あなたは繰り上げ・繰り下げ・・・どっち派?おまけ

 今回は完全に蛇足なのですが・・・個人的な興味もあり、繰り上げ受給や本来の受給年齢(65歳)から受給を開始し、そこから繰り下げ受給開始年齢まで積立投資を行い、繰り下げ受給年齢から取り崩しを行った場合、どの程度の利回りがあれば繰り下げ受給と同等の効果が得られるのかを考えてみたいと思います。
 まぁ、本来であれば安心・安全を最重視するべき年金ですので、それを投資に回すというのは恐ろしくてできない事ではあるのですが、月あたり0.4%減の繰り上げ受給、逆に月あたり0.7%増の繰り下げ受給がどの程度お得なのかを考えてみるのも、繰り上げ・繰り下げ受給選択の1判断として役に立つかもしれません(←無理やりな理由・・・)。

 という事で、今回は前々回の①のブログで算出した額面金額と②のブログで算出した手取り金額をベースに考え、積立シミュレーションと取り崩しシミュレーションを使って、繰り上げ支給と繰り下げ支給が利回り何%に相当するかを見てみたいと思います。
 今回のシミュレーションにおいては大和アセットマネジメントの『人生100年シミュレーション』を使わせていただきました。感謝感謝ですー。

条件としては・・・

60歳繰り上げ受給時
・60歳から頂く減額された年金を本来受給もしくは繰り下げ受給時まで積立投資を行う。
(65歳時受給開始と比較する時は5年間、70歳時受給開始と比較する時は10年間、75歳時受給開始と比較する時は15年間)
・各受給開始時が到来した場合は設定した利回りで取り崩しを行い、95歳まで資金が持つか、95歳まで到達した場合、その時いくら資金が残っているかを確認。
・投資の利回りは1%、3%、5%、7%の4種類を想定(まぁ、国債、債券、債券+株式、株式のみ・・・ぐらいのイメージでしょうか。)。
・額面金額は120万円、手取り金額は60歳から頂ける111.5万円で計算。

65歳からの本来受給
・基本は60歳からと同様の考え方で、70歳、75歳時と比較。
・額面金額は158万円、手取り金額は151.3万円で計算。

上記のような感じで額面金額と手取り金額の2通りで考えていこうと思います(具体的には前回、前々回のブログ①・②で計算した下の表の金額(1000円未満は四捨五入)となります。)。また、運用益に対する税金などはNISA口座などもある事ですし、考慮しないことにしようと思います。

受給開始年齢60歳60歳(65歳以降)65歳70歳75歳
額面年金額120万円120万円158万円224万円291万円
手取り現金額111.5万円115.9万円151.3万円193.1万円244.9万円

①60歳からの繰り上げ受給の場合(額面偏)
②60歳からの繰り上げ受給の場合(手取り偏)
③65歳からの本来受給の場合(額面偏)
④65歳からの本来受給の場合(手取り偏)

①60歳からの繰り上げ受給の場合(額面偏)

 60歳から繰り上げ受給を行った場合、原則受給、70歳、75歳での繰り下げ受給と比べ、原則受給時には600万円、70歳繰り下げ受給時には1200万円、75歳繰り下げ受給時には1800万円の年金をすでに受け取っているはずです。この受給した年金を積立投資で運用を行い、原則支給・繰り下げ支給の受給時期と同時に差額分を取り崩した場合(例えば、原則受給と比較する場合、65歳まで積立投資を行い、65歳から差額分の年間38万円を取り崩し)、どうなるのでしょうか。利回りを変えながら考えてみたいと思います。
 上の表は前提条件、下の表は結果となっています。

受給時期65歳受給70歳受給75歳受給
積立額(月)10万円×5年10万円×10年10万円×15年
取り崩し額(月)3.2万円×30年8.7万円×25年14.3万円×20年
                                               積立・取り崩しの前提条件
利回り判定・95歳時残金65歳(原則)70歳(繰り下げ)75歳(繰り下げ)
1%資金枯渇年齢82歳6か月82歳11か月87歳1か月
95歳時残金なしなしなし
3%資金枯渇年齢88歳6か月87歳2か月91歳11か月
95歳時残金なしなしなし
5%資金枯渇年齢
95歳時残金375万円226万円1370万円
7%資金枯渇年齢
95歳時残金1907万円2863万円5354万円

 上の表は適時四捨五入しながら作っていますが、概算の数値は出ているのではないかと思います。額面上の話においては、60歳から繰り上げ受給を行い、各利回りで運用・対応年齢で取り崩しを行った場合は、65歳・70歳、75歳・・・すべての受給期に年金を受け取った場合と比べ、3%以下の利回りでは95歳までに資金が尽きてしまい、また、5%の利回りの場合は95歳時に資金が残っていることが分かります。
 5%以上の利回りと言えば・・・結構な割合で株式等を混ぜる必要があり、リスク高めの運用となりそうですので、なかなかハードルが高い結果となりました。

②60歳からの繰り上げ受給の場合(手取り偏)

 60歳からの繰り上げ受給時における額面金額での運用代替性を①で見てきましたので、次に前回のブログで計算した・・・手取り額での判定はどのようになるのでしょうか。これも同様の手法で計算してみました。また、これにおいては繰り上げ受給時における手取り金額は64歳までに受け取る111.5万円で計算しています。

受給時期65歳受給70歳受給75歳受給
積立額(月額)9.3万円×5年9.3万円×5年9.3万円×5年
取り崩し額(月額)3.3万円×30年6.8万円×25年11.1万円×20年
                                               積立・取り崩しの前提条件
利回り判定・95歳時残金65歳(原則)70歳(繰り下げ)75歳(繰り下げ)
1%資金枯渇年齢80歳8か月85歳7か月89歳7か月
95歳時残金なしなしなし
3%資金枯渇年齢85歳4か月91歳8か月
95歳時残金なしなし200万円
5%資金枯渇年齢
95歳時残金79万円978万円2181万円
7%資金枯渇年齢
95歳時残金1378万円3709万円6124万円

 各種控除の金額で計算してみると・・・65歳の原則受給と比較した場合、額面金額でのシミュレーション時より短い期間で資金が枯渇してしまう事が分かりました。これは繰り上げ受給時の金額を64歳までの公的年金等控除の金額が少ない時のものを使用したためとなっている事、65歳受給時の158万円という金額は社会保険料・税金がそこまで掛からず、効率のいい年金の受け取り方をしている事などが原因と思われます。また、それ以外の繰り下げ受給時と比較すると年金額が上がると社会保険料・税金の負担が大きくなることもあり、額面額による計算よりも資産寿命が延びる傾向が分かります。特に75歳受給開始と比べると3%の利回りにおいても95歳時に資金が枯渇しないシミュレーション結果となっていますので、ある程度債権を多めに織り交ぜたポートフォリオであっても、計算上は・・・ですけど実現可能となっています。

③65歳からの本来受給の場合(額面偏)

 次に65歳の本来受給を行った場合の額面金額でのシミュレーションはどうなるか見てみたいと思います。繰り上げ受給時のシミュレーションと同様に65歳の本来受給時に年金受給開始し、70歳、75歳まで積立、繰り下げ受給開始と同時に差額を取り崩していきます。
 その前提条件、結果としては次の表の様になります。

受給時期70歳受給75歳受給
積立額(月額)13.2万円×5年13.2万円×10年
取り崩し額(月額)5.5万円×25年11.1万円×20年
                                               積立・取り崩しの前提条件
利回り判定・95歳時残金70歳(繰り下げ)75歳(繰り下げ)
1%資金枯渇年齢83歳2か月88歳5か月
95歳時残金なしなし
3%資金枯渇年齢86歳5か月93歳0か月
95歳時残金なしなし
5%資金枯渇年齢92歳1か月
95歳時残金なし998万円
7%資金枯渇年齢
95歳時残金955万円3442万円

 60歳時の繰り上げ受給と比べ・・・若干不利になったような感じがします。これは積立年数が少なく、複利効果を得にくかった為かなぁとも思います。ただ、投資失敗(思う様に資金が増えなかった)場合、年金として入るお金は繰り上げ受給時よりも多い事はある程度の安心感に繋がるのではないかと思います。まぁ、額面金額での計算ですので、次の手取り金額ベースでのシミュレーションが本命となるのではないかなぁと思います。

④65歳からの本来受給の場合(手取り偏)

 で・・・手取りベースでのシミュレーションですが、その前提条件と・・・結果は次の表の様になりました。

受給時期70歳受給75歳受給
積立額(月額)12.6万円×5年12.6万円×10年
取り崩し額(月額)3.5万円×25年7.8万円×20年
                                               積立・取り崩しの前提条件
利回り判定・95歳時残金70歳(繰り下げ)75歳(繰り下げ)
1%資金枯渇年齢90歳5か月93歳8か月
95歳時残金なしなし
3%資金枯渇年齢
95歳時残金162万円645万円
5%資金枯渇年齢
95歳時残金902万円2103万円
7%資金枯渇年齢
95歳時残金2181万円4745万円

 手取りベースで考えた場合、60歳繰り上げ受給分を投資に回した場合より、若干有利になった気がします。ただし、高利回り(7%など)になると、利回りが高い分、長期積立分、繰り上げ時の方が有利な感じがします。
 150万円程度までの年金であると社会保険料・税金がかなり優遇されており、また、65歳以上は公的年金等控除が110万円フルに活用できる事も大きい感じがします。まぁ、これにおいては60歳からの繰り上げ受給時においても65歳からは110万円へ公的年金等控除が上がりますので、これで計算するとかなり改善することも考えられますが・・・。
 ただ、65歳からの本来受給金額を投資に回した場合、3%の利回りでも95歳まで資金が尽きないシミュレーションとなっていますので、ほぼ債券での運用でも達成できるのではないかと考えられます。

⑤まとめ

 今回のシミュレーションの結果、額面額であれば概ね5%以上の年利回り、手取り額ベースであれば3%以上程度の年利回りが必要ではないかという結論になりました。5%の利回りを得るためにはポートフォリオに株式を多めに入れる必要があり、リスクが高いと感じられるものの、3%であれば債券多めでも達成できそうな感じがする数値です。まぁ、失敗したときのリカバリーが難しい年齢となってきますので、あまりお勧めできるものではありませんけどね。とは言え、手持ちの資金に余裕があり、多少失敗しても問題ないのであれば、本来受給年齢で年金を受け取り、積立投資するのもアリ・・・と言えるかもしれません。


 とまぁ・・・机上の計算として繰り上げ受給、本来受給で年金を頂き、積立投資した場合、どのようになるかをシミュレーションしてみました。利回りによっては有利に働くと思える場合もあるものの、年取ってからそこまで野心的にお金を殖やす必要があるかと言うと、かなーり疑問が残るところです。意欲的にお金を殖やし、使う・・・というより安心して老後生活を送る事に重きを置く老後世代だと思われますので、下手な小細工をせず、手持ちのお金と合わせて、生活するのに十分な年金金額を頂くのがいいのではないかと思います。
 年金の金額も受け取り方も人それぞれです。3回に渡った今回の繰り上げ・繰り下げ受給の例はあくまでも私の年金定期便の数値ですので、人によってさまざまに条件が変わります。ですので、いきなり年金をどう受け取るのかなどを考えるのではなく、老後のライフプランをしっかりと立て、それを行うにはどの程度の年金が必要なのか?もし繰り下げが必要なのであれば、その待機期間中の生活費をどうするのか?・・・このような事から考え、その後にそのライフプランに沿った老後生活を行うための年金受給方法を考えた方がベターと言えるのではないかと思います。まぁ、さんざん支給方法をこねくり回した後に言うのもなんですが・・・。

 最後に、日本年金機構の繰り上げ・繰り下げのページ、また、今回のシミュレーション作成に使わせていただいた(感謝感謝です。)大和アセットマネジメントさんの『人生100年シミュレーション』のリンクを貼っておきますね。

日本年金機構『年金の繰り上げ支給』
日本年金機構
『年金の繰り下げ支給』
大和アセットマネジメント
『人生100年シミュレーション』


今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。