うーん、今年度は少しだけ縮小かなぁ・・・。

令和7年4月1日よりキャリアアップ助成金の変更があっています。まぁ、この助成金は年度ごとの予算などの関係でちょくちょく変更があったりするので、変更自体は良くある話なのですが、今回、このキャリアアップ助成金の中でも人気の『正社員化コース』において助成金額の変更がありましたので、すこーしだけ書いてみたいと思います。
①キャリアアップ助成金ってどんなんだったっけ?
②正社員化コースの助成額はどんな感じに変わったの?
③重点支援対象者とは?
④他に変更点はあるの?
⑤助成金申請の流れはどうなってるの?
①キャリアアップ助成金ってどんなんだったっけ?
キャリアアップ助成金と言ったら・・・まぁ、会社を運営して、助成金を受給できないかなぁって考えたら、一番に出てくる人気の助成金ですよね。
私自身の解釈(あくまでも私自身ですよ?)としては、キャリアアップ助成金に限らず、助成金は従業員さんを雇った時や従業員さんの待遇を良化した時、働き方に柔軟性を持たせたとき、また、就職困難な方を雇った時など・・・どうしても費用が掛かってしまうものです。その費用の一部を国(雇用保険)が負担して、従業員さんの待遇を良くしたり、就職困難な方が働き甲斐を持って働いていただいたりする手助けをしていこう!という機運を高めるものだと思っています。
国の助成を得て、あまりお金を掛けずに従業員さんの待遇が良くなったり、ハンディキャップを持った方が働けるようになれば、従業員さんの満足度も上がり、会社への帰属意識も上がり、退職が減る事によって、業務効率も上がる・・・っと、上手に利用すれば従業員さんも会社もウィンウィンの関係になれると言った制度ではないかなぁと思いますので、積極的に活用していきたいところですよね。まぁ、申請は結構めんどくさかったりするのですけどね・・・。
その助成金の中でキャリアアップ助成金は有期雇用の社員さんにスポットを当てた助成金という位置取りになるのではないかなぁと思います。
でもって、今回のお話であるキャリアアップ助成金にはどのような種類があるのかというと・・・ざっくりではありますが、次のようになっています。

1.正社員化コース
今回のお話のメインとなる助成金で、非常に人気のある助成金となっています。どのような助成金かというと、有期雇用労働者(期間の定めのある労働者、例えば1年更新や半年更新など)を正社員化した場合に受ける事ができる助成金です。
非正規労働者として半年以上雇用し、就業規則や労働協約などに則った方法で正社員化した場合に助成金が支給されるものとなっています。
2.障害者正社員化コース
障害をお持ちの有期労働者等を正規雇用労働者等に転換した場合、助成金が支給されます。これの正規雇用労働者等となっているのは、多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)を含むのは正社員化コースと同様ですが、このコースでは有期雇用労働者を無期雇用労働者へ変換することも助成の対象となっています。
3.賃金規定改定コース
有期労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改訂し、その規程を適用させた場合に助成金が支給されます。助成額は賃金上昇3%以上が最低ラインですが、1%刻みで6%以上まで4段階で助成金額が決められています。春闘の賃上げ率も高く、最低賃金も上昇している昨今ですので、うまく利用しながらお給料アップを目指して行きたいですね。
4.賃金規定等共通化コース
有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定、適用した場合に支給されます。ただ、これは規程・適用した1回のみの助成となっていますので、正社員さんと有期雇用の方の賃金テーブルを一体化しようと思う時に申請する感じかなぁ。
5.賞与・退職金制度導入コース
有期雇用労働者を対象とした賞与・退職金制度を就業規則や労働協約に規定・導入し、支給又は積み立てを行った場合、支給されます。最低金額として・・・賞与は半年で50000円以上の支給、退職金は1月当たり3000円以上の積み立てを行う事が必要です。また、この助成金も1回限りの支給となっており、有期で働いていらっしゃる従業員の方などにボーナスや退職金などの制度を適用しようと思ったら、利用したい助成金となりますね。
6.社会保険適用時処遇改善コース
これは以前ブログで書いたと思いますのが、短時間労働者(パートさんなど)に社会保険を適用するための取組(手当支給・賃上げ・労働時間延長)を行い、社会保険に加入した場合に支給される助成金となっています。最長3年間の支給となりますので、結構根気強く支給申請していく必要がある助成金となっています。ただ、今の政策の流れにおいてはできるだけ社会保険の加入者を増やそうという流れですので、いずれ社会保険に入れる必要があるのであれば、助成金を頂きながら・・・と考えてもいいかもしれませんね。
まぁ、せっかくなので、お暇な方は過去ブログをご覧になってください。
過去ブログ『106万円の壁・130万円の壁?②』
上の各コースの概要を見てみると・・・このキャリアアップ助成金においては正社員ではない方を正社員化したり、お給料を上昇させたり、ボーナス・退職金の規定を設けたり、社会保険に加入させたり・・・と、非正規の社員さんの待遇改善を狙ったコースが導入されている感じですね。まぁ、これ以外にも助成金は数多くありますので、何かしら従業員さんの為になる事を行おうと思う時は条件が合うものがあるかもしれませんので、探してみるといいかもしれませんね。
②正社員化コースの助成額はどんな感じに変わったの?
毎年ちょこちょこと変更があっているキャリアップ助成金ですが、今年はどの様な変化があったのでしょう?去年は正社員化した際に57万円の助成金(半年後に1回のみ)だったのが、80万円(半年後と1年後に1回ずつの2回)に変更になり、全体的には増額だったのですが・・・。
今年においては基本は正社員化した半年後に1回のみの40万円の助成金となっており、かなり減額された感が否めません。ただし、『重点支援対象者』の場合、半年後と1年後に1回ずつの2回、40万円の支給となっていますので、正社員化する人が『重点支援対象者』に当たる場合は昨年度と変わらない支給金額となっています。また、この金額は有期雇用労働者を正社員化した場合の金額となっており、無期雇用から正社員化した場合は、半年後に30万円が基本で、『重点支援対象者』においては半年後と1年後の2回に分けて30万円ずつ、計60万円の助成額となっています。
また、これは中小企業の場合となっており、大企業では助成金額が減額となっています。
その金額を表にまとめてみると次のようになります。
中小企業 | 大企業 | |||
重点支援対象者 | それ以外 | 重点支援対象者 | それ以外 | |
有期→正社員 | 80万円(40万円×2回) | 40万円(40万円×1回) | 60万円(30万円×2回) | 30万円(30万円×1回) |
無期→正社員 | 40万円(20万円×2回) | 20万円(20万円×1回) | 30万円(15万円×2回) | 15万円(15万円×1回) |
厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)パンフレット』より抜粋
③重点支援対象者とは?
ここで問題となるのは新しい概念である『重点支援対象者』とは何ぞや?という事ですが、これは次のような人を指すようです。

重点支援対象者とは
次のどれかに該当する人です。
1.雇い入れから3年以上有期雇用労働者※
2.雇い入れから3年未満で、次のa・bのいずれにも該当する有期労働者
a.過去5年間に正規雇用者であった期間が合計1年以下
b.過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
3.派遣労働者、母子家庭の母親等、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
※)雇用された期間が5年を超える有期雇用者については無期雇用労働者とみなす。
うーん、有期雇用でずっと働き続けている(3年~5年未満)人以外は重点支援対象者にならない感じですね。という事は、基本的には有期雇用で雇った従業員さんを正社員にした場合、かなりの割合で半年後の1期のみの助成金となりそうですね。
ちなみに『重点支援対象者』の2番に該当する場合、下のような様式に対象の従業員さんに記入していただき、添付する必要があります。

厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)パンフレット』より
④他に変更点はあるの?
これは正社員化コースで1つ、それ以外で2つあるのですが、今回のお話は正社員化コースのお話ですので、それから書いていきたいと思います。
1.正社員化コースの変更点(新規学卒者の取扱いについて)
これは学校を卒業し、就職した場合にこの助成金の対象になるかどうかが明記されました。具体的には・・・

対象労働者が新規学卒者に該当し、申請事業主に雇い入れられた日から起算して1年を経過していない者については支給対象外となります。
※)新規学卒者とは・・・学校、専修学校、職業能力開発促進法第15条1項各号に掲げる施設又は職業開発総合大学校を新たに卒業しようとする者及び卒業年度の3月31日までに内定を得たものをいいます。令和7年4月1日に雇用された新規学卒者については、令和8年3月31日まで支給対象外です。
※)例えば、3月15日に卒業式を迎えたが就職先が決まっておらず、4月2日以降に就職先が決まり、5月に就職したというものについては支給対象となり得ます。
厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)パンフレット』より抜粋
うーん、新卒の学生さんにおいては、卒業後内定などが決まらないまま、4月2日を迎えて、その後に就職した場合は対象になるという事ですね。って・・・この売り手市場の就職戦線、そのような方はなかなかいないのではないかと思います。まぁ、この条件で申請する場合は、応募書類や対象の人の署名入りの申立書などが必要になりますので、この点からもなかなか難しい条件なのではないかなぁ・・・とも思います。
2.賃金規定等改定コースの変更点
これは正社員化コースではないのですが、賃金規定等改定コースでの変更点です。これにおいては賃金引上げ区分の細分化がされています。これまでは2区分であったものが、4区分へと細分化されています。
どの様になったのかというと・・・

厚生労働省『キャリアアップ助成金が変わります!』より
感覚としては3%台で抑えようとすると助成金額は少なくなり、6%以上上げようとすると助成金額が上昇すると言った感じでしょうか。今年の10月の最低賃金の上昇幅にもよりますが、その上昇率に合わせて賃金上昇を行う予定の場合・・・昨年、一昨年の上昇率を考慮に入れると・・・細分化されたものの、そこまで大きな影響はないのではないかと思います。まぁ、がんばって6%以上の賃金上昇を規定した場合は、少しだけ助成金額が上がると言った感じでしょうか。
3.キャリアアップ計画書の取扱いの簡素化
このキャリアアップ計画書というのはキャリアアップ助成金のスタートに位置するもので、これを都道府県労働局(ハローワーク)に提出することによりキャリアアップ助成金が始まるのですが、この取り扱いにおいて『認定』を受ける必要があったものが、『届け出』を行うだけで良くなりました。また、これは今年からではないのですが、その内容もかなり簡素化されています。
という事は、入り口は広くなった感じですが、中身は若干しょっぱくなったという感じでしょうか。幅広く、でも恩恵は若干落した感じの助成金にして、多くの会社さんに利用してもらうという感じに変わったのではないかと感じます。
⑤助成金申請の流れはどうなってるの?
最後に、助成金を受ける為の流れはどの様になっているのかを簡単にですが、見てみたいと思います。とはいえ、助成金を受けるにはいろいろな条件があります。ここでは簡単な流れだけを書いていますので、実際に助成を受けようと考えられたときは、しっかりとパンフレットや要綱を読み込む必要がありますので、注意です。

厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)』より
正社員化と処遇改善の各コースで若干手順が変わってきますが、最初にキャリアアップ計画書を都道府県労働局(ハローワーク)に届け出る事が最初のお仕事であることには変わりありません。
その後、正社員化コースの場合は就業規則の整備(対象従業員さんを正社員化する6か月前までに整備する必要があります。)、を行い、正社員化、そして半年間(重点支援対象者の場合は1年間)お給料を支払い、支給申請を行います。この重点支援対象者の場合は半年ごとに申請する必要がありますので注意ですね。
処遇改善支援コースの場合は、キャリアアップ計画書届け出の後に各種取り組みを行い、その取り組みの通りに6か月お給料を払った後、支給申請という形になります。まぁ、その取り組みは各種コースによって異なりますが、非正規の従業員さんのプラスになる取組となります。
と・・・今回は今年4月から変更となったキャリアアップ助成金の正社員化コースを中心に書いてきました。ただ正社員化するのではなく、就業規則の改定やその就業規則に沿った正社員化、また、提出書類の多さなど・・・腰が重くなる要因が多い助成金(助成金申請はだいたいめんどくさいものです。)ですが、従業員さんの処遇を上げて職場に満足してもらいつつ、その費用を助成してもらえるありがたい助成金ですので、しっかりと計画を練って助成申請したいものですね。
最後に、今回のブログに関係ありそうなリンクを貼っておきますね。って、全部厚生労働省のキャリアアップ助成金のページなのだけども・・・。
厚生労働省『キャリアアップ助成金』
厚生労働省『キャリアアップ助成金のご案内(パンフレット)』
厚生労働省『厚生労働省『キャリアアップ助成金が変わります!』
今回も乱筆乱文、失礼しました。