iDeCoとNISA・・・どっちがお得!?①
今年の初めに書いた3回のブログで新NISAについて書かせていただきました。この新NISAは投資を行う際の節税対策として大変有用なものですが、投資の節税という面においてはiDeCoという制度も見逃せません。iDeCoは年金ですので投資の性質としてはかなり違いますが、こちらも税制優遇を行いつつ運用し、将来に備えるという面においては似通った部分があります。
そこで、今回はiDeCoとはどのようなものか・・・概要を書いていき、次回、かなり複雑なiDeCoの受け取り方の選択方法、3回目でNISAとどちらがお得なのか・・・また、私が勝手に思う年代別でどの制度をどのくらい使うのがいいかを書いていきたいと思います。まぁ、あくまでも『私が勝手に思う』ですので、変なことを書く可能性も高いですが・・・。
その前に、新NISAについてですが、興味がある方は過去に書いたブログをご覧になってください。
新NISAについて①
新NISAについて②
新NISAについて③
①iDeCoってどんな制度?
②iDeCoの対象の人は?
③iDeCoの掛け金っていくらまで?
④iDeCoって何がお得なの?
⑤iDeCoの注意点は?
①iDeCoってどんな制度?
iDeCoとは正式には個人型確定拠出年金(Individual-type Defined Contribution pension plan)と言われるもので・・・って横文字打つと疲れるなぁ・・・、自分が拠出した掛け金を、自分で運用し、その結果により資産を形成する年金制度となっています。年金制度というだけあって、基本60歳まで受給することができません(50歳以降の拠出開始の場合、若干後ろ倒しとなります。)。という事は、使用用途のメインとしては長生きリスクを見越した老後資金の確保という事になるのですね。ただ、高度障害になった場合の『障害給付』、亡くなった場合の『死亡一時金』もありますので、いざという時の備えとしても使えます。今回のブログにおいては老齢給付を中心に書いていこうと思いますので、この障害給付、死亡一時金においては割愛したいと思います。
この制度は企業における確定拠出型年金(DCと呼ばれます。)の個人版と言えるもので、国民年金基金連合会が実施主体となっています。ちなみに企業年金には確定拠出型の他に確定給付型(DBと呼ばれます。)という制度があり、確定拠出型は拠出額が決まっており、受取額は運用次第、確定給付型は受取額が決まっている制度となっており、最近は企業の負担が明確な確定拠出型が退職金制度として増えている状況となっています。
具体的には各月に一定金額をiDeCoにより積み立て(実際には12月~翌11月の間で経過分の掛け金をまとめて掛ける事も可能で、それを超える金額でなければ、毎月一定額でなくても大丈夫です。)を行っていき、60歳~75歳の間で給付を頂く制度となります。何歳まで掛け金を拠出することができるのかと言うと、2022年の改正で60歳から65歳までに延長になりました。ただし、厚生年金加入者か国民年金の任意加入者のみとなっていますので、注意です。うーん、これって・・・いま議論になっている『国民年金65歳まで義務化』と絡んでいるのだろうか・・・だとしたら、ちょっといやらしい話でもありますね。
投資対象としては3~35種類(銀行や証券会社、企業型の場合は企業によって異なります。)の元本保証商品や投資信託から割合を決めて(複数選ぶことができます。)組み合わせ、積み立てたお金はその比率に沿って運用されて行きます。それを長期で行うことにより、複利効果やドルコスト平均法も利用しながら老後資金の確保を行っていく事になります。ここで注意が必要なのは・・・特に企業型なのですが、手数料が高い昔に組成された地雷?投資信託が含まれている場合がある事です。これは主に担当者が適切に投資信託の入れ替えを行っていない事から起こる現象で、しっかりと手数料とリターン・リスクを検討しながら投資信託を選定することをお勧めします。そうではなく、意図的に高い手数料の投資信託を多く組み込まれている、もしくは手数料の高い投資信託を勧める場合は・・・その銀行や証券会社でiDeCoを始めるのは考え直した方がいいでしょう。
そして、iDeCoを受け取る際ですが、年金型(5年~20年の間で選択することができます。)、一時金型(一括で受け取ります。)、複合型(年金型と一時金型をミックスすることができます。)の3通りがあります。これにおいては節税効果を考えると、かなりめんどくさい事になりますので、次のブログで書いていきたいと思います。この受け取りの開始時期ですが、60歳から75歳の間で自由に選ぶことができます。ただし、50歳以降にiDeCoの拠出を開始した場合は下の表のような感じに受け取り開始時期が遅れますので、注意してくださいね。
加入年齢 | 50歳超 | 52歳超 | 54歳超 | 56歳超 | 58歳超 | 60歳超 |
受給開始年齢 | 61歳 | 62歳 | 63歳 | 64歳 | 65歳 | 開始から5年後 |
②iDeCoの対象の人は?
①でも若干触れましたが、iDeCoの対象の人をまとめると下の表のようになります。
国民年金第1号(自営業やフリーランス、無職の方)・第2号(会社員や公務員の方)・第3号(主婦・主夫の方)の被保険者となっており、年齢制限はあるものの、現役世代のほぼすべての人が加入対象となっています。ただ、加入対象とならない例外の方もあり、農業者年金の被保険者、国民年金の免除を受けている方、マッチング拠出をしてる方などはiDeCoの加入対象とならないことになっています。
ここで、マッチング拠出という言葉が出てきましたが、マッチング拠出とは何かというと、企業型確定拠出年金に自腹で追加拠出をする制度となっており、通常、マッチング拠出の拠出分は給料天引きで行うことになります。企業型確定拠出年金に追加で拠出し、老後の保障を厚くする制度となるのですね。効果としてはiDeCoを行った場合と同等(拠出金額の制限や手数料負担など若干違いますが・・・)になりますので、マッチング拠出を行うか、iDeCoを行うかを選択する形になります。また、マッチング拠出と似た制度としてiDeCo+というものがあります。これはiDeCo(個人型)に対してて企業が拠出金をプラスする制度となっており、あくまでも掛け金の主体は個人という事になり、そのあたりが若干ですがマッチング拠出と違う部分になります。従って、マッチング拠出の場合の手数料は会社負担、iDeCo+の場合は個人負担となり、掛け金の限度なども若干変わってくることになります。
③iDeCoの掛け金っていくらまで?
iDeCoの掛け金(拠出額)の限度においては一律という事ではなく、国民年金の何号被保険者なのか?とか、会社で整備されている年金制度が何なのか?などで、下の表の様に変わってきます。
自営業やフリーランスである国民年金第1号被保険者の方は月額68000円(年額816000円)、ただし、付加年金を国民年金に付けた場合は月額67000円(年額811000円)が拠出限度額となります。1000円単位の拠出ですので、毎月同額積立の場合は月額-1000円、傾斜を付けた(毎月同額でない場合)は総額で811000円までが限度額となります。また、国民年金基金に加入されている場合は、その分を月額から差し引いた金額が限度額となります。
会社員や公務員である国民年金第2号被保険者の方は若干複雑で、企業型確定拠出年金や企業型確定給付年金などに会社が加入しているかどうかで金額が変わってきます。
会社に企業年金制度がない場合は月額23000円(年額276000円)、確定拠出年金(企業型DC)のみがある場合、月額20000円(年240000円、ただし、企業型の掛け金と合わせて55000円が限度、確定拠出年金(企業型DC)と確定給付年金(企業型DB)がある会社では月額12000円(年額144000円)、ただし、27500円から確定拠出年金(企業型DC)の掛け金分を引いた金額が限度額となります・・・。かなりめんどいですね。
また、3つ目の混在型(企業型DCと企業型DB)においては今年の12月から金額が変わったりします。どう変わるかと言うと、企業型確定拠出年金(企業型DC)のみの会社と同様に月額20000円(年額240000円)か、55000円からか企業型確定拠出年金(企業型DC)、企業型確定給付年金(企業型DB)の掛け金相当額を引いた金額の低い方が限度額となります。ですので、企業型確定給付年金(企業型DB)の掛け金相当額を知る必要があるのですね。その掛け金相当額の計算方法もあるのですが、規約に金額が記載されることになりますので、ここでは割愛させていただきます。今年の年末には一度、規約を確認する必要がありそうです。
公務員の方は月額12000円(年額144000円)、主婦・主夫の方(国民年金の第3号被保険者の方)は月額23000円(年額276000円)となっています。また、公務員の方に関しても今年12月からの金額変更が行われますので、要チェックです。
なかなか種類が多くて、自分がどのカテゴリになるのか・・・特に会社員の方は会社の年金制度によって変わりますので、チェックしてから始める必要があります。
④iDeCoって何がお得なの?
iDeCoには様々な税制の優遇があります。それは・・・『積み立て時』、『運用時』、『取り崩し時』の3段階それぞれに用意されており、大変お得な制度となっています。それぞれにどのような制度が用意されているか見て行ってみましょう。
1.積み立て時
iDeCoで積み立てを行った場合、その積み立てた金額は『小規模企業共済等掛金控除』として所得控除を受ける事ができます。これを受けられることにより、所得税、住民税における課税所得を下げる事ができ、その結果として節税効果を得る事ができます。と・・・こう書くと、まぁ、得な事は分かるけど、どの程度お得なのか分からない・・・と思われるかもしれません。そこで、具体的にどの程度お得なのか考えてみましょう。っと・・・その前に所得税は超過累進課税という課税方式になっており、課税所得金額(会社員の方はお給料から各種控除を引いた金額)の多寡で税率が変わる仕組みとなっており、その税率は下の表の通りとなっています。
課税所得金額 | 税額 |
195万円以下 | 5% |
195万円超~330万円以下 | 10%-97500円 |
330万円超~695万円以下 | 20%-427500円 |
695万円超~900万円いか | 23%-636000円 |
900万円超~1800万円以下 | 33%-1536000円 |
1800万円超~4000万円以下 | 40%-2796000円 |
4000万円超 | 45%-4796000円 |
この195万円以下の税額以外についているマイナスの金額は積み上げ方式で考える為で、例えば3番目の330万円超の区分の場合、195万円までは5%、195万円超から330万円までは10%、それ以上は20%で課税されることになり、330万円超の部分だけ20%で計算される為、その区分前の差分を差し引いている形になります。今現状においては、この早見表で計算された金額に『復興特別所得税』が2.1%加算されている状況です。
また、住民税においては均等割と所得割に分かれており、均等割は5000円標準、所得割は10%となっています。所得割における各種控除の金額は所得税と若干違いますが(住民税の方が若干控除が少ないです。)、今回の計算には関係ありませんので、割愛して計算していきたいと思います。
今回は普通の(企業年金がない・・・って普通なのかな?)サラリーマンの方の限度金額である月額23000円(年額276000円)を掛け金として拠出した場合を見ていきたいと思います。
例1)課税所得金額が600万円(税率20%)の節税額
・所得税 ・・・276000円×20%=55200円
・復興特別税 ・・・55200円×2.1%=1159円
・住民税 ・・・276000円×10%=27600円
・合計 ・・・55200円+1159円+27600円=83959円
例2)課税所得金額が150万円(税率5%)の節税額
・所得税 ・・・276000円×5%=13800円
・復興特別税 ・・・13800円×2.1%=290円
・住民税 ・・・276000円×10%=27600円
・合計 ・・・13800円+290円+27600円=41690円
となります。掛け金に対して20%税率の場合は30%強、5%の税率の場合は15%強と・・・かなり高い節税効果が見込まれます。言い直せば、それだけのディスカウント価格で投資信託などが買えるという事であり、かなり資産運用にプラスに働くのではないでしょうか。これだけを狙って、元本保証型の投資商品をiDeCoで積み立てる事も戦略上はアリだと思います(私的には長期間の投資になりますので、元本保証よりも株式重視の投資信託をお勧めしますが・・・。)。
ただし、その節税効果は課税所得金額が大きくなればなるほど大きくなるという・・・ある意味、お金持ち優遇ではないかっ!とも思える効果となっています。
2.運用時
運用時の税制優遇としては運用時の利益が非課税になることが挙げられます。通常、株式や投資信託の利益、預金利子においては所得税、住民税合わせて20.315%の税金がかかります。これが案外バカにならない金額で、私も株式投資を行っている関係上、何で負けても補填はないのに、勝った時だけ取られるんだっ!と八つ当たりしたくなる時があります(ほんとは損益通算と言って、利益と損失を相殺した後に課税されたり、3年分までは損失を繰り越すことができます。)。まぁ、八つ当たりは置いとくとして、この税金を取られないことにより、利益の金額を丸ごと再投資に充てる事ができ、福利の効果を十全に享受することができます。単年で見ると小さく見えるかもしれませんが、なっがーーーーい期間で見ると・・・とんでもなく有利に運用することができます。
例えば、毎年5%の配当金が貰える投資信託や債券等(本体の価格は変わらないものとします。)を再投資しながら運用した場合、20.315%の税金がかかった場合、税引き後の利率は3.98%、約4%となります。100万円をこの利率差で20年運用を続けた場合、・・・20年後には・・・
年利5%の場合・・・2653296円
年率4%の場合・・・2265319円
となります。100万円の元本ですら約40万円、17%以上の差が生まれてしまいます。普通の会社員さん(毎月23000円拠出)の限界まで拠出した場合、4年で到達してしまう金額ですので、iDeCoの拠出金においては100万円という金額は少なく、もっと大きな元本となる事でしょう。金額が大きくなればなるほど、また、期間が長くなればなるほど、この差は広がっていきます。という事で、この運用時非課税という税制優遇はNISAでもそうなのですが、どんどん活用していくといいのではないかと思います。
3.取り崩し時
取り崩し時においてはかなり複雑怪奇な状況になっていますので、詳しくは次のブログで書くとして・・・今回は簡単に書いていこうと思います。
受け取り時(取り崩し時)の方法としては一括で受け取る『一時金型』、5年から20年間の有期年期として受け取る『年金型』、一時金型と年金型を組み合わせた『ミックス型?』があります。
一時金型は退職所得として、年金型は雑所得として受け取ることになりますが、一時金型には退職所得控除、年金型には公的年金等控除を受ける事ができます・・・が・・・かなり考えて受け取らないと思わぬ税金が多くかかってしまうことになります。その辺は次回書いていきたいと思います。
⑤iDeCoの注意点は?
iDeCoの注意点として一番に挙げられるのは・・・これは年金であるっ!という事です。中途解約がほぼできない(できはするのですが、加入後5年以内か拠出金額が25万円以内など、厳しい条件があります。)制度となっており、なにかのライフイベントでお金が必要となった時に活用できません。あくまでも老後資金ですので、必要資金は別に用意しながら活用していかないと足元を掬われることになりますので、注意が必要です。
次にお得な制度ではあるのですが、コストが掛からないかと言うとそうではありません。
まず、新規加入時に国民年金基金連合会に支払う手数料が2829円かかります。これは1回きりの手数料なのですが、運用期間中も手数料がかかります。
これには国民年金基金連合会に支払う手数料と事務委託先金融機関(信託銀行)に支払う手数料、受付金融機関(銀行や証券会社など)に支払う手数料の3つが存在します。
この中で受付金融機関に支払う手数料は無料の所が多く、これを有料にしている金融機関はコストの関係上、避けた方が無難かもしれません。また、事務委託先金融機関に支払う手数料は『66円/月』となっており、これは掛け金を拠出してもしなくても毎月掛かる手数料となっています。これに加えて国民年金基金連合会に支払う手数料は『105円/1回の拠出ごと』となっており、毎月積み立て行った場合、毎月171円、年間で2052円の手数料を支払うことになります。年利で考える運用ですので、小さな金額に見えますが、びみょーに運用成績に影響を与えそうな感じがします。この中で国民年金基金連合に支払う105円の手数料に関しては『掛け金を拠出するごと』の手数料ですので、12月~11月の年間の拠出期間の中でまとめて拠出(例えば11月に276000円の拠出など)を行えば・・・わずかではありますが、コストを削減することも可能です。このまとめて拠出はiDeCoの年初めである12月から経過月分の掛け金をまとめて拠出するやり方で、1月なら2か月分、2月なら3か月分、11月なら12か月分をまとめて拠出することができますので、これを活用し、コストを削減することも一つの手かもしれません(ちょっと手間はかかりますが・・・)。
また、投資信託で運用を行う場合は投資信託の運用手数料もかかりますので、拠出した掛け金でどの投資信託(投資信託に限りませんが・・・)が将来性や運用手数料で有利かを考えながら投資先を選択することも重要になります。
取り崩し時の手数料ですが、事務委託先金融機関(信託銀行)に対して『440円/1回の給付ごと』かかります。仮に20年間毎月給付した場合、『20年×12か月×440円』となりますので、10万円を超える手数料となります。長期間での年金給付は安心感がありますが、手数料を考えると、ちょっと考え物ですね・・・。
これに加えて、還付時(資格がないのに掛け金を拠出した時など)にも手数料がかかりますが、これは稀なケースだと考えられますので、なかなか起こらない事態だと思います。ちなみに国民年金基金連合会と事務委託先金融機関合わせて1488円の手数料となります。
と・・・ここまでiDeCoの概要などを書いてきましたが、企業型を移管する時はどうするのか?とかまだまだ書ききらないことが数多くあります。しかしながら、なんとなーくiDeCoのイメージが沸いたのであれば、書いてよかったなぁと思います。
次回は取り崩し時のルールと注意点、また、お得に取り崩すす方法はあるのか?などを書いていきたいと思います。
最後にiDeCo公式ページと厚生労働省のiDeCoのページを置いておきますね。
iDeCo公式ページ
厚生労働省『iDeCoの概要』
では、乱筆乱文失礼しましたっ。