今年も結構上がるなぁ・・・。

夏の日差しもやっと柔らかくなったこの季節・・・ってもう10月に入って秋のはずだけど・・・毎年の事ではありますが、気になる事があります。
そう!最低賃金の改定ですっ!
って、まぁ、仕事柄・・・地域別最低賃金の改定には目を光らせておかないといけないのですが・・・果たして今年はどうなったのでしょうか?会社さんによっては、かなりの費用負担増となることが想定されます。
去年は中央最低賃金審査会における全国の地域別最低賃金の目安決定のお話と地方最低賃金審査会での最低賃金額決定のお話を分けてブログで書かせていただきましたが・・・今年は年金改正法案のお話が長引いた関係もあって、すでに地方最低賃金審査会の調査・審議・答申も終わっちゃって、全国各県の地域別最低賃金金額が決定してしまっていますので、両方合わせて書いちゃいたいと思います。
①中央最低賃金審査会での最低賃金の目安額はいくらだったの?
②九州各県の地域別最低賃金決定額はいくらになったの?
③いつから発効するの?
④時給を上げるなら助成金を活用しちゃおー。
①中央最低賃金審査会での最低賃金の目安額はいくらだったの?
地域別最低賃金額決定には段階があって・・・まず、中央最低賃金審査会において『諮問・調査・審議・答申』が行われ、地域別最低賃金額における上昇額の目安を地方最低賃金審査会に提示されます。
その目安を基に各県の地方最低賃金審査会で調査・審議され、『答申・決定・公示・発効』という流れになります。
では、その中央最低賃金審査会における目安額はいくらだったのでしょうか?去年は全国一律で50円の上昇目安だったのですけど、今年はA・B・Cと分けられている地域で少しだけ差がある状況となりました。ちなみに、どの県がA・B・Cなのかと言うと、下の表の様になっています。

厚生労働省『令和7年度地域別最低賃金改定の目安について』より
これを見ると・・・佐賀県はCランクの県に属するのですね。
では、今回の地域別最低賃金上昇の目安なのですが・・・A・Bランクの県では63円、Cランクの県では64円となりました。去年が50円だったことを考えると、かなりの上昇幅ですよね。まぁ、この上昇幅ですので、審議も難航し、7回も審議を重ねてまとまったようです。
では、これを受けて地域別最低賃金はどの様になったのでしょうか。次で見てみたいと思います。
②九州各県の地域別最低賃金決定額はいくらになったの?
では、①の目安を受けて、各県の地域別最低賃金はどの様になったのでしょうか?全国における加重平均は1055円(令和6年度)から1121円(令和7年度)となっており、66円の上昇となっています。率においては約6.3%の上昇、目安額から約3円ないし2円の上昇となっています。うーむ・・・やはり目安額も結構な上昇率でしたし、大幅な上昇となっています。とは言えども、石破首相(って多分、このブログアップの頃はまだ首相だよね?)は2020年台中に時給1500円を目指すとおっしゃってますし、それを考えると若干足りない上昇率になるのかなぁ。そう考えると、石破首相の最低時給についての発言って・・・かなーりハードル高いんだよなぁ><;
次に九州だけではありますが、昨年と比べ、最低賃金がどのようになったかを見て行きたいと思います。
R7年最低賃金 | R6年最低賃金 | 増加額 | 目安差 | 増加率 | |
福岡県 | 1057円 | 992円 | +65円 | +2円 | +6.6% |
佐賀県 | 1030円 | 956円 | +74円 | +10円 | +7.7% |
長崎県 | 1031円 | 953円 | +78円 | +14円 | +8.2% |
熊本県 | 1034円 | 952円 | +82円 | +18円 | +8.6% |
大分県 | 1035円 | 954円 | +81円 | +17円 | +8.5% |
宮崎県 | 1023円 | 952円 | +71円 | +7円 | +7.5% |
鹿児島県 | 1026円 | 953円 | +73円 | +9円 | +7.7% |
沖縄県 | 1023円 | 952円 | +71円 | +7円 | +7.5% |
となっています。うーん・・・福岡県以外は目安額よりも大幅な上昇となっています。どうしてだろ?よくわからない所もありますが、熊本のTSMC特需あたりが影響しているのかなぁ。謎です。また、全国的に見ても、九州と北関東・東北の各県が異常に高い上昇率(一部の県は除きますが・・・)となっています。なかなか・・・不思議な現象ですが、全体的には都市部の地域別最低賃金の上昇幅はショボくて、田舎は高めになっているという感じかなぁ。
また、ショッキングな事(どうでもいい事ではあるのですが・・・)として、去年において佐賀県は福岡県に次いで、九州で2番目に地域別最低賃金が高い県であったのに・・・熊本県・大分県・長崎県に追い抜かされ、九州内ではほぼ真ん中の最低賃金となってしまいました。悲しい事ではありますが、まぁ、佐賀県の実力としてはこんなものかなぁ・・・。
③いつから発効するの?
さて、この結構な金額が上昇する地域別最低賃金ですが、いつから発効するのでしょうか?例年だと10月の半ばぐらいには全県発効するのだけども、さてさて今年は・・・?
っと、次のようになっています。まぁ、いつもの通り九州のみの表示となっています。
発効日 | 福岡県 | 佐賀県 | 長崎県 | 熊本県 |
11月16日 | 11月21日 | 12月1日 | 1月1日 | |
発効日 | 大分県 | 宮崎県 | 鹿児島県 | 沖縄県 |
1月1日 | 11月16日 | 11月1日 | 12月1日 |
なんか・・・ばらばらだなぁ・・・。例年各県で若干のずれはあるものの、ある程度一定の時期に発効される(九州各県の令和6年の発効日は10月5日~10月17日でした。)のですが、本年度においてはかなりばらつきがある上、時期的にも後ずれしている状況となっています。ちなみに全国で一番発効日が早い県は10月1日の栃木県、一番遅い県は年明け3月1日の秋田県と群馬県になります。なんとっ!発効日に5か月間ものずれがある状況です。
うーん、これも大幅な上昇の為、県内の会社さんの準備期間を考慮した県と例年通りの期限を切った県に分かれたのかなぁ。その詳細というか思惑は不明ですが、金額と言い、発効時期と言い・・・例年とはかなり違う状況となっていますので、ご自身の住まれている県で・・・どれだけの金額、またいつから令和7年度の地域別最低賃金が発効されるかはきちんとチェックしておく必要がありそうですね。
④時給を上げるなら助成金を活用しちゃおー。
と・・・結構な金額が上がる今年の地域別最低賃金、当然働く人にとっては喜ばしい事なのですが・・・会社を運営されている方にとっては大幅なコストアップとなってしまいます。かかってしまうコストは仕方がない話ではあるものの、そのコストを緩和する手段はないでしょうか?・・・実はあったりします。まぁ、社会保険労務士の端くれである私としては厚生労働省の助成金を勧める事になるのですが・・・。
という事で、最後にこの地域別最低賃金上昇に対応した助成金を簡単にではあるものの紹介したいと思います。ただ、1番目に紹介する業務改善助成金においては締め切りが地域別最低賃金の発効日の前日(佐賀県の場合は11月20日まで)となっています。結構申請準備に時間がかかりますので、今年申請を考える場合は、かなり急がないと難しいかもしれません。でも・・・まぁ、概要ややるべきことを知っていれば、来年は余裕を持って挑めると思いますので、調べてみて無駄はないかもしれませんね。
1.業務改善助成金
これは事業所内最低賃金を上げると同時に生産性向上となる設備投資等(設備投資・コンサルティング導入・人材育成・教育訓練等)を行った場合に、その設備投資等に掛かった費用の一部を給付していただける助成金となっています。
詳しい内容はブログの最後に貼ってある厚生労働省のリンクに譲っちゃいますが、今年(間に合わなかったら来年?)の地域別最低賃金上昇に合わせた時給アップを行うのであれば、生産性の上がる機材などを購入しちゃって、その費用を援助してもらいいましょーって感じかな。
まぁ、購入する物品等の条件やらなんやら・・・結構ややこしいのですが、どうせ時給を上げないといけないのであれば、真っ先に思いつく助成金となりますので、検討する価値はあると思われます。
この助成金は下の厚生労働省からお借りした表のように時給アップ額とそれに対応する人数により、助成限度額が決められており、最大600万円までの助成金を受ける事ができます(600万円受けられるのは条件があって、その条件以外だと最大450万円となっています。)。そして、その助成率は掛かった費用の3/4(事業所内最低賃金が1000円未満の場合は4/5)となっており、かかった費用にこの助成率を掛けたものと上限金額のうち、どちらか低い方の金額が助成されます。

厚生労働省『業務改善助成金』より
ただ、この助成金には地域別最低賃金と事業所内最低賃金の差が50円以内でならないと言う縛りがあります。時給(換算)が低い人を率先的に引き上げようという意図は分かりますが、逆に考えると、安くで人を雇っている会社さんが得するのは何だかなぁ・・・と言う感じもしますね💦
また、この縛りについては・・・9月5日に緩和措置の発表があって、地域別最低賃金の大幅な上昇に伴って、地域別別最低賃金との差が50円以内ではなく、現在の地域別最低賃金を基準に今回の上昇幅までの差額内の事業所内最低賃金であれば対象になるように変わりました。これに関しては下に厚生労働省の図を出しておきますね。

厚生労働省『「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」の一環としての最低賃金の引き上げに関する支援の拡充』より
という事は佐賀県で言うと・・・今の佐賀県の地域別最低賃金が956円で・・・今年度の地域別最低賃金が1030円だから・・・従来であれば、事業所内最低賃金が1006円までの事業所が対象だったものが、1030円までの事業所が対象になる、即ち24円分対象の会社さんの事業所内最低賃金の幅が広がったという事ですね。会社さんの幅が広がったのはいいことですが・・・もうちょっと早く発表して欲しかったと思う会社さんが多かったのではないかなぁと思う次第です。
この業務改善助成金においては欲しい機材があって、最低賃金を上げないといけない会社さんにはうってつけの助成金となりますので、対象になる会社さんである場合は、ぜひ活用を考えてもいいのではないかと思います。
ただ、細かい条件等もあり、申請には細心の注意が必要になります。このブログの最後にリンクを貼っておきますので、興味のある方は内容をしっかりと読み込んで、申請を検討してくださいね。
2.キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
この助成金は非正規で働く方(期間を定めて働く方やパート、アルバイトの方など)の賃金規定等を改定して、お給料を引き上げた場合に支給される助成金となります。ですので、そもそも非正規の方がいなーーいっ・・・と言う会社さんは対象外となります。
で、どのような感じの助成金かと言うと・・・
非正規の方の賃金規定等を3%以上増額改訂し、その規程を適用させた場合に受けられる助成金となっています。この助成金は『賃金上昇率×対象人数』で助成金額が変わり、その賃金上昇率は下の表の様になっています。

厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)』より
適用人数の限度は100人までとなっており、仮に30人の非正規の方を4%賃金上昇させる賃金規定を定めた場合・・・
中小企業・・・5万円 × 30人 = 150万円
大企業 ・・・3.3万円 × 30人 = 99万円
の助成金を受ける事ができます。こちらは業務改善助成金と違い設備投資等がいらないことが利点ですが、賃金規定の策定など、小さな会社においては結構ハードルが高い感じになるのではないかと思います。賃金等級などを職務等を考慮して作成するのは小さな会社では難しい面もあるのではないかと思われます。
また、この助成金には加算があり、金額的には『職務評価の活用により賃金規定を増額改訂』、『新たに有期雇用の方に適用される昇給制度を規定』した場合には、1回限りではありますが20万円(大企業は15万円)となっています。どうせこの助成金の申請を考えるのであれば、狙って行きたいところではありますね。
この助成金も申請には細かな注意点がありますので、『キャリアップ助成金』のリンクを最後に貼っておきますので、申請をお考えの方はしっかりと読み込んでから申請した方がいいのではないかと思います。
3.その他の助成金
上記2つの助成金は賃金アップをメインとした助成金ですが、それ以外にも他の取組に付随して賃金アップを行った場合、助成金の金額がグレードアップするものがあります。名前だけぐらいの紹介となりますが、紹介しておきますね。
ⅰ)働き方改革推進支援助成金
この助成金のメインは『働き方を改革する取り組みを行うこと』となっています。ですので、賃上げメインではないのですが、賃上げオプションというか、働き方改革に取り組み、その上、賃上げを行った場合、助成額がアップする仕組みとなっています。
その働き方改革への取組というのは労働時間の短縮(具体的には36協定の特別条項における時間短縮)や勤務間インターバル制度の導入、年次有給休暇制度(計画的付与、時間単位付与+特別休暇)の拡充などとなっています。それに加え、お給料アップした場合は助成金のアップがある事になります。
ただ、この制度も業務改善助成金と同様に、『生産性向上に資する』機材等の導入が条件となっており、助成額にそれにかかった費用の3/4(一定の場合は4/5)もしくはその取り組みの上限額の内低い方となっていますので、何かしら導入したい機材がある場合か、コンサルなどを入れたかったり、研修したかったりする場合には利用したい助成金となるのではないかと思います。
ⅱ)人材開発支援助成金
これは会社さんが職業訓練等を計画的に行った場合に支給される助成金となっています。支給される金額は研修中に支払われるお給料に対する助成金と研修に対する経費に対して支払われる助成金に分かれていて、その両方に賃金要件をクリアした場合の加算が付きます。ですので、この助成金もお給料アップがメインの助成金と言うよりも、職業訓練がメインの助成金で、研修終了後にお給料アップやその研修で得られる資格手当支給などを行った場合、上乗せされる形になります。
この助成金も事前に研修の計画書を提出したりする必要があり、また、そもそも対象となる研修の必要性がある職場ではないと・・・と言う感じですので、かなり使い勝手は良くない感じもしますね。
ⅲ)人材確保等支援助成金
これもお給料アップが主要因ではなく、他の取組にプラスしてお給料をアップした場合、助成額が加算される助成金となります。
その取り組みは様々ですので、ここでは詳しくは取り上げませんが、雇用管理制度の整備であったり、建設キャリアアップシステム等の活用だったり、建設業の作業員宿舎等設置であったりと・・・従業員さんの雇用整備を行った場合、支給される助成金となっています。その助成のされ方も様々ですので、注意が必要ですが、お給料アップの加算がありますので、会社に合ったものがあれば・・・要チェックですね。
と・・・これら3つの助成金のリンクも最後に貼っておきますので、興味のある方はご覧になってくださいね。
今回は今年度の地域別最低賃金の上昇具合と、お給料上昇時に使えそうな助成金を・・・概要だけですが見てきました。やっぱり、今年も最低賃金は大幅に上がるんだなぁ・・・って所が正直な感想ではありますが、昨今の物価上昇を考えると、致し方なしっ・・・と言う感じになっちゃうのかなぁ(←どうしても考え方が会社さん寄りになってしまう><;)。
ただ、今回のような上昇率が続くとなると、社会保険の制度や所得税、住民税などの制度も一体的に考えて行かないと、いろんな制度に軋みが出てくるような感じがしてきますね。今年の所得税(一部住民税も)の改定みたいな付け焼刃で一部的な税制改正ではなく、保険料等も全部俎上に上げて、議論する必要があると思われるのだけど・・・。
っと、最後は愚痴っぽくなってしまいましたが、関連しそうなリンクを貼っておきますね。って、リンクがむっちゃ多い・・・💦
厚生労働省『令和7年度地域別最低賃金改定の目安について』
厚生労働省『全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました』
厚生労働省『業務改善助成金』
厚生労働省『キャリアアップ助成金』
厚生労働省『労働時間等の設定の改善』←真ん中あたりに働き方改革推進助成金のリンクがあります。
厚生労働省『人材開発支援助成金』
厚生労働省『人材確保支援助成金のご案内』
今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。