さよなら・・・慣れ親しんだ青いカード
うーん、今回の表題は・・・何のことかさっぱりわかりませんね。あっ、絵が付いているからわかるか。
実は今年の12月1日をもって健康保険証の発行が終わり、マイナ保険証に切り替わっていく事になります。あの・・・慣れ親しんだ青い健康保険証を使えるのも、そう長い期間ではありません。まぁ、マイナ保険証に関しては現在でも使えるのですけど、使用率は1桁台%と芳しくないらしく、やっぱり慣れ親しんだ健康保険証を使っているのが実情の様です。
そこで、今回は健康保険証からマイナ保険証への切り替えのスケジュール、私が考えるメリット・デメリットなどを書いていきたいと思います。
①どのようなスケジュールで切り替わるの?
②切り替えるメリットは?
③デメリットはあるの?疑問点は?
①どのようなスケジュールで切り替わりの?
今回の健康保険証(国民健康保険証等も含む)のマイナ保険証一本化のスケジュールとして・・・今年の12月2日以降は通常の青い健康保険証(国民健康保険などは青色ではないですが・・・)は発行されず、マイナ保険証一本化となります。ただ、従来の健康保険証においては最大1年間使用できることになっており、完全な一本化は来年12月2日以降の話となります。そのイメージ的には下の図のようになっています。
全国健康保険協会『マイナ保険証の移行にあたって』より
現状の健康保険証においては最大1年間使用可能となっており、来年の12月1日に経過措置が終了となります。ただし、今年の12月2日以降、退職や転職等により健康保険証が変わる場合は、マイナ保険証となり、新たに健康保険証が発行される事はない様です。
また、今年12月2日以降にマイナンバーカードをお持ちでない方や作りたくない方には経過措置として『資格確認証』が発行されます。有効期限は4~5年の予定となっていますが、そもそもマイナンバーカードを作るかどうかは任意ですので・・・その後はどうなっちゃうんだろ?って思っちゃいますね。その頃にはマイナンバーカード強制になるのかなぁ・・・。
この資格確認証ですが、発行に時間がかかる(特に職権での発行は2か月程度かかるとの事)らしいので、マイナ保険証を希望しない方は早めに備えておく必要がありそうです。その資格確認証の記載事項とレイアウトイメージは下の図のようになっています。なんか・・・今までの健康保険証とあまり変わらないイメージですね。
全国健康保険協会『マイナ保険証の移行にあたって』より
このマイナ保険証への一本化に先立って、現状において健康保険証を持ってらっしゃる方に『資格情報のお知らせ』という書類が送付されるとのことです。これは今年の9月(今年5月中旬以降入社の場合は来年1月)ごろに会社に送られるようですので、この書類を見て、資格情報に間違いがないかを確認、間違いがある場合は、保険者へ連絡をするようになるようです。その書類のイメージは下の様になります。
全国健康保険協会『マイナ保険証の移行にあたって』より
この書面はマイナンバーを提出されている人の書面となるのですが、マイナンバーを提出されていない方への書面もあります。が・・・まぁ、それはマイナンバー下4桁の確認の所に、『マイナンバー登録してね?』って書いてあるものになります。この書面の左下の部分は重要になりますので、確認した後は、切り取ってしっかりと保存もしくは持ち歩くようにする必要があります。
という事で、今回のマイナ保険証一本化のファーストステップとしては、この『資格情報のお知らせ』から始まるみたいです。会社の総務の方は、秋口には従業員さん全員分のお知らせが届きますので、しっかりと各従業員の方にお渡しするようにしましょう。
②切り替えるメリットは?
さて、マイナンバーカードが任意であることを考えると、混乱必至に思えるマイナ保険証ですが、マイナ保険証を使用するメリットはあるのでしょうか?まぁ、結構あったりします・・・が、これは一本化によるメリットではなく、使用するメリットだからなぁ。一本化とは別の話かも。
メリット1 病院間の情報共有が得られます。
このメリットは私達診療を受ける人は直接恩恵を感じづらいのですが、診療情報や処方箋などの情報が病院間で共有されます。これが共有されることにより、今までの病院でどのような診療を行っていたか、どんなお薬を処方されているのかなどが把握されることにより、病院等が変わっても重複したお薬の処方や、飲み合わせによる健康被害等を防ぐことができます。診療自体も診療情報が共有化される事により、スムーズに進むことが期待されます。
メリット2 窓口負担がすこーしだけお安くなります。
これはマイナ保険証導入当初はマイナ保険証の方が窓口負担が高いという状況もありました。ですが、現状においてはマイナ保険証を使ったほうが現行の健康保険証を使った時よりほんの少しだけですが、お安くなります。いずれ青い健康保険証は無くなりますので、現状はメリットであっても、将来的にはメリットにはならないのかなぁ。まぁ、『資格確認証』を使うよりはお安くなるはずです。
現状におけるマイナ保険証による窓口負担の減少は以下の表の通りとなっています。
マイナ保険証 | 健康保険証 | |||
点数 | 3割負担だと? | 点数 | 3割負担だと? | |
初診 | 1点 | 3円 | 3点 | 9円 |
再診 | 1点 | 3円 | 2点 | 6円 |
マイナ保険証を使い、情報取得に同意した場合、初診の場合は6円、再診だと3円お得になります。まぁ、気にするような金額ではないものの・・・すこーしだけ、お得になります。
メリット3 高額療養費制度が自動的に計算されます。
健康保険や国民健康保険などには高額療養費制度と言って、月額の窓口負担が一定額を超えると、それ以上大きくは医療費負担が増えない制度が存在します。この高額療養費制度においては『ちょっとだけ上がるんじゃよ・・・入院費が』で触れていますので、興味がある方はそちらをご覧になってください。
ちょっとだけ上がるんじゃよ・・・入院費が
で、この高額療養費制度を利用する為には申請が必要で、申請を行った場合、高額療養費制度で設定された金額を超えた分が後日支給されるのですが、支給までは少なくとも3か月程度かかるようです。また、窓口支払いが高額になると想定される場合に『限度額適用認定証』を健康保険証と合わせて窓口に提出することにより、窓口での支払いが最初から自己負担限度額までとなる制度もあります。が・・・これらは事後なり・事前なりの申請が必要で、結構めんどくさかったりします。また、『限度額適用認定証』は基本1つの病気での受診のみで活用できる仕組みとなっており、複数の病気などで医療費が掛かった場合、事後に高額医療費制度の申請を行う必要があります。
これをマイナ保険証で行う事により(限度額情報の表示に同意する必要があります。)オンライン情報資格を導入している医療機関等に限られるのですが、事前申請なしで『限度額適用認定証』を窓口に提出するのと同じ効果が得られます。条件によっては若干対応できない場合もあるのですが、それだけではなく、『限度額適用認定証』ではできなかった、違う病院や通院と入院を合算して適用することができます。これは持病のお持ちの方や、大病を患った方で、度々入院・通院が必要な方にとっては大変ありがたい事ではないかと思います。
③デメリットはあるの?疑問点は?
と・・・ここまでメリットを見てきて、割と便利そうなマイナ保険証ですが、これに1本化されることによるデメリットはあるのでしょうか?
デメリットも・・・まぁまぁあったりします。
デメリット1 マイナンバーカード自体のデメリットがある。
活用が広がるマイナンバーカードですが、マイナ保険証としてではなく、マイナンバーカード自体のデメリットが挙げられます。1つはカード盗難の際の情報漏洩ですが、これはパスワードも同時に洩れちゃったりすると、勝手にマイナポータルに入られて、医療情報のみではなく、納税等の情報も駄々洩れとなります。12桁の数字だけが洩れただけなら、そこまで心配はいらないのですけどね。
また、マイナンバーカードを紛失や破損してしまい、再発行の手続きを行っている最中の場合なのですが・・・デジタル庁のQ&Aでは検討中となっており、どうなるのかなぁ・・・って感じです。一旦全額窓口負担(10割負担)とかなったら、一時的とはいえ、場合によっては結構な負担となっちゃいますね。また、現状においてはマイナンバーカードの再発行には1~2か月程度の期間が必要なのですが、Q&Aでは10日程度まで短縮するとなっています。この期間の何かしらの手当は欲しい所ですね。
デメリット2 要介護者の個人情報には注意です。
介護施設に入ってらっしゃる方の場合、現場では健康保険証を介護施設で預かり、管理しながら運用している場合が多いと思われます。健康保険証の場合は暗証番号や顔認証もなく、確認だけなので良いのですが、マイナ保険証で保健医療を受けるためには暗証番号か顔認証が必要になってきます。デメリット1で書いたようにマイナンバーカードと暗証番号があれば、広範囲の個人情報を見る事ができます。介護施設の方を信用していない訳ではありませんが、万が一悪意のある方がマイナンバーカードと暗証番号を手に入れた場合、個人情報のセキュリティ的に不味い事になってしまいます。もちろん、そんなことはないとは思いますが、これだけ多くの介護施設がある事ですし、可能性がない話ではないと思われます。また、介護施設側もそのような機密情報を預かる事に二の足を踏むでしょうし、なかなか難しい問題だと思われます。
また、それ以前に、特に認知症の方などの場合、マイナンバーカードを作る事すら難儀するのではないかという問題もあります。
しばらくは『資格確認証』でかわすとしても、将来的にはしっかりと整合性(一定条件で介護施設を認定し、認定された介護施設の場合、暗証番号なしでの運用を行う事を可能にするなど)を付けていかないと、老齢人口が増えるであろう今後においては、かなり問題化しそうな感じがします。
デメリット3 利用できない医療機関がある?
マイナ保険証を利用する為には、医療機関等が『オンライン資格確認システム』を導入する必要があります。これにおいては加入義務化とされている事もあり、ほぼほぼ加入済みとは思われますが・・・むっちゃ田舎の診療所などは、導入が遅れる可能性があります。まぁ、オンラインでの資格確認ですので、インターネットが繋がらない場合、使えないという事態もあるのですけどね。
これと同様に災害等でインターネットが繋がらなくなった場合も、マイナ保険証は使えない状況となります。これにおいてはマイナ保険証読み取り機が故障した場合も同様ですが、マイナ保険証と『資格情報のお知らせ』の左下の部分、もしくは『マイナポータルの医療保険の資格情報』の部分を照らし合わせる事で、診療を受ける事ができるようです。ただ、カードリーダー故障の場合はまだいいのですが、大規模災害などの場合は、スマホの電波状況もあやしいと思いますので、『資格情報のお知らせ』の左下の部分を切り取って持ち歩いた方が安心なのかなぁとも思います。
疑問点1 新規加入(協会けんぽなどに)したら、いつから使えるの?
新しく会社に入った、もしくは転職したなどで、健康保険の加入手続きを行った場合、いつからマイナ保険証は使えるのでしょう?従来の健康保険証の場合は、決定の通知書とカード現物が送られてきますので、現物の青い奴が届いたら、使えると分かったのですが、マイナ保険証の場合、何かしら通知は来るのでしょうか?これにおいては新規加入の場合も『資格情報のお知らせ』が会社に届く事になっていますので、それを確実に従業員の方に渡すことにより、使えるようになったことが分かるようです。ただ、もちろん健康保険証自体は付いてこず、重要度が下がるように思われますので、忘れないように従業員さんに渡す必要がありますね。
それでもやはり資格取得にはタイムラグがありますので、どうしても医療機関に掛からないといけない場合は、一旦10割負担で窓口支払いを行い、後で払い戻しを受けるか、『健康保険被保険者資格証明書』を年金事務所で交付してもらうか・・・する必要がありそうです。私たち社労士も資格取得手続きはできるだけ迅速に行い、タイムラグを極力減らす努力をより一層しなければいけませんね。
疑問点2 『資格確認書』ってどのようにして手に入れるの?
マイナンバーカードを持ってない、もしくは持ちたくない方に暫定的に発行される『資格確認書』ですが、どのようにして手に入れるのでしょうか?この資格確認書においては会社を経由してマイナ保険証を望まない方に発行することになっています。多少チェック項目などが増えそうですが、現状の健康保険証の資格取得と大きな変わりはないのではないかと思われます。
まぁ、そこまではいいのですが、会社や私たち社労士にとっては退職時の方が面倒なことになりそうです。それは『資格確認書』を持った方が有効期限内に退職された場合、『資格確認書』は会社へ返納することになっています。当然、マイナ保険証の場合はマイナンバーカードを持ったまま資格の喪失となるのですが・・・。という事は、会社や私たち社労士は退職する方の保険証の種類がマイナ保険証なのか資格確認書なのかを把握する必要があるという事です。普通、健康保険証でも会社から促されないと返納するの忘れちゃいますよね(えっ?私だけ?)。従来の健康保険証の場合、被保険者だと全員が健康保険証を持っていますので、退職時に『健康保険証返してね?』とだけ促せばよかったのですが・・・マイナ保険証と資格確認書が混在する状況においては、この人はマイナ保険証だから言わなくてもよくて、この人は資格確認書だから、返納して貰わなくっちゃ・・・っとなってしまいます。かなりめんどうですよね。社労士は直接従業員さんに促すわけでもないのですが、返納自体にはかかわりますので、ちょっとだけ頭が痛い問題となりそうです。
と・・・慣れ親しんだ健康保険証廃止、マイナ保険証一本化の話を書いてきましたが、かなり混乱しそうな感じがします。まぁ、情報の紐づけ間違いとかは総点検でほぼなくなったと信じたいところですが、それ以外にもいろいろと問題が起こりそうな予感がします。今年の12月には新規発行を止めるとのことですので、もう時間は多く残されていない状況です。私自体はすでにマイナ保険証で受診等していますが、現状においては問題ない状況です。わずかですが窓口負担もお安くなることですし、両方使える今のうちに一度、マイナ保険証での受信を練習してみてもいいかもしれませんね。
最後に協会けんぽの『マイナ保険証への移行にあたって』、デジタル庁のQ&A、厚生労働省のマイナ保険証の特集ページのリンクを置いておきますね。このブログに書いてないQ&Aなども記載してありますので、参考になりそうな気がします。
協会けんぽ『マイナ保険証への移行にあたって』
デジタル庁『よくある質問:マイナンバーカードの健康保険証利用について』
厚生労働省『マイナンバーカードの健康保険証利用について』
今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。