2024年問題について・・・お医者さん編
私たちがケガや病気をした時お世話になるお医者さん・・・この職業も2024年3月まで猶予期間が設けられていました。今回の猶予期間終了でどのように変わったのでしょうか?そして私のない頭で考えた、課題はどのようなものがあるのでしょうか。書いていってみたいと思います。
①医療に従事するお医者さんの猶予終了後の取扱い
②医業に従事するお医者さんの課題
①医業に従事するお医者さんの猶予終了後の取扱い
お医者さんの2024年問題・・・猶予終了後の取扱いはかなり複雑で、5つに扱いが分かれます。A(一般の労働者さんと同程度)、B(救急病院等)、連携B(お医者さんを派遣する病院)、C-1(臨床・専門研修)、C-2(高度技能の修得研修)となっています。
通常の病院が『A水準』、地域医療確保のため、自院内で長時間労働が必要な場合は『B水準』地域医療確保のため、派遣先での勤務を通算すると長時間労働となる場合は『連携B水準』、臨床研修医や専攻医の研修の為、長時間労働が必要となる場合は『C-1水準』、専攻医を修了したお医者さんの技能研修の為に長時間労働が必要となる場合は『C-2水準』となります。
それぞれの年間における時間外・休日労働の上限は以下の様になります。
A水準 | B水準 | 連携B水準 | C-1水準 | C-2水準 |
960時間 | 1860時間 | 1860時間 | 1860時間 | 1860時間 |
この表の時間に加え、月間100時間未満の制限(面接指導の実施により例外有)の制限もあります。あくまでも上限時間とはいえ・・・年間1860時間・・・すごいハードワークになります。命に係わる業務の為とは言え、下げた頭が上がらない状態です。
宿日直の取扱いについては、宿日直許可(労働基準監督署から許可を受けます。)を受けている場合は規制の対象となる労働時間となりませんが、宿日直許可を取っていない場合は『手待ち時間』となり、規制の対象となる労働時間に含める事になります。この許可基準は『ほとんど労働する必要がない勤務であり、あっても軽度、短時間の勤務である事。十分に睡眠が取れる事』などとなっています。この宿日直ですが、派遣先で宿日直を行う場合は、派遣先の病院が宿日直許可を取る必要があります。派遣で宿日直に来てもらっている病院は注意が必要ですね。
また、一つの病院で複数の水準においての申請をすることが可能ですが、各お医者さんがどの水準になるのかは一律に決めるのではなく、各個々人の働き方によって変わります。特にC-2基準においては分野が分かれていますので、申請する場合はどの分野を申請するのかを検討してから申請する必要があります。
この時間外・休日労働の上限ですが、研修等の自己研鑽の時間がどのように扱われるかも問題になってきます。これにおいては上司などの命令に基づく勉強会などは労働時間に含まれ、任意で参加する自己研鑽の勉強会等は含まれないことになっています。個々の研鑽がどちらに当るのか・・・曖昧になりがちですので、ルールの書面化や命令に基づく場合は書面通知するなど、しっかりとしたルールを定める必要がありそうですね。日進月歩する医療の分野において自己研鑽は非常に重要となりますので、なかなか削るに削れない部分となるのではないかと思われますので、悩ましい所です。
それに加え、勤務インターバル制度が義務化されます。これはA水準においては努力義務(36協定の上限時間が一般則(時間外労働が年720時間以内など)を越えない場合は対象外です。)、その他の水準は義務となるのですが、基本は始業から24時間以内に連続した9時間の休息時間を設けること、宿日直がある場合は始業から46時間以内に18時間の休息時間を設ける事となります。宿日直については宿日直許可がある場合で、宿日直の時間が9時間を超える場合は9時間の休息時間を取ったことになります。これにおいてはC-1の臨床研修医さんにおいては若干異なるルールがありますので、注意が必要です。
日勤 | 宿日直(許可無) | 宿日直(許可有) | |
休息時間 | 始業から24H以内に9H | 始業から46H以内に18H | 宿日直が9H以上であれば休息時間となる |
また、この休息時間にやむを得ない事情で働かなくてはならない事態が生じた場合においては、働くことは可能なのですが、翌月末までにその働いた部分の代償休息を与える必要があります。
次に面接指導ですが、月に100時間を超える時間外労働・休日労働が見込まれる場合、超える前に面接指導を行うことにより、100時間を超えて働くことができます。これにおいては、もし100時間を越えそうな場合は(80時間を超えたあたりで)、事前に『面接指導実施医師(管理者ではなく、一定の講習を受講しているお医者さん)』の面接を受ける必要があります(A水準のみ疲労の蓄積が認められなければ、100時間を超えた後、遅滞なく実施でも大丈夫です。)。これを行うことにより、勤務の状況、睡眠の状況、疲労の蓄積の状況、心身の状況を確認することになります。
②医業に従事するお医者さんの課題
お医者さんの働き方改革の問題点として、専門的な職業である事もあり、すぐには人員を増やすことができない点が大きいのではないかと思われます。その上で、何が必要かと考えた場合、『お仕事の移譲』、『デジタル技術を使った効率化』、『勤務管理の適正化』などが挙げられるのではないかと思われます。
1.お仕事の移譲
現在、お医者さんにおいては医療行為に付随する様々なお仕事をなさっていると思います。当然、今でも看護師さんなどに任せる部分は任せていると思いますが・・・
今現状においてもタスク・シフトシェアという考え方あり、特定行為研修を受けた看護師さんはお医者さんの作成した手順書により、お医者さんの判断を待たずに特定行為を行う事ができます。この特定行為においては人工呼吸管理や持続点滴中の降圧剤や利尿剤等の薬剤の投与量の調整など・・・38行為21区分あるとの事で、これらの研修を受けた看護師さんが増えてくると、お医者さんの負担軽減に繋がるのではないかと思います。まぁ、その分看護師さんの負担増加となる訳で・・・看護師さんも多忙な身・・・しっかりと人員のバランスを取りながら導入していく必要がありそうです。
また、医療事務補助者を置くことにより、電子カルテへの代行入力、問診票による病歴や症状などの聴取、日常検査に関する定型的な説明・同意書の受領などを行ってもらうと、お医者さんの労働時間短縮に繋がる事はもとより、より専門的な業務に集中することができるのではないかと思われます。
より効率的にお医者さんしかできないことに業務を集中することにより、労働時間の短縮、専門性の向上が期待されるのではないでしょうか。
2.デジタル技術を使った効率化
これは電子カルテやオンライン診療と言った、業務改善による労働時間短縮は元より、予約システムの効率化、近距離無線による看護業務の効率化・・・はたまたWeb会議と言った一般企業でも使われるデジタル技術を含めて活用する事によって、労働時間短縮や患者さんの利便性を上げる事が可能ではないかと思われます。これらにおいては初期費用が掛かる事、デジタルリテラシーが必要な事、セキュリティをしっかりとする事など・・・気をつける事もあるのですが、効率よく導入すると働き方改革に貢献することは間違いないのではないでしょうか。
3.勤怠管理の適正化
お医者さんの労務管理の申請・申告作業についてです。勤怠の打刻、休日出勤や時間外労働、緊急業務などの時に、紙などで労務管理の申告・申請を行っている事例も多いのではないでしょうか?一つ一つは少ない時間であっても、特に副業・兼業が多いお医者さんや緊急業務が多いお医者さんなどはその申請入力の業務や打刻の時間もバカになりません。ここをデジタル技術を利用し、できるだけ省力化すると労働時間短縮に貢献するのではないかと考えられます。IDカードによる打刻システムやスマートフォンなどの位置情報システムなどを利用した勤怠管理システムはお医者さんの負担を減らすと同時に打刻ミスなどのヒューマンエラーを減らすことにも繋がると思われます。しっかりと活用し、本来の仕事ではない雑用で時間を取られるのを避けたいものです。
お医者さんの労働問題を今回改めて考えてみて、その大変さに頭が下がる思いです。特にB水準以上の病院は規模の大きい中核病院となりますので、私達診療を受ける人間としては大病院の方が安心っ!という思いもありますが、地元のかかりつけの診療所にまず見てもらうことをまず考え、大病院にはその地元のお医者さんの判断で必要な時に行くように心掛けるべきですね(まぁ、いきなり大きな病院に掛かると初診料が掛かったりもするのですが・・・。)。
最後にお医者様の働き方に対する厚生労働省のページを貼っておきますね。
厚生労働省『医師の働き方改革』
次回はラスト・・・ドライバーさんの2024年問題です。
今回も乱筆乱文失礼しましたっ。