ちょっとだけ上がるんじゃよ・・・入院費が。

 今年の6月から病院の診療報酬の改定があります。これは物価高騰・賃金上昇、人材確保、保険料負担の影響を考慮した改定となっており、診療報酬全体においては0.88%の負担増加となっています。幅広い改定となっており、私も専門としていませんので、細かい診療報酬の改定の話はよく理解していませんが、その中に入院基本料の改定と入院時食事療養費における標準負担額の改定がありましたので、そのことについて少し書いてみたいと思います。

①入院に掛かる費用って何があるの?
②入院基本料って?そしていくらに変るの?
③入院時食事療養費って?そしていくらに変るの?
④その他かかる費用って、どんなもん?
⑤高額療養費制度って何?

①入院に掛かる費用って何があるの?

 入院・・・嫌ですよねぇ。退屈だし、料理の味薄いし、タバコやお酒飲めないし・・・って、後半は入院していなくても健康のために控えないとだめだけど・・・。
 また、入院は費用的にも多額になるのではないか?と不安になる事も多いと思います。まぁ、そこは労災保険や健康保険、民間の保険で賄う事になると思いますが、費用がかさむと生活を圧迫することがあります。そこで、まずは入院に掛かる費用にはどのようなものがあるのかを見ていき、どの程度備えるべきかを考えていきたいと思います。

1.治療費
 まず一つ目は治療費です。これは病気や怪我を治すために入院するのですから、当然に治療費は掛かる事になります。これには診療や検査、投薬、注射、点滴、術後のリハビリなどが含まれています。それぞれに点数がついており、決まった金額が掛かってくることになります。
 これらにおいては公的医療保険が適用される場合は基本3割負担(年齢、収入等により2割・1割負担もあります。)となりますが、厚生労働省が未承認の治療や投薬を行った場合、公的医療保険が適用される部分も含め混合診療となり、自由診療として全額負担となりますので、自由診療を行う場合は、金額を確認しながら行わないと、高額な請求にびっくりすることになります。
 その混合診療の中で、公的医療保険適用部分のみ3割負担となる診療が3種類あり、それらを受ける場合は、その未適用部分のみ全額負担(適用部分は3割負担)となります(保険外併用療養費と言われます。)。それらの3種類とは『評価療養』、『患者申出療養』、『選定療養』と言われ、それぞれ次のような療養となります。

評価療養
 厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養、その他の療養であって、療養の給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣が定めるものをいう・・・となっています(患者申出療養を除く)。

 なんか表現が難しいですが、厚生労働大臣が定めた先進医療であったり、治験であったり、今後保険適用になりそうな医薬品だったり・・・と保険適用になるかもだねぇという候補の医療が多く入っています。これらの治療等を行う場合は、その部分のみが全額負担となり、それ以外は保険適用となります。

患者申出療養
 高度の医療技術を用いた療養であって、当該療養を受けようとする者の申出に基づき、療養の給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣が定めるものをいう・・・となっています。

 こちらも表現は難しいですが、中身は評価療養とかなり被る部分があります。ただ、起点が違い、評価療法は医療機関が起点、患者申出療養は患者の申し出が起点となっています。主治医と相談の後に臨床研究中核病院又は特定機能病院に申出を行い、意見書を添えて、国に審査申出を行う形になります。

選定療養
 これは・・・いわゆるわがまま料と呼んでもいいかもしれません。例えば・・・同室に人がいるのはヤダ(差額ベッド代)とか、おっきい病院で初診を受けたいとか、予約診療したいっとか、金歯がいいっとか、入院の必要性が薄いのに長く入院したい・・・とかは保険適用外でいいでしょ。という制度になります。まぁ、今回の話題である入院費用においては差額ベッド代が問題になりそうだけど、このような必要以上の療養を望む場合は、その部分は全額費用負担になります。

2.入院基本料
 詳しくは次で書いていきますが、まぁ、病院の素泊まり料金みたいなものです。病院の種類によって点数(料金)は変わりますが、この入院基本料と前述の治療費においては、保険適用の場合、3割負担となります。

3.食事代
 私も、一度倒れて入院したことがあるけど・・・楽しみがないっ!食事ぐらいしか楽しみがないっ・・・って、血圧が悪さしてたので、病院食も味が特に薄く味気なかったけど、それでも楽しみだった覚えがあります。これにおいては3割負担ではないのですが、公的保険から補助が出ており、一定の負担額で抑えられるようになっています。この金額が今回若干値上げになったのですが、後程書いていこうと思います。

4.差額ベッド代
 やっぱ、入院は不便だし、隣の人を気にしながら寝起きしたくなーいって・・・みんな思っているのではないでしょうか。ただ悲しいかな・・・欲求には費用が掛かるという事で、一人部屋でよりよい病院ライフ?を送るにはお金が掛かるのです。この差額ベッド代においては病院においてまちまちな部分があります。一人部屋を希望する場合はどれくらいの費用が掛かるのかはしっかりと確認しましょう。ちなみに・・・この差額ベッド代は上記の『選定療養』にあたり、保険適用外となります。

5.消耗品・交通費など
 これは直接入院とは関係ない出費ですが、クリーニング費や消耗品購入などのコマかい出費が案外掛かっちゃったりします。やっぱ、退屈だからいろいろ買いたくなるよねぇ。また、お見舞い等を頻繁に行う場合は、その交通費やお土産代もかかる事でしょう。これらにおいては当然、保険適用などある訳なく、実費払いとなります。

②入院基本料って?そしていくらに変るの?

 上で少しだけ触れた入院基本料です。まぁ、病院の素泊まり代と書きましたが・・・その中には『入院時医学管理料』、『看護料』、『室料・入院環境料』の3つが含まれます。それらの内容としては以下のような感じです。また、重症患者等の受け入れ状況によっても、入院基本料が分かれます。

入院時医学管理料とは・・・療養上の指導や医学的な管理、情報提供を行った場合に加算されるもので、手術や注射などは除かれます。まぁ、入院したら、お医者さんにアレコレ言われるし、その指導料と言ったところでしょうか。

看護料とは・・・やっぱ、看護師さんいっぱいいた方がいいよね。優しいし、安心だし・・・。でも、看護師さんいっぱいいると、当然費用が掛かるものです。ですので、患者さんに対する看護師さんの人数に対して費用負担が変わるようになっています。患者さん10人に対して看護師さん1人とか、患者さん15人に対して看護師さん1人とか基準があり、それによって入院基本料が変わる事になります。うーん、看護師さんいっぱいいた方が嬉しいような、費用が安い方が嬉しいような・・・微妙な感じです。

室料・入院環境料とは・・・いわゆる部屋代と思っていいのではないかと思います。まぁ、本来の意味での素泊まり代はここになるんだろうなぁ。上の2つは病院ならでは・・・という事で。

とまぁ、このようなものが入院基本料に含まれているのですが、これの点数も今年の6月から変更になっています。これにおいては一般病棟だけでなく、結核病棟、精神病棟など、細かく分かれているのですが、今回は一般病棟の点数(金額)を見てみたいと思います。
 一般病棟の入院料の種類として『急性期一般入院料』が6種類、『地域一般入院料』が3種類あり、それぞれ、下の表の様に改定されています。

種類改定前改定後
急性期一般入院料11650点1688点
急性期一般入院料21619点1644点
急性期一般入院料31545点1569点
急性期一般入院料41440点1462点
急性期一般入院料51429点1451点
急性期一般入院料61382点1404点
地域一般入院料11159点1176点
地域一般入院料21153点1170点
地域一般入院料3988点1003点
                         一般病棟入院基本料『厚生労働省 令和6年度診療報酬改定について』より

 急性期一般入院料とは患者さん10人ないし7人に対して看護職員が1人以上いる病棟に入院したときに掛かる診療報酬となっています。その中で一定の基準に従って、6段階に分かれる事になります。また、地域一般入院料とは患者さん15人もしくは13人に対して看護職員が1人以上いる病棟に入院したときに掛かる入院料となっており、看護師さんの配置と平均滞在日数によって金額が決められます。
 この表を見てみると15点~33点の点数改定が行われており、150円~330円の改定があっていることになりますね。1泊10000円~17000円、一か月入院したとすると30万円から51万円ぐらい・・・基本的にはこの金額の3割負担とはいえ、病院に泊るだけで結構なお金が掛かってしまう事がわかります。まぁ、これについては高額医療費制度で緩和されますので、それについては後で書いていきたいと思います。
 また、入院日数によって点数加算が行われます(入院日数が短いほど加算点数が高くなります。)。という事は、不謹慎な話ですが、、入院期間が短い患者さんが多いほど、病院としてはありがたいのですね。
 その他・・・様々な条件で加算されたりするのですが、そこは沼にハマりそうですので、割愛したいと思います。

③入院時食事療養費って?そしていくらに変るの?

 入院時の食事は大事です。いち早く回復するために栄養を取るのはもちろんの事、個人的には・・・それ以外入院生活の楽しみがないっ!というほど大事です。私は血圧が悪さして一度入院したことがありますが、塩分ちょー控えめで・・・味気ない食事でしたが、唯一の楽しみと言ってもいい状況でした。お見舞いとかは不定期でしたので、定期的な楽しみは・・・後はリハビリで体動かすぐらいだったかなぁ。
 それはさておき、その食費はどのようになっているのでしょう。入院基本料に含んでいると言いたいところですが、そうはならず、別に一定金額を払う事になります。一定金額が負担(標準負担額と言われます)とされ、それ以外の部分は入院時食事療養費として、保険者から医療機関に支払われます。その算出方法として・・・

厚生労働大臣の算出基準による食事療養費 - 平均的な家計の食費と比較した標準負担額 = 入院時食事療養費

となっていますが、『厚生労働大臣の算出基準による食事療養費』は平成30年から640円設定であるのだけども、今回の改定で変わったのかしら?その辺のソースを探すことができませんでしたので・・・まぁ、一定金額を食費として支払うと思っておけばいいのではないかと思います。
 その自己負担額ですが、これも今年の6月から改定され、次の表のようになっています。

                          鳥栖市HP『入院したときの食事代(入院時食事療養費)/国保より

 自己負担分である標準負担額においては住民税課税/非課税や年齢などで金額が違い、通常の課税世帯の場合、1食当たり30円の上昇、樹民税非課税世帯の場合20円、70才以上で世帯全体が住民税非課税で、所得が0円の場合は10円の上昇となります。ですので、通常の課税世帯であれば、90円/日の上昇となります。物価高騰の折でもありますし、痛い値上げではあるけど、しょうがないのかなぁ。まぁ、500円弱で栄養バランスが考えられた・・・多分私の時の様に味気ない食事ではない(と思いたい)ご飯が食べれるのはありがたい事ですね。

④その他かかる費用って、どんなもん?

 その他かかる必要としてはお見舞いの交通費やクリーニング代、暇つぶしグッズやおやつなどの購入だと思いますが、これらの出費は人それぞれですので、入院とは切っても切れない差額ベッド代の費用を見てみたいと思います。

 相部屋嫌ですよね?隣の人がいびきをかく人や歯ぎしりをする人とかだったりしたら・・・最悪です。また、自分自身が知らず知らず迷惑をかけていることもあると思います。そこで、一人部屋がいいのですが・・・入院の沙汰も金次第・・・という事で、費用を支払うことで一人部屋もしくは少人数の部屋に移る事ができます。その金額は病院によってまちまちだと思うのですが、令和4年の平均金額を出したデータがありましたので、下の表にまとめています。

何人部屋?平均徴収額/1日
1人部屋8322円
2人部屋3101円
3人部屋2826円
4人部屋2705円
平均6682円
                                     厚生労働省『主な選定療養に係る報告状況』より

 5人部屋以降は選定療養にならず、差額ベッド代は掛からない様です。また、1人部屋と2人部屋以降の金額の差(5000円以上)が激しく、やはり1人部屋はものすごく高額になる状況が伺われます。特に最高金額は385000円とちょー高額でしたので、差額ベッド代が掛かる病室を希望する場合はちゃんと金額を確認してからじゃないと・・・請求が恐ろしい事になるかもしれませんね。なんたって、平均値であっても1か月(30日)入院したら、25万円ぐらい余計に費用が掛かってしまうんだもの。

⑤高額療養費制度って何?

 さて、ここまで入院時の費用について書いてきましたが、基本的な金額だけでも結構な料金になってしまいそうです。治療費と入院基本料は通常3割負担(年齢・年収によっては2割ないし1割)になるとは言え、入院基本料だけでも1か月丸々だと9万円~15万円強・・・それに治療費は必須でかかって、食事の標準負担額、差額ベッド代、その他もろもろ・・・と考えるとかなり痛い出費となります。
 そこで、入院費・・・に限らないのですが、高額な医療費が掛かる場合、収入により支払いの限度額が決められています。高額医療費制度と言われるもので、以下の表のような区分となっています。

                             厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』より

 この制度は複数の病院であっても世帯全体でも合算できたり、できなかったり・・・するのですが、今回は入院のお話ですので、1つの病院という事で考えちゃいますね。

例えば・・・多分一番対象者が多いと思われる、70歳未満で区分ウ(年収約370万円~770万円)の年収の方で100万円(3割負担前)の入院費が掛かった場合・・・

80100円+(100万円-267000円)×1%=87430円

が支払額となります。本来の負担額が3割負担で30万円ですので、かなり負担が軽減されることになります。また、仮にこの100万円の医療費が200万円になっても、その1%の1万円の負担増となりますので、そこまで大きな増加はなく、ほぼほぼ区分別の負担額に固定されるのではないかと思われます。それに加え、1年間で4回以上の多回数適用時(仮に6月の医療費を考える際は、その年の6月(当月分)から昨年の7月までの1年間で4回以上該当)にはもっと負担減となり、下の表の様に変わります。長期入院、通院も減額された負担となり、保険適用診療の場合、青天井に医療費が掛かる事はありませんので、安心感があるのではないかと思います。

                                厚生労働省『高額療養費制度を利用される皆さまへ』より

 この高額療養費制度は70歳未満と70歳以上で分かれていますが、それぞれの区分の金額を入院費(治療費+入院基本料)が超えた場合、超えた部分が払戻されます。また、限度額適用認定証を窓口に提出した場合やマイナ保険証を利用した場合、払戻ではなく窓口負担が限度額までの支払いとなり、便利ですので、ぜひ、活用たいですね。


 さて、今回は診療報酬の改定と合わせて入院時食事療養費の改定がありましたので、ブログを書かせていただきました。で・・・診療報酬が改定され、負担増なのに・・・何で今回のブログの題名が『ちょっとだけ・・・』なのかと言うと、入院時の入院費(治療費+入院基本料)は高額になるのが常です。と・い・う・事は診療報酬が改定されても、多少上昇はあるものの、高額療養費で入院費自体はほぼ固定で押さえられると考えられます(まぁ、通常の収入であれば、9万円前後でしょうか。)。しかしながら、この高額療養費には入院時食事療養費の標準負担額は含まれていません。ですので、今年5月までは1食460円(住民税課税世帯の場合)、6月からは1食490円の標準負担額が高額療養費に加算されることになります。
 ですので、上に書いた高額療養費の例題の場合、実際の支払いは・・・87439円にプラスして食事費が掛かる事になります。丸1か月(30日計算)入院した場合、5月までは『460円×3食×30日の41400円』、6月からは『490円×3食×30日の44100円』の負担が別途かかります。ですので・・・ちょっとだけ・・・『30円×90食』の2700円だけ入院費が上がる事になります(正確には改定された治療費等の1%も上がりますが・・・。)。
 まぁ、全体の支払い費用から考えるとそこまで大きな金額ではありませんし、健康的で栄養バランスの取れた食事を提供していただいている事に感謝しながら、おいしく病院食を頂くのがいいのではないかと思います。

 ここでちょっと話がそれますが、丸1か月入院した場合、13万円程度の負担とその他雑費が掛かる事が分かりました。そこで民間の医療保険の必要度ですが・・・この出費が楽々と払える程度の資産状況であれば、必要ないのではないかと思います。一人部屋希望で、差額ベッド代等が高額になる場合は、一考の価値はあると思うのですが、そうでない場合は、その保険料をNISAなどで運用し、入院等必要な時は運用したお金から費用捻出した方がいいのではないかと思います。私自体の考え方として、『保険は万が一の時に生活がクラッシュしない為にある』と考えていますので。ただ、保険は損得だけではなく、安心感を買うという意味もあると思いますので、考え方しだいなのかもしれませんが・・・。
 しかしながら、健康保険(会社員の方が入る保険)ではなく、国民健康保険(自営業やフリーランスの方が入る保険)対象の方は、入院中の収入を保証するものがない(健康保険は傷病手当金が連続した就業不能日4日目から通算して1年6か月間、平均報酬月額の2/3給付されます。)状況となりますので、その対策は民間保険等で考えておく必要がありそうです。


 と、今回は入院時食事療養費の標準負担額改定について書かせていただきました。健康に留意しつつ(私自身の事は棚に置いておくとして・・・)、万が一、病気や怪我などで入院した場合は、公的年金の補助に感謝しつつ、栄養をしっかり考えながらおいしく?作ってくれている病院食を食べながら、療養に勤めましょう。

 最後に今回のブログに関連するリンクを置いておきますね。って厚生労働省の『令和6年診療報酬改定説明資料について』は・・・私の知識不足で申し訳ないですが、難解でよくわからない部分が多かったですね・・・。

厚生労働省『令和6年度診療報酬改定説明資料等について』
鳥栖市HP『入院したときの食事代(入院時食事療養費)/国保』
厚生労働省
『主な選定療養に係る報告状況』
厚生労働省
『高額療養費制度を利用される皆様へ』


今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。