利益調整の時期ですよね。

 大掃除の季節になってきましたね。進んでます?大掃除・・・
私はぜんぜんです💦取り掛かるまでが大変なんだよなぁ。重い腰が上がれば、少しは進んでいくんだけど・・・。

 って、今回は大掃除の話ではなく・・・って、ある意味大掃除に近いものがあるのかな?株式投資の損益通算についてです。これは株式投資を行う人の多くはこの季節・・・考えるのではないかと思います。
 どのような事かというと、株式投資の利益には20.315%の税金(所得税15%、復興所得税0.315%、住民税5%)が掛かります。ただし、利益が出た分すべてにこの税率が掛かるのかというと・・・売却益と売却損の損益を相殺してその差額に税金が掛かる仕組みとなっています。どういうことかというと、次の様に今年、株式等の売買を行った場合・・・

A株    ・・・100万円の利益
B株    ・・・50万円の損失
差引利益  ・・・50万円の利益
税額    ・・・50万円×20.315%=101575円


と・・・利益額の100万円に税率を掛けるのではなく、利益と損失を相殺し、その残額の50万円に税率を掛けて、税金の計算を行います。ですので、支払う税金は10万円ちょっとという事になるのですね。

 で・・・当然支払う税金は少しでも少ない方がいい訳で、年末においては株式等の損益の大掃除(利益調整)を行う投資家の方が多くなります。そこで行うのが・・・『損切り・損出し・利食い・益出し』という事になります。という事で、今回はこれらの行為がどのようなものか?そして、そもそもこのような行為はする必要があるのか?今年から拡充されたNISAの取扱いはどうなるのか?などを書いていきたいと思います。今回は株式投資等を特定口座(源泉徴収有)で投資を行っている事を前提にお話を進めたいと思います。

①損切り・損出しって?
②利食い・益出しって?
③利益調整は行ったほうがいいの?
④NISAの取扱いは?
⑤その他注意点はあるの?

①損切り・損出しって?

 損切りと損出し・・・似たような言葉ですし、実際損している(含み損のある)株式等を売る行為ですので、似てはいるのですが、若干違う部分があります。

 損切りというのは含み損がある株式や投資信託などを、損を覚悟で『えいやっ』と売ってしまう行為です。基本的には買い戻すことはなく(後で安くなったところを再び買い戻すこともあるかもしれませんが・・・。)、一旦、その株式や投資信託とのお付き合いは終了することになります。
 それに対して損出しとは、損している(含み損がある)株式や投資信託等を損している価格で反対売買して、損を確定させるのですが、現実的な損を出しながら、取得単価を下げる行為となります。ですので、その株式や投資信託とのお付き合いは続く・・・という事になります。現実損が出た分取得単価が下がり、今年の損失が確定するのですが、その分、来年以降利益が上がる可能性が高くなります。まぁ、来年以降、株価が上がって利益確定させて売っちゃった場合、その時の税金が上がりますので、税金の先送りとなるのですが、将来の事は誰にもわかりません。とりあえず、今年分の税金は少なくする事ができます。
どの様な感じかというと・・・

損切り損出し
購入金額100万円100万円
売却金額60万円60万円
損益-40万円-40万円
残ったもの60万円の現金取得単価60万円の株式等

となります。上記表の例でいくと、どちらも損益は40万円の損失となるのですが、残ったものが現金になるのか、株式等になるのかの違いになります。ですので、今年の利益が40万円以上ある場合は、この損失額である40万円に税率を掛けたものが節税効果となります。また、残るものが現金なのか株式等なのかの違いがありますので、対象の株式等がまだ復活の目がある、もしくは値上がりを期待できると思う場合は損出し、もう値上がりすることはないだろうなぁと思う場合は損切りで今年のの税額を抑える事になります。まぁ、この辺はその株式等の将来の期待値によって変わるのではないかと思います。

 また、損切りはその株式等を売っておしまいなので、注意点はないのですが、損出しは若干のテクニックが必要となります。同日に反対売買を行うと・・・平均価格が取得単価となってしまうのです。『ちょっと何言っているかわかんないっ』と思いますので、上記表の例で考えてみると・・・100万円で購入したものを売って、同日に60万円で同数買い戻した場合・・・(100万円+60万円)÷2の80万円が取得価格となり、20万円分の節税効果しかないことになってしまいます。中途半端な節税となりますね><;
 そこで、これを回避するために翌日以降に買い戻さないといけないのですが・・・翌日には価格が変わっている事はよくある話です。そうなると、純粋に反対売買したいだけなのに、高い金額で買い戻さないといけなかったり、運が良ければ安くで買い戻せちゃったりしちゃいます。まぁ、安くで買い戻せる場合はラッキーなのですが、この節税効果を狙った売買で不安定要素は持ち込みたくないのも事実ではないかなぁと思います。そこで、信用口座をお持ちの方は・・・現物の持ち株の売りと信用の同じ株の買いを同時に行うと、売却価格と取得価格を合わせることができます。そして翌日に現引き(信用取引で購入した株をお金を支払い現物株にすること。まぁ、借りてる株(信用取引で購入した株)を代金を支払って自分のものにすることを行うのですね。)して、自分の持ち株に戻すことができます。信用取引の手数料などすこーしだけお金は掛かりますが、こうすると、上の表の例で言うと取得価格は60万になり、しっかりとした節税効果を受ける事ができます。ただしっ!現引きは翌日ですよ?当日に現引きしちゃうと・・・取得価格は平均化されてしまいますから注意です(私は一度それやってしまって・・・思ったより節税効果がでなくて、証券会社に電話したことがある・・・のは秘密です。)。また、翌日以降であればいつでもいいのですが、その日数分金利の支払いが掛かっちゃいますので、翌日が一番費用的にもいいのではないかと思います。

 この損切り、損出しをうまく行うと、課税の先延ばしとは言え、最低限今年分の節税効果にはなりますので、値上がりが期待できない不良株式等や大きく価格が下がった株式等の大掃除を行い、ポートフォリオをすっきりさせるのがいいのではないかと思います。

②利食い・益出しって?

 次に『利食い・益出し』なのですが、これは『損切り・損出し』の反対の事を行う事になります。例えば・・・悲しい事ですが、今年大きな確定損失(すでに売ってしまった株式等で損失を確定させた)を出してしまっていた場合、税金は当然0円ではあるものの、損失分の利益を出しても、やはり税金は0円で済むはずです。まぁ、確定申告を行えば、3年間の損失繰越ができるのではあるのですが・・・今年の分で何とかしたいと思うのも心情ではないかと思います。
 そこで、利益が出ている株式等を売却することにより利益確定させ、損益通算することにより、将来支払う税金の節税を行おうという考えが浮かびます。それに使うのが『利食い・益出し』という考え方になります。
 この2つの違いは『損切り・損出し』と同様で、利食いはその株式等を売却し、利益を確定させ、一旦その株式等との関係は終了となります。また、欲しくなった時は改めて買い直すこともあると思いますが、いったんお別れです。益出しは損出しと同様に反対売買を行う事によって、取得価格を上げ、その分の利益を確定させるという形になります。
損切り・損出しと同様に表にしてみると下の様になります。

利食い益出し
購入金額100万円100万円
売却金額150万円150万円
損益+50万円+50万円
残ったもの150万円の現金150万円で購入した株式等

100万円で購入して150万円で利食いもしくは益出しした場合、上記の表のような感じになります。利食いの場合は純粋に50万円の利益と元本の100万円が現金として手元に残り、益出しの場合はちょっと微妙なのですが、購入価格が100万円から150万円に変更された株式等が手元に残る感じになります。一応、50万円の利益は出ているのですが、その分も含めて同数の株式等を買っていますので、手元の現金は増えない(手数料の分若干減ると思います。)事になります。どちらにしても、今年50万円以上の確定損失がある場合は、この『利食い・益出し』で出た利益は相殺され、利食いの場合は今年の、益出しの場合は将来の節税に繋がる事になります。

 利食いにおいては損切りと同様、ただ売るだけですので、注意点はないのですが、益出しは損出しと同様の注意点があります。同日に反対売買を行ってしまうと取得価格は平均化されてしまいますので、日にちをずらすか、信用取引を利用して現引きを翌日に行う必要があります(翌日以降ならいつでもいいのですが、信用取引で持っている期間が長くなると金利支払い期間が長くなり、手数料が増える事になります。)。

③利益調整は行ったほうがいいの?

 と・・・今年や将来の利益調整を行う、『損切り・損出し・利食い・益出し』ですが、有価証券等の3年間の損失繰越がある事を踏まえると、本当に必要なのでしょうか?
 これはいろんな意見があると思いますが、私の好みからするとできるだけ行ったほうがいいと思います。その理由として『確定申告が必要になる』、『放置すると税金が上がる場合が多い』、『これを機に損切り等の契機となる』と言ったところでしょうか。私の個人的な考えですが、順にすこーしだけ書いてみたいと思います。

1.確定申告が必要になる
 確定申告・・・めんどいですよね?
 最近はかなり簡単になったとは言え、確定申告をするのは結構めんどくさかったりします。サラリーマンの方で給与所得と株式等の所得(損失)のみの方はそこまででもなかったりするのですが、それでも下手をすると丸1日とか確定申告に時間を取られてしまう場合もありそうです。その手間をかけて損失繰越を行うより、利食い・益出しを行って、損失を消してしまった方がらくちんです。また、損失繰越を行った場合、翌年以降も繰り越す損失がなくなるまで確定申告を続ける必要があります(たとえ、翌年に利益が出なかった場合でも確定申告を行う必要があります。)。これって・・・結構な手間ですよね。やはり・・・今年の汚れは今年のうちに・・・ではなく、今年の損失は今年のうちに・・・相殺した方が手間が無くて良いと思います。
 また、私のような自営業の場合は、健康保険ではなく、国民健康保険に加入している状況となっており、仮に翌年以降に確定申告をして、損失相殺した上でも利益が大きかった場合、支払う国民健康保険料が上がってしまう事も問題です(サラリーマン方の様にお給料から健康保険料を支払ってらっしゃる方は問題ありませんが・・・。)。思わぬ負担増に泣きを見る可能性もありますので、自営業などで国民健康保険加入の方はより、その年のうちに利益相殺を行った方がいいのではないかと思います。

2.放置すると税金が上がる場合が多い
 まぁ、これは何もしなかった場合ですね・・・。『税金たらふくはらっちゃるぜ~』という豪の方はいいのですが・・・。『損切り・損出し』を行わなかった場合、当然、今年の利益分に対して税率を掛けたものが税金として引かれている訳で、もし、来年に確定損を出し、確定利益が無かった場合、その損失分は確定申告をして繰り越さない場合、税金の還付等は行われないことになります。それであれば、利益がある今年のうちに損切りか損出しのどちらかを行い、税還付を受けた方がいいという事になります。
 逆に今年確定損失があり、含み益が乗っている株式等を持っている場合・・・含み益を見ながらニヤニヤする楽しみ(いやらしい話ですが・・・ほんとに楽しいですw)は減ってしまいますが、その損失金額分の『利食い・益出し』を行う事により、将来発生するはずの税金を減らすことを考えるのがいいのではないかと思います。また、この今年分の損失も確定申告して繰り越さない限り、税還付には繋がりませんので、将来の税金額を増やしてしまう事になっちゃいます。
 という事で、適切な年にしっかりと税還付を受ける事で、節税していく必要があるのではないかなぁと思います。

3.これを機に損切り等の契機となる
 損切り・・・難しいんですよねぇ、これが・・・。
 特に私のような優柔不断な人間にとっては、苦難を伴う作業となります。『上がる見込みないのになぁ・・・でもなぁ・・・ここで売ったら損しちゃうしなぁ・・・。』などグダグダ考えながら、損失を確定させるのを先延ばししちゃうのです。特にその株式等を買った時に上がると思った理由がなくなった場合などはなおさらです。
 そこで、確定利益が出ている年に『えいやっ』と損切りしちゃうことで、上がる見込みがない株式等を売ってしまう事ができます。これで、今後、その不良株式等の事で思い悩む必要もありません。そのように損切りして出来た資金を利用して新たな上昇見込がある(と勝手に思ってる)株式等を購入することによって、ポートフォリオの健全化を図っていくのです。そうしないと・・・上がる見込みのないゾンビ株?でポートフォリオが埋められてしまう可能性があります。
 自身のポートフォリオ健全化の為に、利益調整を兼ねた思い切った損切りを行うと、収益性も上がるはず?です。

④NISAの取扱いは?

 今年から制度が刷新された新NISAで購入した株式等との兼ね合いはどうなっているのでしょう。実は・・・NISA口座で購入した株式等は別管理となっていて、損益通算とは何ら関係ない状態となります。NISA口座で購入した株式等の損失も損益通算してくれたらなぁ・・・と強く思ったりもするのですが、残念ですが、NISA口座における損失は特定口座での利益とは通算してくれません。ですので、NISA口座で株式等を購入して含み損を抱えてしまった場合、売るに売れず・・・ゾンビ化する可能性があります。くれぐれもNISA口座で株式等を購入する場合には勝算が高い株式等を購入する、また、含み損が出て、回復の見込みが薄い場合は、涙を流しながら損切りする・・・という事を心に刻んで制度を利用していく必要があります。
 NISA口座だからこそ、より真剣な銘柄選択と強い心が必要になるという事ですね。
 ちなみにNISA口座での利益は元々非課税ですので、損益通算の考え方が初めから無い状態となります。

⑤その他注意点はあるの?

 その他の注意点として・・・いくつかあります。まず、上記のお話は同一の証券会社の口座で損失と利益がある場合・・・でしか通用しません。これは同一の証券会社での特定口座での損益であれば、自動で損益を通算してくれます。なので、何もしなくても(損切り・損出し・利食い・益出しはしないといけませんが・・・)、証券会社が勝手に計算して、損益通算をしてくれます。
 ですが、A証券会社で利益が出て、B証券会社で損失が出たという場合、証券会社を飛び越えて自動的に損益を通算してくれることはありません。この場合は、自分で確定申告を行い、損益を通算する必要がありますので、ちょっと面倒なことになります。この点は注意しないとダメですね。

 また、株式等の配当においては、申告分離課税を選択している場合は、この損益通算の対象となります。NISA口座も特定口座と合わせて併設している場合、配当は郵便為替(懐かしいなぁ。昔は郵便為替で配当が送られてきて、郵便局で換金していました。いいお小遣いだったなぁ・・・シミジミ)、で送ってくるのではなく、証券会社の口座に振り込まれるはずです(株式数比例配分方式と言います。この方式でないとNISA口座はできなかったと思います。)。この分も損益通算における利益に加える事になりますので、その分も計算して損切り・損出しを行う事で、節税効果が大きくなります。また、これに関しても、同一の証券会社内であれば、証券会社が自動で計算してくれます。

 それに加え、この損切り等の確定日は約定日ベースではなく、受渡日ベースとなりますので、若干の期日を要します。どのくらいかというと、2営業日となります。ですので、約定日が今年中であっても、受渡日が来年となった場合、利益調整は失敗・・・となりますので、注意です。今年であれば、大納会(その年最後の取引日)が12月30日ですので、2営業日前という事は・・・土日を挟んで12月26日の木曜日という事になります。それまでにはポートフォリオをすっきりさせちゃいましょう・・・って、もう今週じゃない!記事書くの遅すぎ・・・💦
 また、海外株式は若干締め切りが早くなります。米国株の場合、12月24日となっています。投資信託においてはその投資信託それぞれで約定日と受渡日が違いますので要確認です。ちなみにeMAXIS Slimの通称オルカンは12月23日、S&P500は12月24日となっています。って・・・今年はもう間に合わんかも・・・。

 最後は、株式等の売買には手数料が掛かるという事です。信用取引を利用する場合は金利も支払う事になります。ネット証券であればそんな高額になる事はないと思いますが、若干の手数料を支払って行う行為であることは心に留めておきましょう。

 上で最後は・・・と書いておいてもう一つおまけの注意点として、ありがたい事に結構な数の上場会社は配当とは別に株主優待というものを出してくれています。クオカードやその会社で作っているものなど、日ごろは買わないものなどをくれて、お得で嬉しいものですが、この株主優待の中に株主としての連続性(1年以上株式を持っている方など)を要件にしていたり、連続性によってランクアップしたりするものがあります。損出し、益出しする場合は、そこで連続性が切れてしまう可能性がありますので、株主優待目的で株式を所有している場合は、注意です!


 と・・・今年の利益調整にギリ滑り込ませる感じで今回の株式等の利益調整である損益通算について書いてみました。まぁ、しっかりと投資を行っている方にとっては常識的な事だと思いますが、新NISAきっかけに今年から投資を始めた方も多いのではないかと思います。この辺の工夫は株式等の勝敗と関係なく、お金の節約ができますので、使えるものは使ったほうが賢明ですね。
 最後に国税庁の株式等の損益通算のページのリンクを貼っておきますね。

国税庁『上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。