東証がアディッショナルタイム導入!?

 今月の5日・・・11月5日から東京証券取引所における現物立会市場の取引時間の延長が始まります。って、11月5日って来週頭・・・という事は次の取引からですね。すぐそこだ・・・。
 これは取引の活性化を図り、国際競争力を高める狙いがると言われています。また、トラブル発生時の復旧後の取引時間の確保も目的の一つとされています。その他、クロージングオークション制度が採用されたり、すこーしだけ株取引のルールが変わりますので、少しだけ書いてみたいと思います。

①時間延長ってどれくらい?
②なんで時間延長するの?
③クロージングオークションとは?
④どのような影響が考えられる?

①時間延長ってどれくらい?

 今回、11月5日からの現物売買システム改定(改定後のシステム名は『arrowhead4.0』と言うらしいです。)の稼働予定に伴い、現物取引時間の延長が行われます。どのくらいの延長になるかというと・・・現在の取引時間が9:00~11:30分の前場とお昼を挟んで12:30~15:00の後場構成だったものが・・・9:00~11:30の前場は代わりませんが、お昼を挟んだ後場が12:30~15:30へと30分間の延長となります。
図にすると次のような感じとなります。

                           日本取引所グループ『次期売買システム稼働に伴う 売買制度の見直しについて』より

 この濃い緑色の部分が延長になるのですね。この中のToSTNeT1・2・3というのは立会外取引の事ですので、一般の投資する人にはあまり関係ないかなぁと思います。一番上のarrowheadという所が一般で言う取引時間になります。さらに15時25分~15時30分までの細く濃い緑色の所がクロージングオークションの時間となります。これについては後程書いていきたいと思います。

②なんで時間延長するの?

 この取引時間の延長ですが、何でこれを行うのでしょう?日本取引所グループの説明として・・・次のような事が挙げられています。

システム障害が発生した場合でも、極力、当日中に取引機会を提供するとのレジリエンス向上の観点や、立会時間が欧米やアジア各国と比較しても短い事を踏まえ、投資家の取引機会を拡大し市場の利便性を向上することを目的として、現物立会市場の終了時刻を15時から15時30分に後ろ倒しし・・・(以下続く)

                               日本取引所グループ『次期売買システム稼働に伴う売買制度の見直しについて』より

とのことです。じゃぁ、世界の主な株式市場の立会時間はどのような感じかというと・・・

                    日本取引所グループ『次期売買システム稼働に伴う売買制度の見直しについて』より

こんな感じみたいです。この表は各国(日本の他の取引所)でのタイムテーブルとなっているのですが、確かに実時間5時間しか立会市場が開いていないのは東京だけとなっており、各国の取引時間帯と比べて短い事が分かります。
 時間外取引も含めてではあるのですが・・・ニューヨーク取引所も(時間外も含め)22時間へ取引時間を延長する方向とのニュースもありましたので、世界的な流れであり、各証券取引所の競争烈火が起こっているのだろうなぁと思われますね。
 また、EU各国の市場が開くのは夏時間であれば・・・日本時間午後4時からですので、EUからの投資の増加が見込めるのではないかとの思惑があるのではないかと思います。

 まぁ、システムトラブル時のレジリエンス向上においては・・・30分だしなぁ・・・と思わないこともありませんが、少しでもトラブル復旧後における立会取引時間が取れる事は良い事ではないかと思います。

③クロージングオークションとは?

 取引時間の30分延長と共にもう一つ現物取引の取引ルールが変わります。それは後場引け時(現在は15時、変更後は15時30分)の取引ルールの変更です。現在においては即時約定(最後の株取引があった株価がその日の引けの株価となる。)でその日の最後の株価(終値)が決まっていましたが、これを変更し、クロージングオークションと言うルールが導入されます。このクロージングオークションというルールのイメージは下の図にある通りです。

                             日本取引所グループ『現物市場の機能強化に向けた取り組み』より

 どのようなルールかというと・・・現在の後場最後の取引金額をその日の終値とするルールから、後場引け最後の5分間(15時25分から15時30分の間)は注文の受付は行うものの、約定は行わず、その注文の内容を板寄せして・・・15時30分にその注文内容に基づいて値付けを行い、終了する形になります。この5分間はプレ・クロージング期間と呼ばれ、その5分間で受けた注文と、その前の段階で約定していない指値注文を合わせて、値決めをする形になります。
 うーん、感覚としては後場の終了前5分間は前場開始前(午前9時前)や後場開始前(12時30分前)と同様の取引形態にする・・・って感じかなぁ。まぁ、一発の注文で終値が決まってしまう事が無いのでいいのかもしれませんが・・・。ただ、このプレ・クロージング期間における新規注文・注文変更・注文取消しは自由とのことですので、見せ板(本当は買う意思がないのに大量の買い注文を出したり、逆に売る意思がないのに大量の売り注文を出したりすること)などが横行すると、困ったことになっちゃいそうですね。この見せ板においては法律で禁止されていますし、日本取引所グループも監視を行うとのことですが・・・。株の買いたい・売りたいという気持ちは移り変わるものですし、指値で大量に注文を入れた場合などは、どうなのかなぁと思っちゃいます。まぁ、今でも前場開始前に異様に大きな(買い・売り)板があったり、大量の成行買い(売り)注文があったりすることもありますし(ちゃんと9時までには注文はひっこめられています。)・・・。どの程度の厳しさで監視を行うのか・・・気になるところです。

 ちなみにこのクロージングオークションにおける値幅ですが・・・直前約定値段等から更新値幅の2倍までとなっています。
 この更新値幅というのは・・・

 例えば、ある株式に好材料が出た場合などに、買い注文が殺到することがあります。この時、一気に板寄せ(買いたい人の株数と売りたい人の株数が一致する株価で約定させる事)し、その注文を捌く(約定させる)のではなく、3分間隔で一定金額ずつ特別気配として約定予定株価を上昇させ、買いたい人、売りたい人を募集するという事をします。この上昇させる価格幅を更新値幅と呼ばれ、今回のクロージングオークションにおいては、この更新値幅の上下2倍までの範囲で株価確定させることになっています。

 で、この更新値幅というのは株の価格帯によって違いがあり、下の表の様になっています。

株価更新値幅値幅制限
100円未満5円30円
~200円未満5円50円
~500円未満8円80円
~700円未満10円100円
~1000円未満15円150円
~1500円未満30円300円
~2000円未満40円400円
~3000円未満50円500円
~5000円未満70円700円
~7000円未満100円1000円
~10000円未満150円1500円
~15000円未満300円3000円
~20000円未満400円4000円
~30000円未満500円5000円
~50000円未満700円7000円
~70000円未満1000円10000円

                                   日本取引所グループ『内国株の売買制度』より抜粋

 この表より高額な価格帯における『更新指値・値幅制限』もあるのですが、今現在、これ以上の株価の会社はないので、割愛します(ちなみに10月28日現在における一番株価が高い上場会社はキーエンスで66350円の模様です。)。また、この表の『値幅制限』とは、所謂ストップ高・ストップ安の事で、1日の値幅変動の限界値を表わしています。100円未満の株価以外は更新値幅の10倍が値幅制限となっているのですね。
 さて、話は逸れましたが、今回のクロージングオークションにおいては更新値幅の2倍までの価格で決まるとのことですので、その日の仮?終値等(15時25分時の株価)から考えて、更新値幅の2倍の変動内で決まる事になります。仮にその日の仮?終値(15時25分の株価)が1200円だった場合は・・・更新値幅30円の2倍・・・上下60円の幅内で需給に応じて終値が決まる事になります。この場合においては1140円~1260円の範囲内という事になります。

④どのような影響が考えられる?

 さて、11月5日から開始される現物立会市場の取引時間延長とクロージングオークション制度ですが、どのような影響が考えられるのでしょうか?私の足りない頭を使って、すこーしだけ考えてみたいと思います。

1.単純に取引が活性化される。
 まぁ、これは取引時間が30分増えるのですから、その分、取引の全体量が増える事は安易に想像されます。これにおいては後場取引は閑散としている事から、大きな影響はないとおっしゃる方もいらっしゃいますが・・・。時間延長は多少なりとも取引量の増加に繋がるものと思われます。
 また、EU諸国の夏時間においては市場が開くのが日本時間の16時からとなりますので、その直前の時間における取引時間延長は思ったより利便性が出るのではないかと想像され、東京市場の国際化の進展には寄与するのではないかと思います。まぁ、EU圏内に住まれている方にとっては、東京市場での取引をすこーしやって、15時30分の終了後、朝食・コーヒータイムを挟んで自国取引を行う・・・こんな感じになるのではないかなぁと勝手に想像しています。あっ、朝食タイムが1時間から30分に短縮されるから、慌ただしい朝食になっちゃうかなぁ。

2.15時から15時30分のニュースが取り込める。
 まぁ、これはたかだか30分間のニュース情報ではあるものの、その間に起ったことを株価に反映させることができます。従来であればこの時間帯に起こった出来事は次の日の初値において取り込まれる事になるのですが、それがある程度即時反映されることになります。
 これにおいて有名なのが・・・この前(9月27日)の自民党総裁選挙でしょうか・・・。高市早苗さんが優勢で1回目の投票が終わり・・・これが15時前の状況だったと思います。決選投票で石破茂さんが大逆転・・・これが15時から15時30分の間で起こったのではないかと記憶しています。その日の株価は高市トレードと言われる、高市さんが総裁となる事を想定し、株価が上がっていました。それが月曜日(9月30日)には石破さん勝利が27日の15時過ぎに決まったことを反映して、2000円以上の日経平均下落(石破ショックと言われたりもしました。)となってしまいました。
 仮にこれが取引時間延長後に起こっていたらどうなっていたでしょう?当然、ある程度は金曜日の時点で石破さん勝利を株価は織り込みに行ったはずと考えられます。その良し悪しは別だとしても、それだけニュース情報をカバーする時間が長くなることになります。という事は、情報を如何に早くとらえて、株式投資を行うか・・・その重要性がより高まるのではないかと予想されます。まぁ、その時間に株式投資ができないと関係ない話となりますので、会社員の方などはあまり問題にはならないのですけどね(時間延長のありなしに関わらず、その時間はお仕事されている方が多いでしょうから・・・。)。
 話は逸れますが・・・私がこの文章を書いている今現在は衆議院選挙の翌日ではあるのですけど、自民党どうするのかなぁ・・・。気になるところです。そして、自民党敗北を事前に織り込んでいたのか・・・株価は上昇している状況です(10月28日現在)。株って難しいなぁ💦

3.情報開示のタイミングがずれるかも。
 3つ目としては・・・会社は営業に関する重要な事項(決算や自社株買いなどの様々な事項)を『適時開示』として公表するのですが、今現在、適時開示の公表時刻は15時が一番多い時間でした。特に本決算発表や四半期決算の発表などは株価に与える影響が大きい事もあり、取引時間中(9時~15時)に公開する企業は少なく、大半の会社は15時以降、特に15時に集中するのが常でした。今回の取引時間延長によって・・・最集中時間が15時30分になる可能性が高いんじゃないかなぁと思います。仮に15時発表のままだと・・・アディショナルタイムは大荒れとなる株も多くなりそうな気がします。またその場合、決算書をぱっと見(概要が書いてあるページ目だけ)で判断し、いち早く株を売買する必要が出る事にもつながり、じっくり決算書を読む時間が取れませんので、判断ミスなど危険な取引がこの時間に増える可能性もあり、ちょっと怖いですね。
 後、これはテレビで言ってたことで恐縮ですが、仮に決算発表が後ろ倒しになると、証券会社の検証部門の人の残業時間が増えて困る・・・って話していました。まぁ、いろいろなご苦労が掛かる人がいらっしゃるのですね。

4.クロージングオークションで見せ板を出す不埒物が出てくるかも。
 見せ板自体は違法行為なのですが・・・これは買う気が無くて(もしくは売る気が無くて)大量な株数の発注注文を出し、約定前に引っ込める行為ですので、その『気がある』かどうかは本人次第という事も出来ます。あからさまであるのであれば、違法性の確証も取りやすいと思いうのですが、グレーな部分が多くあるのではないかなぁと思います。私個人としてはそのグレーな板情報に惑わされずに冷静に判断できるかが問題となるような気がします。
 その点を除けば、現状の最終約定で終値が形成される状況よりも、最後にみんなの売り買い注文を集めてその結果を反映させて終値を形成するのは透明性があっていいのではないかと思うのですけどね。これに関しては日本証券所グループの監視体制がどの程度効くのかを見守るしかないのだと思います。


 今回は東京証券取引所の現物立会取引の時間が延長されることになりましたので、それについてすこーしだけ書いてみました。なんか・・・証券用語って専門的な言葉が多くて分かりづらい><;。読んでる方も分かりずらくてごめんなさい。私個人的にはうーん・・・あまり影響しないかなぁ。でも、15時30分まで市場が開いているのは嬉しいような煩わしいような・・・微妙な気分です。ただ、ちょうど今の季節は3月決算企業の第2四半期の決算発表シーズンとなっており、決算書に目を通す機会も増えますので、その時間が遅れるのはちょっと嫌かなぁ。まぁ、何にしてももうすぐって・・・まったりブログ書いてたら、次の立ち合いからになっていた💦(11月5日)には新時間で株式市場が動いていきますので、注目して見ていこっと思います。

 最後に、日本取引所グループのホームページ、その中でも今回のお話と関連するページのリンク、そして私が使っているマネックス証券の今回の時間延長に対する説明ページのリンクを貼っておきますね。

日本取引所グループホームページ
日本取引所グループ『
次期売買システム稼働に伴う売買制度の見直しについて
日本取引所グループ『
現物市場の機能強化に向けた取組み
日本取引所グループ『
内国株の売買制度
マネックスホームページ『
東京証券取引所の取引時間延伸等 新制度が始まります


今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。