公示地価が発表されましたっ!

 3月26日、地価公示価格が発表されました。これはその年の1月1日時点における土地の価格を全国規模で調べたもので、国土交通省が毎年この時期に発表しています。今回はこの地価公示価格の発表を受けて、地価にはどのようなものがあるのか?今回の公示地価はどうだったのか?佐賀では?鳥栖では?と言ったことを書いていきたいと思います。

①地価ってどんな種類があるの?
②全国の公示地価の傾向は?
③佐賀の公示地価の傾向は?
④鳥栖ではどうなの?

①地価ってどんな種類があるの?

 今年の公示価格の前に、ちょっとだけもったいぶって、土地の価格って複数ありますのでその種類について書いていこうと思います。そんなのいいから、はよ今年の公示地価の話をしろっ!って声も聞こえてきそうな気がしますが、とりあえず導入部分という事でお付き合いください。
 公的な土地の価格としては4種類存在します。これに実際の取引の価格(実勢価格)を入れると実際は5種類あることになります。まぁ、実際の取引価格はその都度の取引の価格ですので、省略するとして、公的な価格としては今回の『公示価格』、それを補完する『基準地価』、相続で使用する『路線価』、固定資産税の計算のもとになる『固定資産評価額』となります。
 それぞれの発表主体・時期等は下の表の様になります。

誰が決める?いつ時点の?いつ発表?どれくらいの価値?
公示地価国土交通省毎年1月1日3月下旬ほぼ実勢価格
基準地価都道府県毎年7月1日9月下旬ほぼ実勢価格
路線価国税庁毎年1月1日7月1日公示価格の80%程度
固定資産税評価額市町村(東京は都)1月1日(3年毎)4月初旬公示価格の70%程度

もうちょっと詳しく見てみると・・・

1.公示価格
 公示価格とは国土交通省が毎年発表する土地の価格で、全国約26000か所の土地の1㎡当たりの価格を発表しています。土地の価格の調べ方としては2名以上の不動産鑑定士が鑑定評価を実施、その結果を土地鑑定委員会で審査・調整します。建物等が建っている場合であっても、更地評価で評価されます。で・・・何に使われるかと言うと『一定の土地取引の指標となる』、『不動産鑑定の基準となる』、『公共事業用地の取得価格算定の基準となる』、『国土利用計画法による土地の価格査定の基準となる』となっており、土地取引の基準となる場合が多いです。また、路線価や固定資産税評価の基準ともなり、最も基本的な土地の価格となります。
 実際に土地を取引する場合も、取引土地の近隣(用途地域や現況が近いほうが望ましい)最新の公示価格を参考に、前年からの変化率と1月1日からの経過日数による微調整やその土地の特徴を考えて、価格決定の参考にすることも多く、土地取引する上では非常に参考になるデータとなります。ちなみに実勢価格は公示価格の1.1倍~1.2倍程度になることが多いのですが、何事も交渉の世界ですので、実際にいくらで売るのか(買うのか)は当人同士の合意次第となり、あくまでも、値付けの参考になるという感じでしょうか(当然、近隣土地がいくらで売れたかを参考にする場合も多いです。)。

2.基準地価
 これはほぼ公示地価と同様(半年のずれがありますので、期間経過での地価の変化がありますが・・・)の決定方法により都道府県主体で決定されます。ただし、公示地価の場合は2名以上の不動産鑑定士で調査しましたが、基準地価は1名以上となっています。また、基準地は約20000件となっており、公示地価より若干少なく、公示地価の地点と重なる地点もあれば、別の地点もあります。
 この基準地価は公示地価と同様な方法で調査される関係上、公示地価の補完的な価格となります。基準日となる日にちが半年違いますので、土地価格の変動状態を知る手掛かりとなります。

3.路線価
 路線価は相続時に使う土地の価格となっており、公示地価の約80%となっています。これにおいては『路線』価というだけあって、道路に面した土地が1㎡当たりいくらになるかを表わす方法となっています(この道路に面している土地は100千円/1㎡だよーなど・・・)。また、借地権における価値割合も書いており、借地権を持っている場合は『路線価×その割合』、底地権(土地を貸している人)を持っている人は『路線価×(1ー借地権)』の評価額となります。これに道路が2面に接しているとか、角地にあるとか、変形地であるとかで調整して、相続価格が決まってきます。ちょっと路線価図が想像しにくいので、下に国税庁のサンプル画像を貼っておきますね。

                            国税庁『財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』より

4.固定資産税評価額
 これは都道府県・市区町村に固定資産税・都市計画税を支払う時の基礎となる価格になります。公示地価の約70%となっており、3年に1回評価替えが行われますが、急激な地価下落があった場合は、修正がかけられる場合があります。基本的にはこの固定資産税評価額に1.4%を掛けた金額が固定資産税額となります。
 固定資産税評価額を知るには納税通知書についてくる『課税証明書』の価格の部分を見るか、その不動産を管轄する市区町村の役所(市役所など)に保管してある固定資産税台帳で確認することができます。ただし、納税者本人もしくは委任状を受けた人のみが閲覧でき、若干のお金が掛かる場合がありますので、注意ですね。

②全国の公示地価の傾向は?

 さて、前置きが長くなりましたが、ここからが今年の公示地価のお話です。先月26日発表された全国公示地価においては全用途平均で3年連続上昇となりました。地価が程よく上昇するのは全体経済には好影響で嬉しいような・・・手が届かない所にいくようで悲しいような・・・微妙な心情です。コロナ禍で一時下落したものの、それが収まってきたこともあり、上昇傾向となったのですね。
 では、各用途別ではどうだったかと言うと・・・

2020年2021年2022年2023年2024年
住宅地0.8%ー0.4%0.5%1.4%2.0%
商業地3.1%ー0.8%0.4%1.8%3.1%
工業地1.8%0.8%2.0%3.1%4.2%
平均1.4%ー0.5%0.6%1.6%2.3%
                                       国土交通省『地価・不動産鑑定 地価公示』より

 対前年変動率で上の図のようになっています。やはり2021年はコロナの影響により、住宅地、商業地が前年比マイナスに陥り、平均においてもマイナスの変動率となっています。そこから緩やかな回復傾向にあり、わずかずつですが上昇率が上がってきている感じです。まぁ、全体景気を考えると緩やかな上昇が望ましいですが、マイホームが遠のくと考えると複雑な心境ですね。
 ちなみに最高価格地は18年連続で東京都中央区銀座4丁目の『山野楽器銀座本店前』で1㎡当たり5570万円となっています。くぅ・・・こんなところに土地とか持ってたらと考えると・・・って、想像もつきませんね。
 また、全国での上昇率の上位には北海道千歳が多く、ラピダスの進出、インバウンドの影響が色濃く反映されているのではないかと思います。エスコンフィールドも関係してるのかしら?土地勘が無いのでよくわからない点もありますが、ラピダスの影響が大きいだろうなぁ。
 商業地においてはそれに加え、熊本の大津、菊陽といった地域が入ってきており、TSMC誘致の特需が反映された結果となっています。土地の価格というのは産業トレンドが大きくかかわってきており、なんか面白いですね。でも、熊本かぁ。大学時代住んでたんだけど・・・大きく変わっているんだろうなぁ・・・。
 ちなみに地名の後ろの番号は住宅地や商業地などでルールを決めて割り振られますが、まぁ、土地の認識番号と思っていいと思います。

順位1位2位3位4位5位
場所富良野201千歳19宮古島6千歳10帯広8
前年比27.9%23.4%21.2%20.6%20.4%
                           住宅地上昇率ベスト5(国土交通省『地価・不動産鑑定 地価公示』より)
順位1位2位3位4位5位
場所大津5-1菊陽5-1千歳5-4白馬5-1千歳5-3
前年比33.2%30.8%30.3%30.2%29.3%
                           商業地上昇率ベスト5(国土交通省『地価・不動産鑑定 地価公示』より)
③佐賀の公示地価の傾向は?

 では、佐賀はどのようになっているのでしょう。佐賀の対象地点は137地点となっており、その内訳は以下の通りとなっています。

用途住宅地宅地見込地商業地工業地
地点数901433137
                                    佐賀県HP『令和6年地価公示(佐賀分)の概要』より

 この137地点の去年と今年の対前年比変化率は以下の通りとなっており・・・

区分住宅地宅地見込地商業地工業地
令和6年1.7%5.4%2.7%10.1%
令和5年1.2%4.4%1.6%9.2%
                                    佐賀県HP『令和6年地価公示(佐賀分)の概要』より

と・・・地点が1か所しかない宅地見込地は置いておくとして、住宅地においては6年連続、商業地においても3年連続、工業地においては8年連続の上昇となっています。
 また、最高価格地は『佐賀市駅間瀬中央1丁目1-1』となっており、『黙行の像』の近くで、272000円となっています。まぁ、銀座の価格を見た後だからリーズナブルに見えますが、100㎡で2720万円・・・私ごときじゃ手も足も出ない価格となっています。ちなみに住宅地での最高額は『佐賀市八幡小路130番外』となっており、85000円/㎡となっています。ここは佐賀大和インターからちょっと市内方向へ向かったところで、もっと中心部に近い所を予想していましたので、場所的にはちょっと意外だなぁと思っちゃいました。100㎡で850万、頑張ればなんとか・・・という感じの価格となっています。
 佐賀県においても全国と同様の傾向となっており、公示地価においてもコロナ禍からの立ち直りが見られる結果となっています。

④鳥栖ではどうなの?

 では、最後に鳥栖ではどのようになっているのでしょう。鳥栖の対象地点数は23地点となっており、住宅地15、宅地見込地1、商業地4、工業地3となっています。という事は・・・佐賀県の宅地見込地と工業地はすべて鳥栖という事ですね。びっくりです。
 で、その公示地価ですが・・・今年は全23地区平均で52043円となっており、昨年からの変化率は5.1%の上昇となっています。

2021年2022年2023年2024年
対前年変化率2.1%2.6%3.3%5.1%
                           国土交通省『標準地の単位面積当たりの価格等』より数値を抜粋して計算

 また、過去4年の対前年変化率は上の表の様になっており、コロナ禍である2021年も含め、すべて公示地価は上昇しており、なかなか強い上昇率となっています。
 個別の地点ですが、23地区すべての公示地価を書くのもなんですので、独断と偏見で何件か抜粋して最近の公示地価を調べ、下の表にまとめてみました。

2020年2021年2022年2023年2024年2020年比
①本通町105000円107000円109000円110000円120000円114.3%
②田代外町44400円44800円45300円45900円48500円109.2%
③弥生が丘58400円61000円64600円67900円71000円121.6%
④神辺町15600円15800円16000円16700円17600円112.8%
                                         国土交通省『標準地の単位面積当たりの価格等』より抜粋

実際の住所は次のようになります。

①本通町1丁目字小原811番6外
 鳥栖市の公示地価の中では最高値となっていることから選んじゃいました。中央公園の南側(駅前の通り)であり、商店街の中心地となっています。西日本シティー銀行さんがあるあたりです。

②田代外町大字大木671番3
 旧市街(江戸時代の市街地)という事で選んでいます。再開発の余地が少ないからか・・・地価上昇は控えめに見えます。いろいろな所が近そうな住宅地で活用しやすそうなんだけどなぁ。場所的には田代中学校の正門の通りとなっています。

③弥生が丘6丁目104番外
 新興の住宅地という事で選んじゃいました、基山との境目ですね。新興住宅地、また、アウトレットが近いからかなぁ。結構な地価上昇率となっています。場所的にはアウトレットから下ってきたセブンイレブンさんの近くです。

④神辺町字土井内980番
 私が住んでいる町である神辺町というだけで選んじゃいました・・・が結構私の家から距離あるなぁ。地価自体は市街化調整区域(市街化を抑制するため、原則として建物が建てられない地域)という事もあり、お求めやすいものの、まずまずの上昇率ではないかと思います。場所的には17号線と長崎自動車道が交差するところの近くになります。

 と・・・鳥栖の公示地価を見てきましたが、鳥栖市は人口が増えている市でもあり、また、高速が交差し、交通の便もよく、産業的にも利便性が高い地域性もあり、地価的にも上昇傾向が強い事が分かりました。また、人口増加による需要がありますので、新興の住宅地の地価上昇率が高い傾向があり、旧市街地よりも資産効果は高くなるのかなぁ、とも感じます。まぁ、今後、金利がある世界になり、住宅ローンも組みにくくなることも想定されますので、どうなるか分からない所もありそうですが・・・。

 今回は先月の公示地価発表に絡め、全国・佐賀・鳥栖の公示地価がどのようになっているのかを書いてみました。土地は高い買い物だし、その上に建てる建物の事も考えると・・・買うのにかなり勇気がいるものです。負動産にしない為にも、買う前には近年の動向をしっかりと見極めて買いたいものですね。
私にも買う余裕があればなぁ。
 と・・・最後に国土交通省の公示地価のページ、佐賀の公示地価のページを置いておきますね。

国土交通省『地価・不動産鑑定:地価公示』
佐賀県HP『令和6年の地価公示が公表されました』

今回も乱筆乱文失礼しましたっ。