』があります。育休等業務代替支援コースは次回書くとして、それ以外の5つをざっとではありますが、見てみましょう。

②出生時両立支援コースってどんなの?

 これは子育てパパ支援助成金と呼ばれるもので、奥様が出産された時に男性の従業員の方が育児休業を取りやすくするための助成金となっています。期間としては出産後8週間までとなっており、『産後パパ育休』に対応したものとなっています(産後パパ育休とは出産後8週間の内、4週間を限度に2回に分けて育休が取れる制度で、通常の育休とは分けてカウントします。)。
 出産直後は何かとバタバタしますし、奥様も不安が大きいはずです。この時期に一緒に育児を行うことにより、その後の育児の感覚をつかみ、仕事とのバランスをどのようにするか、通常の育休をどの程度取るべきかを実際の育児を体感した後に考える事ができるのではないでしょうか。

                                  厚生労働省『2024年(令和6年)度両立支援等助成金のご案内より

 助成金の金額等は上の表の様になっており、第1種では従業員さん単位となっており、1人目は20万円、2人目・3人目は10万円が支給されます。また、第2種もあり、これは事業主単位なのですが、20万円~60万円の支給となっており、プラチナくるみんに認定されていれば15万円加算されます。
 第1種の主な要件としては

・育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数設置(研修の実施、相談窓口の設置など)
 ※一人目は2つ以上、2人目は3つ以上、3人目は4つ以上
・育児休業取得者の業務を代替する従業員さんの業務見直しに関わる規定等に基づき業務体制の整
 備を実施
・出生後8週間における一定以上の育児休業の取得
 ※1人目5日(所定労働日4日)以上、2人目10日(所定労働日8日)以上、3人目14日
 (所定労働日11日)以上

となっています。
 また、第2種においては第1種の助成金が受給済みであることを前提に・・・

・育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置を複数実施(研修の実施、相談窓口の設置など)
・育児休業取得者の業務を代替する従業員さんの業務見直しに関わる規定等に基づき業務体制の整
 備を実施
・第1種(1人目)の申請をしてから3事業年度内に男性従業員さんの育児取得率が30%以上上
 昇(すでに70%を超えている場合は、その後の3事業年度の中で2年連続70%以上をキープ)
・第1種(1人目)の申請対象従業員さん以外で、男性の育児休業取得者が2人以上生じている

となります。

 男性の育児休業取得率向上は少子高齢化対策の一環として非常に重要です。というか、この取得率が増える事により、男性の育児参加、ひいては女性の負担軽減、そして女性の職場復帰の助力となっていけば、より多様な働き方が促進されるのではないかと思います。すべてを会社負担ではなく、この助成金を利用して、経費削減しながら、男性の育休取得率を上げていきたいものですね。

③介護離職防止支援コースってどんなの?

 超高齢社会に突入して久しい日本において、介護は重大な問題となっています。特に職場においては介護離職をしてしまう人も多く、そこでキャリアを中断してしまうことは非常にもったいない事となります。そこで、そのような事態を食い止めようという助成金が介護離職防止支援コースとなっています。
 具体的には『介護支援プラン』を作成し、そのプランに沿って従業員さんの円滑な介護休業の取得・職場復帰を行い、または介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両立支援制度)を行うと支給されます。
 その支給額は以下の通りとなっています。

                        厚生労働省『2024年(令和6年)度両立支援等助成金のご案内より

 支給のタイミングとしては介護休業取得時と職場復帰時(3か月後)となっており、介護休業取得時に30万円の支給、原職復帰3か月後に30万円の支給となっています。また、介護休業においては所定労働日において5日以上の休業が必要になります。介護プラン作成が必須なのですが、その介護プラン作成時と介護休業終了時に面談を行い、その面談結果を記録する必要がありますので、忘れずに行わないといけませんね。
 これに加え、職場復帰時の支給に加算される業務代替支援加算というものがあります。これは介護休業期間の代替要員を新規雇用で確保したり、周囲の社員さんに業務振替手当などを支給した場合に助成金が支給されます。代替要員の場合は20万円、手当の場合は5万円の支給となっています。
 また、『介護両立支援制度』というものもあり、これは、介護に直面する従業員さんに対して介護プランを作成し、様々な一定量以上(措置によって要件は異なります。)の介護優遇措置を行った場合に支給されます。介護支援措置には介護時における『所定外労働の制限』、『時差出勤』、『時短勤務』など8種類があり、例えば『所定外労働の制限』の場合は20日以上利用し、支給申請日まで継続雇用していることが要件となります。支給額としては1人当たり30万円となっています。
 介護保険の個別周知・環境整備にも助成金が支給されており、これは受給対象者に介護に向けた会社の取組や介護休業中の待遇の説明を書面で行い、また、介護保険に対する研修や相談体制の整備などを行った場合に加算して支給されます。しっかりと介護休業の取組を行う場合は、加算も合わせていただいた方がいいですよね。

 介護離職は会社においても人員の不足、しかも熟練の人員となると大きな損失となります。また、代替要員は難しいとしても、手当の支給は残された人の業務量増加に報いるためにも、また、介護休業を取る人が後ろめたさを感じない為にも・・・それに加え、介護ハラスメント(ケアハラ?)の芽を摘むためにも良い制度だと思います。困った時はお互い様の精神で介護休業をしっかりと取っていただき、費用面では助成金での緩和をはかり、従業員さんの会社へのコミットメントを深めていきましょう。

④育児休業等支援コースってどんなの?

 子ども・・・私にはいませんが、かわいいですよね。そんな子供を産み育てるための育児休業取得に関する助成金となります。助成金額としては以下の通りとなっています。

                        厚生労働省『2024年(令和6年)度両立支援等助成金のご案内より

 支給のタイミングとしては育児休業取得時に30万円、職場復帰時(原職に復帰後6か月の継続勤務が必要です。)に30万円となっています。
 主な支給要件としては・・・

育児休暇取得時
・育児休業取得、職場復帰についてプラン作成による支援の社内通知
・育児休業を取る従業員と面談を行い、本人の希望を確認し、結果を記録、プラン作成
・育児休業までに引継ぎを実施し、3か月以上の育児休業を取得

職場復帰時
・育児休業中に職務や業務の情報・資料の提供を行う
・育児休業終了前に面談を行い、面談結果を記録
・原則として原職に復帰させ、申請日まで6か月継続雇用

となっています。また、この助成金は有期労働者と無期労働者で1名ずつとなっていますので、複数の対象者がいる場合は注意ですね。
 これに加え、この育児取得時・復帰時の助成金を受けた事業者が『両立支援の広場(仕事と家庭の両立支援についての取組を紹介するサイト)』に一定の情報(男性の育児休暇取得率や女性の育児休暇取得率など)を公表した場合、追加で2万円の助成金を受ける事ができます。大きな金額ではありませんが、せっかく申請するのであれば、この助成も受けてみてもいいかもしれませんね。

 現在においては育児休暇はふつーに取得すると思いますので、若干手間ではありますが、これらの施策を行い、助成金で費用の一部を賄いながら、従業員さんにしっかりと子どもに愛情を注ぎながら子育てをしていただき、QOLの向上を目指して行きたいものです。

⑤柔軟な働き方選択制度支援コースってどんなの?

 柔軟な働き方・・・微妙にわかりにくいですが、従業員さんが自分に合った働き方の制度(フレックスタイム制や育児の為のテレワーク、時短勤務制度など)を拡充した会社に助成金が支給されるコースとなっています。
 助成金額としては以下の通りとなっています。

                       厚生労働省『2024年(令和6年)度両立支援等助成金のご案内より

 この柔軟な働き方選択制度としては以下のようなものがあります。

・フレックスタイム制
 始業終業時間や労働時間を労働者が決定
・時差出勤制度
 始業終業の1時間以上の繰り上げ・繰り下げ
・テレワーク等
 勤務日の半分以上利用可能、時間単位利用可能
・短時間出勤
 1日1時間以上の所定労働時間短縮・1日6時間以外の短縮機関も利用可能(6時間は・育休・
 介護休業法の原則時間)
・保育サービスの手配・費用補助
 一時的な保育サービスを手配。その費用の全部または一部を補助
・養育を容易にする休暇制度
 有給、年10日以上取得可能、時間単位取得可能な休暇制度

 これらの制度を複数導入し、従業員さんが利用した場合、助成の対象となります。この利用というのはフレックスタイム制から短時間勤務までの4つは20日以上、費用補助は5割以上で3万円以上か10万円以上、休暇制度は20時間以上となっています。
 この助成金の主な要件としては・・・

・柔軟な働き方選択制度を2つ以上導入
・柔軟な働き方選択制度の利用について支援を実施する旨の社内通知
・対象従業員さんと面談を行い、希望等を確認し、結果を記録し、業務体制の検討や利用後のキャ
 リア形成円滑化のための措置を盛り込んだプランを作成
・制度利用開始から6か月の間に一定量(上記)の制度を利用

となっています。また、異なる制度を合算することはできませんので、注意が必要ですね。この助成金においても『両立支援の広場』において一定の情報を公開すると2万円の追加助成を受けられますので、制度利用の際は検討してもいいと思います。

 やはり子育ての時期はどうしても子どもに合わせて仕事を行う必要があり、仕事との板挟みになることが多く、悩みの種になっちゃいますよね。それを解消できる制度を制定し、従業員さんの悩みを軽減する施策は重要だと思います。板挟みで悩んで退職・・・とかだといたたまれません。これを防ぐためにも、ぜひ助成金を利用しながら、子育てしながら仕事が続けられる環境を作っていきたいものですね。

⑥不妊治療両立支援コースってどんなの?

 婚姻年齢が高齢化傾向になっている現在、不妊治療は身近な存在となりつつあります。それに対する助成金制度がこの制度となっています。どのような制度かと言うと、不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療の為に利用可能な休暇制度や両立支援制度を従業員さんが利用すると支給されるものとなります。つまり、不妊治療に対する休暇などの制度を設計し、それを利用してもらったら、助成金が支給されることになります。
 その金額としては以下の様になっています。

                       厚生労働省『2024年(令和6年)ド両立支援等助成金のご案内より

 一回限りの支給ではあるものの、5日(回)以上の利用で30万円、また、5日(回)以上での支給を受け、20日以上の不妊治療休暇を連続して取得した場合、30万円の追加支給となっています。
 支給要件の主なものとしては・・・

5日(回)以上利用の場合
・不妊治療休暇制度又は両立支援制度の利用促進について社内通知
・その制度を就業規則などに規定し、社内通知
・両立支援担当者を選任し、相談に対応
・対象従業員さんに不妊治療両立支援プランを策定
・プランに基づき不妊治療休暇もしくは両立支援制度を5日(回)以上利用

連続20日以上の不妊治療休暇取得の場合
・1つの年度内に連続20日以上、不妊治療休暇を取得
・原職で復帰し、3か月以上継続勤務

となっています。
 また、両立支援制度とは所定外労働制限(残業制限)、時差出勤、時短出勤、フレックスタイム制、テレワーク等となっています。

 うーん、不妊治療はなかなかプライベートな問題でもあり、センシティブな事項となりそうですので、利用者がいるかどうか・・・難しい問題ではありそうですね。かなり従業員さんが利用するハードルは高そうですが、制度の準備はしておいても損はなさそうな感じもします。


 と・・・ここまで今年1月から始まった『育休中等業務代替支援コース』以外の両立支援等助成金の内容をざっとではありますが、見てきました。妊娠・出産は人制の一大事ではありますが、それによって、仕事を辞めてしまう、もしくはパートなどにグレードダウンさせることは会社的にも人財損失という意味で損ですし、本人のキャリア形成にもマイナスに働くと思います。このような助成金制度を上手に利用し、出産前のキャリアを継続、磨き上げて、会社も従業員さんの流出を防ぎ、従業員さんもキャリアアップを目指す・・・そんな働き方を目指したいものですね。
 『一般事業主行動計画』の作成、提出から始まり、就業規則の整備やプラン策定、様々な書類の提出など、なかなか難しい面もありますが、子育てしながら働きやすい職場環境を形成し、従業員さんの満足度上昇、人財損失の防止のために、チャレンジしてみるのもいいのではないでしょうか。
 最後に厚労省の特設ページを貼っておきますね。

厚生労働省HP・・・『子ども・子育て 事業主の方へ助成金給付のごあんない』

 次回は今年1月に新設された『育休中等業務代替支援コース』について書いていきたいと思います。
 今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。