新NISAの出口戦略ってどうしよ?
前々回のブログの最後にちょこっとだけ、次は新NISAの出口戦略でも書いてみるかなぁと言ったものの、勉強会のご報告を挟んでしまいました。で・・・今回、新NISAの出口戦略を考えてみたいと思います。
NISAにおいては制度刷新が今年頭にあった事もあり、まだ新制度発足から1年も経っていません。長期投資を前提とした新NISAにおいて、この時期に出口戦略を考えるのはまだまだ早過ぎな感じもします。まぁ、今はせっせと積み立てを行う時期ではあり・・・出口戦略を考えるのは何十年後・・・という事もあり得ますし、ずぅーっと先の話ではありますが、今の内からぼんやりとでもいいので、出口戦略のイメージを描いていることはマイナスにならないのではないかと思いますので、私の無い頭で考えた出口戦略を書いていきたいと思います。まぁ、ここに書いてあることはあくまでも『私が考えた・・・』ですので、より賢明な方法が必ず存在すると思われます。実際の出口までには時間がある事ですし、ここに書いてある内容を参考もしくは反面教師とし、モアベターな方法を模索していただくと、書いた意義が出るのではないかと思います。
まず、私的には出口戦略を考えよーとする時期のパターンとしては3パターンあるのではないかと思います。1つは投資した金額の(ほぼ)すべてが必要となる場合・・・これは住宅取得の際の頭金とか事業開始時の運用資金、車購入資金などになるのではないかと思います。住宅ローンの頭金を分割で・・・と言ってもそれは『全額住宅ローンじゃないかーいっ』って突っ込まれる事になります。最近は頭金なしの住宅ローンも多いですが、やはり頭金を入れた方が住宅ローンの負担が軽くなり、その為に積立投資で住宅取得時期まで投資を行い、資金を増やしておきたいと思うのは人情なのかもしれません。
2つ目のパターンとしてはまとまったお金が将来必要となるのですが、それが一気にではなく、一定の期間で必要になる場合です。これにおいてはお子様の教育資金等が当たるのではないかと思います。特に大学在学中は入学金、授業料、教科書代、その他いろいろ・・・遠くの大学に通われる場合はアパートの家賃まで・・・多くのお金が掛かるものです。この教育資金に関しては初年度は入学金等で多くかかるものの、4年間(私は4年間ではありませんでしたが・・・💦良い?思い出です。)に渡って、多大な費用が毎年掛かるものとなっています。その費用として積立投資で積み立てていこうと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
3つ目としては積み立てたお金を長期で取り崩す場合です。これは老後資金が当てはまるのではないかと思われます。なんとなーく感じるのですが・・・今、新NISAと言うと、この老後資金の為に積み立てを行っているというのが世間一般の風潮ではないかと思われます。
と、上2つは取り崩し時期が決まった資産をリスク資産で積み立てるのはどうか?とも思う部分もあるのですが、無リスク資産の金利が低い現在、ある程度のリスクを取る事も選択に入る可能性はあると思われます。ですので、これらの3パターンの取り崩し戦略と・・・おまけとして、すでに年金を受け取っていらっしゃる方で、いくらか生活費の足しにできる新NISAの使い方を考えてみました。これは新NISAの説明の時にすこーしだけ触れた感じもする配当生活ではあるのですが、具体的に考えた場合、どの程度生活の足しになるのかなぁって、私も興味がありましたので、ちょっとだけ深堀してみたいと思います。
①一気にお金が必要となる場合
②一定の期間でお金が必要になる場合
③長期間で取り崩していく場合
おまけ.配当金生活でどの程度まで生活は楽になる?
①一気にお金が必要となる場合
これは住宅取得時の頭金や事業開始時の運用資金、車の購入時などを想定しており、一括でお金が必要になる時において、どのような考えで新NISAで積み立てた資産を取り崩すべきかを考えてみます。まぁ、実際には・・・このような使途時期が明確で、一括で支払う資金に対しては、リスク資産ではなく、無リスク資産(個人向け国債や定期預金など)で貯めるのが一般的であり、安心でもあるのですが・・・、あえて新NISAで積み立てた場合の取り崩し戦略を考えてみたいと思います。
とは言っても・・・『一括+決まった時期』に資金が必要な関係上、必ず、その時期に現金を用意する必要があります。ですので、その現金が必要な時期キワキワまで運用を行うと、取り崩し時に相場が悪く(この前あった8月5日の大暴落のような・・・)、大きく資産が棄損した状態で取り崩しを行わないといけない・・・という事態にもなりかねません。でも、支払期日は決まっている状況ですので、泣きながら現金化するか、もしくは購入を諦めるかする必要があります。
ですので、このような資金においては基本的には定期預金や個人向け国債などの無リスク資産で運用するべきなのですが、新NISAなどのリスク資産で運用する場合・・・相場の状況を確認しつつ、最低でも1年、余裕を持つ場合は2~3年前にはリスク資産から無リスク資産へ振り替えて、相場が悪い時に売らされる事態を避ける必要があります。実際、このような資金をリスク資産で運用することはかなり危険度が高く、しっかりと経済状況や金融状況を見極めながら運用を行う必要があります。
②一定の期間でお金が必要になる場合
この取り崩し方の想定としては教育資金が挙げられると思います。特に大学進学後の4年間はお金が湯水のごとく消えていきます。学資保険(学資保険は保険者の方が亡くなった場合、保険料免除されるのが魅力です。利率的にはまったくお勧めできませんが・・・。)や定期預金、はたまた個人向け国債などで貯めていく事も考える必要があるのですが・・・お子様が生まれてから18年もの期間があるのであれば、何かしらのリスク資産にも原資を振り分け、できるだけ多くのお金をお子様の望む進路に向けて用意しておきたいと思うのも無理はない事だと思います。
ちなみに・・・大学進学でどの程度のお金が掛かるかと言うと・・・令和3年の日本政策金融公庫さんのデータなのですが、次の表の様になります。
国公立大学 | 私立文系 | 私立理系 | |
入学年度 | 170.8万円 | 233.8万円 | 272.0万円 |
2~4年目 | 103.6万円 | 152.0万円 | 183.2万円 |
合計 | 481.6万円 | 689.8万円 | 821.6万円 |
となっており、国公立大学で500万円弱、私立理系であれば800万円強の教育資金(医学系は怖くて調べていません・・・。)が必要な事が分かります。また、これは自宅通学の場合ですので、親元から離れて一人暮らしする場合は、仕送り等も必要な事(平均95.8万円/年とのことです。)を考えると、遠くの大学へ進学した場合、国公立大学であっても900万円程度の資金が必要になる事になります。
さて、この資金をどのように積み立てていくかを考えた場合・・・児童手当が1万円~1.5万円高校生の間まで頂ける(0歳から2歳までは1.5万円、それ以降は1万円で・・・今年の10月からですが、高校生も頂けるようになりました。また、第3子以降は3万円となります。)事を考え、すこーしだけ児童手当に加算し、2万円を18年間積み立てる事とした場合を考えてみたいと思います。まぁ、計算がしやすいから2万円にしただけなんですけどね・・・。
1つ目は無リスク資産・・・個人向け国債や定期預金のみで運用した場合です。金利も上がりつつある現在ですので、0.5%(現在の10年度個人向け国債の利率は0.61%(税引き前)となっています。)程度の利回りで考えた場合・・・元本432万円に対して約452万円の金額が18歳時での最終積立金額となります。なんとか・・・自宅通学の国公立大学の資金を賄える感じですね。
2つ目はリスク資産・・・株式中心の投資信託に2万円積立NISAで積み立てた場合を考えてみます。利回り的にはオール株式の投資信託だと、5%程度ではないかと思われます。この場合・・・元本は同じ432万円ですが、約698万円の金額が18歳時の最終積立金額となります。計算通りに取り崩しができるのであれば、私立文系まではこの積立金だけで賄う事ができますが・・・この資金も4年間という期間があるものの、出口時期が決まっているお金となります。取り崩し時期に相場が悪かった場合・・・目も当てられない結果となります。よもや・・・『株式相場が良くないので、大学を諦めてくれっ』なんて言える訳もありません。ですので、このリスク資産に全振りな投資で教育資金を蓄えるのはギャンブル的な要素も多く、お勧めできるものではないでしょう。
そこで3つ目として・・・2万円の積立資金を1万円ずつの2つに分け、1万円は無リスク資産、1万円はリスク資産で積み立てる方法を考えてみます。
1つ目・2つ目の利回りと同様、無リスク資産は0.5%、リスク資産は5%の利回りで考えると・・・無リスク資産側では元本216万円に対し、最終積立金額はは226万円、リスク資産においては元本216万円に対し、最終積立金約349万円となり、合わせて元本432万円に対し、約575万円の最終積立金額となります。
やはり総額ではリスク資産に全振りした方が多くなるのは当たり前なのですが、投資の良し悪しによってお子様を苦労させる訳にも行きません。この投資法のいい所としては、4年間に分けて資金が必要になる大学費用ににおいて、無リスク資産とリスク資産のどちらを先に取り崩すかを選択できる点ににあると思います。例えば・・・入学時にリスク資産の成績が良くない場合、先に無リスク資産から取り崩し、リスク資産は相場好転を待つことができます。大学入学初年度の必要資金が200万円前後であることを考えると、最低でも1年目の費用は無リスク資産から拠出することができます。その後、相場好転を待ちながら、リスク資産の取り崩し時期を見計らう事になります。当然のことながら、入学時に相場環境が良ければ、リスク資産から大学費用を拠出し、無リスク資産を後回しにすることもできます。
まぁ、この方法であっても、相場低迷が長期化した場合は、何かしら別の所から資金を持ってこないといけないのですが・・・全部をリスク資産で運用するよりも安全性は高く、全部を無リスク資産で運用するよりも教育資金が増える可能性が高い・・・そして猶予期間も持てる戦略になるのではないかと私は思います。
と・・・思うのは私がギャンブル寄りの思考だからかな?まぁ、教育資金以外にもある程度貯蓄ができている場合は、より安全性は増すのではないかと思います。
③長期間で取り崩していく場合
これは老後資金を想定したものですね。この場合は、ここまで積み上げてきた投資資金をできるだけ資産寿命を延ばしながら、取り崩していく事になります。この取り崩し方法の代表的なものに定額法と定率法というものがあり、それぞれの特徴は以下の様になっています。
・定額法
毎年(毎月)一定金額を取り崩していく方法。(例:毎年120万円を取り崩すなど)
利点・・・取り崩し金額が決まっているので、生活資金として過不足なく取り崩すことができ、生活
資金安定に寄与します。
弱点・・・相場の調子がいい時も悪い時も一定金額を取り崩す為、相場が崩れている時のダメージ
が大きい。
・定率法
毎年(毎月)一定割合を取り崩していく方法。(例:毎年資産の4%を取り崩すなど)
利点・・・定率で取り崩す為、相場下落時のダメージが一定で収まる。逆に相場上昇時は取り崩し
金額が増え、前提とする生活設定より余裕のある生活ができる。
弱点・・・定率での取り崩しの為、毎年の取り崩し金額が安定しない。また、相場下落時は生活費
を賄えない場合も発生する。取り崩しが進み、資産が減少すると取り崩し金額が減って
しまい、生活に十分な金額を賄えない。
それぞれの特徴は上記の様になっており、どちらもメリット・デメリットが存在します。資産寿命が長いのは定率法と言われていますが、それを行う事により、毎年の生活費が足りないなんてなると・・・本末転倒の話となります。本来なら、定額法で安定した老後を過ごしたいところですが、なかなか難しい・・・。
という事で、定額法、定率法のどちらで資産を取り崩すのがいいのか・・・悩ましい所ではあるのですが、相場の暴落に対して安全対策を設けたいという心理もあります。そこで、資産に相応の余裕がある場合ですが、『資金プール型定額法』というものがあります。
これは一定金額(年間取り崩し額の3年分から5年分程度を現金系資産(定期預金などでも可)で取って置き、リスク資産の取り崩し時期をある程度任意にできる様にするものです。この任意な取り崩し時期においては明確なルールがあった方が分かりやすいのではないかと思います。例えば、前年比10%以上上昇した時に取り崩しを行わなかった分も合わせて取り崩しを行い、5年分(3年分などでもいいと思います。)の現金系資産をプールし直す、基準価格が2年連続で5%以上上昇した時、取り崩しを行い、現金系資産をプールし直す・・・などです。
なんかうまく行きそうなイメージもしますが、この方法もメリット・デメリットがあります。
メリット
・相場が悪い時に取り崩すことが無く、精神的安定を得られる。
・相場が悪い時に取り崩すことが少なく、暴落時に取り崩す機会が減る。
デメリット
・相場にフルインベストメント(余剰資金のすべてを株式相場(投資信託等に投入する)事をしない
ので、相場上昇時に資産増加額が減少する。
・一定年間(5年・3年等)ずっと相場が悪い場合、プールした資金が無くなり、安い基準価格で
投資信託を取り崩す必要が出てくる。
と言ったところでしょうか。
この方式を使った場合、精神の安定は得られやすくなる(安い基準価格で売るのはすっごいストレスになります。)半面、相場上昇を取り逃がし、資産寿命が思う様に伸びない可能性も出てきます。
一例として、下に30年間のS&P500(アメリカの代表的な株価指数)の年末終値の表がありますが、これの最良と思われる年(1995年)、最悪と思われる年(2000年)から資産の取り崩しを行った場合、どのようになるかを見てみたいと思います。
年 | 12月価格 | 騰落率 | 年 | 12月価格 | 騰落率 |
1994年 | 459.3 | 2009年 | 1115.1 | 123.5% | |
1995年 | 615.9 | 134.1% | 2010年 | 1257.6 | 112.8% |
1996年 | 740.7 | 120.3% | 2011年 | 1257.6 | 100.0% |
1997年 | 970.4 | 131.0% | 2012年 | 1426.2 | 113.4% |
1998年 | 1229.2 | 126.7% | 2013年 | 1848.4 | 129.6% |
1999年 | 1489.2 | 121.2% | 2014年 | 2058.9 | 111.4% |
2000年 | 1320.3 | 88.7% | 2015年 | 2043.9 | 99.3% |
2001年 | 1148.1 | 87.0% | 2016年 | 2238.8 | 109.5% |
2002年 | 879.8 | 76.6% | 2017年 | 2673.6 | 119.4% |
2003年 | 1111.9 | 126.4% | 2018年 | 2506.9 | 93.8% |
2004年 | 1211.9 | 109.0% | 2019年 | 3230.8 | 128.9% |
2005年 | 1248.3 | 103.0% | 2020年 | 3756.1 | 116.3% |
2006年 | 1418.3 | 113.6% | 2021年 | 4766.2 | 126.9% |
2007年 | 1468.4 | 103.5% | 2022年 | 3840.0 | 80.6% |
2008年 | 903.2 | 61.5% | 2023年 | 4769.8 | 124.2% |
すっごい大きな表になって申し訳ない・・・。このデータを元にして、定額法・定率法・資金プール型定額法で取り崩した場合、どのような試算の推移となるかを見てみたいと思います。
具体的な方法として100の資産を年末において・・・定額法では毎年4ずつ、定率法では毎年4%ずつ、資金プール型定額法では20を先取りして、前年比が+10%以上となった時に取り崩しを行い先取り分を20に戻し、それに届かない場合は取り崩しを行わない・・・という事を行った結果を見てみたいと思います。
何年から始めるかですが、一番タイミングがよさそうな1995年からと一番タイミングが悪そうな2000年からの2パターンで行い、2023年末時点でいくら資産が残っており、取り崩した額はいくらかを見てみたいと思います(まぁ、実際この手の指数は配当などが出るとその配当分だけ指数は減少しますし(投資信託ではその配当分を再投資します。)、投資信託の場合、信託手数料も考えていませんので、正確に投資信託の数値を表わしたものではないのですが・・・ある程度の感覚はつかめるのではないかと思います。)
2023年残金 | 取り崩し額 | 総額 | |
定額法 | 648.3 | 116.0 | 764.3 |
定率法 | 317.9 | 239.2 | 557.1 |
プール法 | 473.9 | 116.0 | 589.9 |
2023年残金 | 取り崩し額 | 総額 | |
定額法 | 34.8 | 96.0 | 130.8 |
定率法 | 120.2 | 75.4 | 195.6 |
プール法 | 4.9 | 96.0 | 100.9 |
まぁ、S&P500の生データを参考にするのは若干無理があるのですが、各種取り崩しのそれなりの傾向はつかめるのではないかと思います。
まず、取り崩し額と2023年における残存資金の合計額が多いのは1995年取り崩し開始時の場合は定額法、2000年取り崩し開始時の場合は定率法となります。という事は、取り崩し開始直後に相場環境が良い場合は定額法、悪い場合は定率法が効率よく資産取り崩しができる事になります。この原因として、定率法においては4%という定率で取り崩している関係上、相場環境が良い時は取り崩し額が多くなり、投資資金の多くを取り崩してしまうという面があります。逆に相場環境が悪い時に定率法で取り崩しを行った場合、取り崩し額減少が投資資金を多く残す結果となり、資産寿命を延ばす結果となっています。
しかしながら、2000年取り崩し開始時の定率法の取り崩し額を見てみると、年4ずつ取り崩した場合の総額である96を下回り、75.4の取り崩しとなっており、毎年の生活資金がこれで事足りるかが問題となります。ちなみに取り崩し額が最低の年は1.75の取り崩し額となっており、定額法の半分以下の取り崩しとなります。という事は、定率法で行う場合は、生活資金を柔軟にコントロールするか、不足分を最低限で追加取り崩しを行うかが必要になるのではないかと思います。
資金プール法においてはあまり芳しくない結果となっています(割と行けるのでは?って思ってたのは内緒です。)。相場がいい時の取り崩しでは定額法に勝てず、定率法と大きく変わらない結果となっており、相場が悪い時の取り崩しにおいては2023年末(23年後)には4.9の投資資金しか残っておらず、2年後には無くなってしまう結果となっています。相当余裕がある場合でないと、できない選択ではないかと思われます。
まぁ、このS&P500を使ったデータだけでは何とも言えない部分はありますが・・・この結果だけを見た場合、取り崩し時は基本的には定率法で行い、余剰分(1995年の相場好調気に始めた場合、年間における最大取り崩し額は14.36あり、定額法の3.6倍程度ありました。)は再投資を考えつつ、すこーしだけ贅沢するのがいいのかなぁとも思います。これに関しては将来的な株式推移はわかりませんし、何とも言えない部分も多く、また、これ以外にも様々な取り崩し法(現金を半分持っていつでも半分になるように保つなど・・・)が存在しますので、今年から新NISAを活用し始めた方は、時間はまだまだある事ですし、いろいろとより良い方法を検討していくのもいいのではないかと思います。
おまけ.配当金生活でどの程度まで生活は楽になる?
注)この投資法を勧める訳ではありません。あくまでも、思考実験ですので、あまり真に受けないようにしてください。
っと・・・いきなり注意から始まりましたが、最後におまけとして、企業が支払う配当金で老後資金を賄う場合、どの程度生活は楽になるのでしょうか・・・?という事を考えてみたいと思います。
今回は値上がり益などではなく、配当金のみにフォーカスしますので、投資信託の基準価格の変動や株価の変動は気にしません。あくまでも配当の多寡、減配や無配(配当を減らしたり、無くしたりすること)の危険性を考慮するだけとします。
新NISAでの生涯投資枠は積立枠で600万円、成長投資枠で1200万円ですので、それをフルで使う前提で考えていきたいと思います。また、新NISA枠を全部埋めるためには最低5年間かかるのですが、5年後の投資信託の基準価格や株の株価はわかりませんし、具体的に見ていきたいので、投資信託、株価の価格は8月末のものを使いたいと思います。
1.積立投資枠での投資信託
積立投資での投資信託は何を選ぼうかと悩みましたが・・・今回は配当金生活というくくりですので、高配当銘柄に投資することをコンセプトとする『日経平均高配当利回り株ファンド』を選択しようと思います。本当は『日経連続増配指数投資信託』にしたかったのですが・・・ファンド設立からそこまで日が経ってない事もあり、積立投資枠になかったもので・・・。
このファンドの基準価格は8月29日時点で18079円、年2回分配金を支払っており、前年12月の分配金が270円、今年6月の分配金が280円となっています。という事は直近の年間利回りは・・・
(270円+280円)÷18079円=3.04%
となります。ですので、これに600万円(あくまでも現在の基準価格、分配金でですが・・・。)を投資した場合、182400円の分配金を頂けることになります。
2.成長投資枠での高配当銘柄投資
まぁ、ここも投資信託で買っても良いのですが、あえて難しい道として個別株から選んでみたいと思います(あえて難しいって・・・どMかっ!)。まぁ、個別株で高配当銘柄を狙う場合、現在高配当を発表している銘柄であっても、将来的に業績不振に陥ると減配・無配となる可能性も秘めている所は、この投資法の難しい所です。まぁ、最悪としては倒産して株価も0になる可能性もあるのですけど・・・。という事は、銘柄選定は非常に慎重に行う必要がありそうです。また、一つの会社に資産の多くを投資してしまうと、その会社が業績不振となった場合、非常に大きなダメージを負いますので(不謹慎な話ですが、東日本大震災前は東京電力株が年金株として人気でしたが・・・事故後は悲しい結果となってしまっています。)、分散投資が基本となるのですが、分散しすぎると目が届かなくなるというジレンマに陥ります。私的にはどの会社にも同程度の金額を分散投資するのであれば、10~20社程度がいいのではないかと思います。また、分散投資する場合は業種が偏らないようにするのがいいのかなぁ(あんまり業種が偏ると、その業種がダメになった時に全部ダメになる可能性が高いと思われます。例えば、不動産業界に偏るとか、銀行業界に偏るとか・・・。)。
と・・・その銘柄選定の基準ですが、ある程度はマネックス証券の銘柄スカウターの中にある『10年スクリーニング』というツール(残念ですが、マネックス証券に口座を開いてないと使えません・・・。ですが、どの証券会社もスクリーニングツールを持っていると思いますので、それを使っても同じような事ができると思います。)を使って、選定を行い、その中から大部分を選んでいきたいと思います。
その条件の内容ですが・・・以下のような感じです。
スクリーニング(銘柄選定)条件
・時価総額・・・1000億円以上
あんまちっちゃすぎる会社だと安定性がないからなぁ。
・10年成長率(売上)・・・5%以上
やっぱ、売り上げ規模は伸びてないとね。売り上げが伸びてないとじり貧になりそうです。
・10年成長率(営業利益)・・・5%以上
営業利益(本業で稼ぐ利益)が増えてないと、こちらもじり貧になります。経常利益や税引き後純利益は様々な要因で変動しますので、本業が稼げるかどうかを重視するために営業利益にしています。
・実績配当利回り・・・3%以上
配当金額を株価で割った指標です。
やっぱ、配当金を生活費に充てるのだから、3%ぐらいはほしーかなぁ。
・配当性向・・・50%以下
配当性向は当期純利益に対する配当総額の割合の事で、その年に稼いだお金のどれくらいを配当に回しているかという事を表わします。まぁ、これが高すぎると、稼いだお金のほとんどを配当に回してるってことで、減配リスクがあったり、増配余地がなさそうだからなぁ。
・自己資本比率・・・40%以上
これは総資本のどれくらいを自前で持っている(借金等で賄っていない)かを表わすデータで、低いと財務健全性が問われちゃいます。そこまで高いハードルで設定してはいませんが、せめて40%程度は持ってて欲しいなぁ。これも倒産・減配等のリスクに係ります。
と・・・こんな感じになります。もっといい絞り込み方があるんだろうけど、私が思いつくのはこんな感じです。知っている方がいれば、教えて欲しいなぁ。
で、絞ったのが下の図となります。
マネックス証券『銘柄スカウター・100年スクリーニング』より
ちっちゃすぎて・・・何が何だかという風になっっちゃっていますが、27銘柄まで絞る事ができました。この中の銘柄を中心に、10銘柄程度に投資すると考え、独断と偏見で下の様に選んでみました。
銘柄名 | 業種 | 株価 | 配当金 | 株数 | 投資金額 | 配当合計 |
クミアイ化学工業 | 化学 | 777円 | 30円 | 1,200株 | 932,400円 | 36,000円 |
本田技研工業 | 輸送機器 | 1,588円 | 68円 | 600株 | 952,800円 | 40,800円 |
小松製作所 | 機械 | 4,056円 | 167円 | 300株 | 1,216,800円 | 50,100円 |
フェローテックHD | 電気機器 | 2,411円 | 100円 | 500株 | 1,220,500円 | 50,000円 |
加賀電子 | 卸売業 | 5,450円 | 220円 | 200株 | 1,090,000円 | 44,000円 |
丸一鋼管 | 鉄鋼 | 3,493円 | 131円 | 300株 | 1,047,900円 | 39,300円 |
小野薬品工業 | 医薬品 | 2,156円 | 80円 | 500株 | 1,078,000円 | 40,000円 |
積水ハウス | 建設 | 3,754円 | 129円 | 300株 | 1,126,200円 | 38,700円 |
三菱UFJ | 銀行 | 1,528円 | 50円 | 600株 | 916,800円 | 30,000円 |
住友商事 | 商社 | 3,446円 | 130円 | 300株 | 1,033,800円 | 39,000円 |
NTT | 情報通信 | 155.7円 | 5.2円 | 8,800株 | 1,370,160円 | 45,760円 |
合計 | 11,985,360円 | 453,660円 |
10銘柄に収めようと思ったら・・・11銘柄になっちゃった。知名度が低い銘柄も多いですが、自己資本比率等を考慮すると来年・再来年ととかに倒産するような会社はないと思います。また、下の3銘柄(三菱UFG・住友商事・NTT)においてはスクリーニングには出てきてはいませんが、メジャーな銘柄で配当が高い所を入れたかったこともあり、ねじ込んじゃいました。と・・・この選定で必要資金が1200万円弱、今期での予定配当金が453660円という結果になりました。あくまでも8月30日の株価において・・・ですが。
1で考えた投資信託(日経平均高配当利回りファンド)の分配金182400円に2で考えた高配当株配当金453660円を足した金額である636060円が1800万円の新NISA枠でめいいっぱい配当狙いで購入した場合の収入金額となります。利回り3.5%強という事になるのですね。約63万円・・・月額にして5万円ちょっと・・・まぁ、2000万円問題をなんとかクリアできる金額になるのかなぁ、という結果になりました。机上の空論とは言え、割と多い金額になったので、私的には満足いく結果となりました。
ただ、この高配当銘柄をメインとした新NISA戦略にも結構問題があったりします・・・それは次のようになるのではないかなぁと思います。
高配当銘柄戦略の問題点
・減配の可能性
財務健全性は自己資本比率や営業利益増加率などである程度見ているものの、業績悪化があれば・・・減配・無配もあり得ます。また、10銘柄程度に分散しているとはいえ、減配・無配の会社があると、肝となる収入金額は減ってしまいます。まぁ、減配・無配が無ければ、株価変動はあまり気にしない投資なので、その辺は楽なんですけどね。
・倒産の可能性
上記減配と同様・・・と言うか・・・より業績悪化があった場合、倒産もあり得ます。財務健全性はある程度見てはいるものの、将来、何があるかわかりません。最悪倒産となった場合、1社の場合であれば、投資金額の1/20程度が無くなってしまう事になります。また、その場合、メンタル的なダメージも大きそうな感じがします。
・銘柄監視の必要性
投資信託はファンドマネージャーが勝手にポートフォリオの組み換えをやってくれるからいいのですが、個別株の方はそうもいきません。そう頻度はいらないものの、ある程度の銘柄入れ替え等、チェックをする必要があります。ある程度、株式投資をわかってないと難しいのかも・・・です。
・完成までに最低5年
新NISA制度においては年間において積立投資枠120万円、成長投資枠240万円の合計360万円という枠が決まっています。この枠いっぱいいっぱいに毎年投資を行っても、ポートフォリオ完成までに5年かかってしまい、期間の長い設計が必要になりそうです。
とまぁ、問題も多い新NISA高配当投資戦略ですが、やはり株価自体を意識する必要が無く、年間60万円超の不労所得が入ってくるのは大きいのではないかなぁと思います。年金の足しという面が多いと思われ、資産的に失敗ができない年配の方に、このようながっつりリスク資産に突っ込むことをお勧めするのはどうか・・・?と思う所はありますが、それはリスクとリターンを天秤にかけて考える必要がありそうですね。
あっ、この投資方法がお勧めっ!という訳ではなく、このような考え方もあるよーぐらいで思ってください。あくまでも投資は自己責任です。自分の『腹落ち』した、投資手段で資産寿命を延ばすのがいいのではないかと思います。
さて、今回は新NISAの出口戦略とおまけで高配当でめいいっぱい配当金を貰ったらどのくらいになるの?という机上の空論を書かせていただきました。投資手法は人それぞれですし、新NISAの活用方法も人それぞれです。自分が納得する投資を行い、ライフプランに合った取り崩しをしっかりと検討することにより、資産ロスを少なく押さえ、金銭的な面で目標を諦めるような事が無いようにしたいですね。
今回の資料作成にお世話になった日本政策金融公庫さんとマネックス証券さんのリンクを貼っておきますね。
日本政策金融公庫
マネックス証券
今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。