えっ、老後資金4000万円!?・・・2000万円じゃなかったっけ?

 一時期騒がれていた老後2000万円問題・・・その金額の大きさにびっくりしたものですが、ここ最近、これが4000万円になるって一部で騒がれています。

どういう事だろ?

って、これはとある情報番組でインフレ状況下においては当然、必要な老後資金も増えるだろうという事で、20年後には4000万円になっていると・・・発言されたことが端を発しているみたいです。
 ですので、今回は老後2000万円問題を振り返り、今回の老後4000万円問題、また、数字遊びになるのですが・・・私が考える必要金額、対処法(あるのかなぁ?)などを書いていきたいと思います。ただ、一括りに老後資金問題と言っても、家族構成や持ち家の有無、年金受給金額の多寡、どのような老後を送りたいか・・・などなど、個々人で様々となりますので、老後資金の正解は人の数だけあると言っていいのではないかと思います。
まぁ、とは言え、多かれ少なかれ、老後資金対策は必要だと思うのですけどね・・・。

①老後2000万円問題とは?
②なぜ、4000万円に増えた?
③元となったデータの変遷はどうなの?
④同じように考えると、どのくらいの金額になる?
⑤取れる対策はあるの?

①老後2000万円問題とは?

 そもそも今回の話題の元となった老後2000万円問題とは・・・2019年6月(ちょうど5年前になるのですね・・・。)に金融審議会市場ワーキング・グループの報告書で公表されたことに端を発します。大騒ぎがあって、当時の麻生副総理兼金融担当大臣が受け取りを拒否したって・・・話題になりましたね。まぁ、受け取りを拒否しても試算がなかったことにはならないのだけど・・・。

 その経緯はさて置き、どのような試算があったかと言うと・・・2017年の家計調査年報の中の『高齢夫婦無職世帯の家計収支(下の図です。)』の収入と支出を表わした家計収支で実収入が209198円、支出が263717円となっており、不足分が月54519円である事(下図の赤枠の所です。)が起因しています。

                            家計調査年報(家計収支偏)平成29年(2017年)より

 この不足分が65歳から95歳まで30年間続いた場合、『54519円×12か月×30年』で19626840円、即ち約2000万円の老後資金が必要となる計算になるのです。まぁ、確かに・・・このデータを元に考えると、こうなるわなぁという結果でもあります。

 ちなみに単身世代の数値も出ており、下の図のようになっています。実収入が114027円、支出が154742円、不足分が40715円となっています。若干不足分は減ったものの、4万円強となっており、同様に30年間老後期間があると考えると・・・『40715円×12か月×30年』で14657400円、1400万円半ばの老後資金が必要となります。

                            家計調査年報(家計収支偏)平成29年(2017年)より

 うーん、どちらも結構な金額で、これだけの金額を用意するのはなかなかハードルが高いと言えそうですね。

②なぜ、4000万円に増えた?

 じゃぁ、なぜこの2000万円が4000万円まで増えたのかと言うと・・・とある情報番組で年率3.5%のインフレが毎年起こるのであれば、20年後には4000万円程度まで必要老後資金が増えるという発言があったからです。その計算式は以下の通りだと思われます。

2000万円×1.035の20乗

 確かに、前年比3.5%のインフレが続けば・・・基準年(まぁ、今年でもいいのですが・・・)の次の年の物価は1.035倍、その次の年は1.071倍、5年後は1.187倍、10年後は1.41倍、20年後には・・・1.99倍となります。約倍化しちゃいますので、20年後に必要な老後資金は4000万円となる計算になります。若干乱暴な計算ではあるのですが、3.5%もの物価上昇が毎年起こると仮定すると・・・そのようになる可能性も否定できません。
 これが今ちょっとだけ騒がれている、老後4000万円問題と言われるものです。

③元となったデータの変遷はどうなの?

 これらの試算は・・・あくまでも2017年の家計調査年報によるものです。では、この家計調査年報の最新のものはどうなっているのでしょう?令和5年(2023年)のデータを見てみましょう。

                              総務省統計局『家計調査報告ー月・四半期・年ー』より

 これを見てみると・・・次の様になります。って、なんか夫婦2人世帯の数値が1ズレるけど・・・まぁ、いっか。

収入額支出額不足額
夫婦2人世帯244,580円282,497円37,916円
単身世帯126,905円157,673円30,768円

 夫婦2人世帯では収入が24万4680円、支出が28万2497円、不足額が3万7916円、単身世帯においては収入が12万6905円、支出が15万7673円、不足額が3万768円という結果になっています。
 あれ?なんかかなり減ってるような・・・。ここから同様の試算を行うと・・・夫婦2人世帯においては『37916円×12か月×30年』となり、13649760円、単身世帯では『30768円×12か月×30年』となり、11076480円となります。夫婦2人世帯では1300万円半ば、単身世帯では1100万円程度の老後資金が必要な事になります。
 んー、なんかいつのデータを引っ張ってくるかで、全然数値が変わってくるなぁ。という事で、ここ10年でこの数値がどのように変わっていっているかを見てみたいと思います。

1.夫婦2人世帯の場合
 まずは夫婦2人世帯の場合で、ここ10年における家計収支は下の表の様になっています。

収入支出不足分
2014年207,347円268,907円61,560円
2015年213,379円275,706円62,326円
2016年212,835円267,546円54,711円
2017年209,198円263,717円54,519円
2018年222,834円264,707円41,872円
2019年237,659円270,929円33,269円
2020年256,660円255,550円-1,110円
2021年236,576円255,100円18,525円
2022年246,237円268,508円22,270円
2023年244,580円282,497円37,916円
平均228,731円267,31738,586円

 過去10年間を平均値で見てみると・・・収入22.8万円、支出26.7万円、不足分3.9万円となっています。しかも・・・なんと!2020年の収支は黒字となっています。これはコロナ給付金があったからだろうなぁ。という事は、今年も定額減税や給付金がある事を考えると、多分・・・赤字幅は縮まるのではないかと思います。また、ここ数年の赤字幅は若干少なめになっており、10年前~6年前あたりの赤字幅が大きい傾向にある・・・かな?

2.単身世帯の場合
 つぎに単身世帯の過去10年間のデータを調べてみました。下の表のようになります。

収入支出不足分
2014年112,207円153,724円41,516円
2015年115,179円156,374円41,195円
2016年120,093円156,404円36,311円
2017年114,027円154,742円40,715円
2018年123,325円161,995円38,670円
2019年124,710円151,800円27,090円
2020年136,964円144,687円7,723円
2021年135,345円144,747円9,402円
2022年134,915円155,495円20,580円
2023年126,905円157,673円30,768円
平均124,367円153,764円29,397円

 単身世代における過去10年間の平均収入は12.4万円、支出は15.4万円、不足分は2.9万円となります。単身世代においても2020年の給付金やコロナ環境下での自宅待機が影響している状況で、コロナ禍の頃はかなり赤字幅が縮小したデータとなっています。

④同じように考えると、どのくらいの金額になる?

 さて、過去10年間のデータを調べたところで、無理やりではあるのですが、今後どの程度の老後資金が必要かを考えてみようかと思います。これは単なる数字遊びな面が多くなりますので、ふーんという感じで流し読みしていただければ幸いです。

 前提条件として・・・収入額、支出額は過去10年間平均のものを使おうと思います。その上で、今回話題となったインフレ率ですが・・・1%、2%、3%の3種類で考えてみました。また、収入の9割超は年金収入となっており、しばらくはマクロ経済スライドが発動する予定となっています(終了時期一応決まっているようですが、いましばらくは続くようです。)。ちなみに昨年の物価上昇率は3.1%、年金増加率は2.7%、マクロ経済スライドは0.4%であったことを考えると、物価上昇率に対して87%の年金上昇があった事になります。もうしばらくはマクロ経済スライドが発動すること、10%弱とは言えその他収入があり、これは物価上昇に合わせて上昇すると仮定し、ちょっとどんぶり勘定ではあるものの、収入上昇率は物価上昇率の95%(1%物価上昇する時は0.95%収入上昇)として考えようかと思います。
 この前提で、今年65歳、55歳、45歳、35歳、25歳の方が65歳(要するに今年65歳の方から40年後65歳の方まで)から30年間の総収入、総支出、不足額を見てみると・・・

現在年齢総収入総支出不足額
65歳95,659,679円112,698,945円17,039,266円
55歳105,145,854円124,489,749円19,343,894円
45歳115,572,734円137,514,131円21,941,397円
35歳127,033,604円151,901,151円24,867,547円
25歳139,631,001円167,793,373円28,162,372円
                                                 物価上昇率1%の場合
現在年齢総収入総支出不足額
65歳111,705,662円132,737,136円21,031,474円
55歳134,839,467円161,805,828円26,966,361円
45歳162,764,192円197,240,401円34,476,209円
35歳196,472,019円240,434,948円43,962,930円
25歳237,160,604円293,088,860円55,928,257円
                                                物価上昇率2%の場合
現在年齢総収入総支出不足額
65歳131,088,754円157,190,987円26,102,233円
55歳173,623,456円211,251,542円37,628,086円
45歳229,959,501円283,904,408円53,944,907円
35歳304,575,045円381,543,784円76,968,739円
25歳403,401,285円512,762,940円109,361,655円
                                                 物価上昇率3%の場合

 という結果となりました。ちょっと数字が大きすぎてわかりにくいのですが、現在65歳の方が物価上昇率1%時に65歳から95歳までの30年間の総収入は約9600万円、総支出は約1億1300万円、不足分が約1700万円という結果になっています。同様に・・・今回話題になった老後資金4000万に近い、3%の物価上昇で見てみると、現在65歳の方は約2600万円、話題となったのは20年後ですので・・・現在45歳の方は20年後65歳ですので、そこから30年間では約5400万円の資金が必要な計算となります。

あれ?4000万円では足りなくなっちゃった・・・><;

 うーん、ちょっと怖い数値になってしまいましたが、この計算は単純に収支と支出に物価上昇率とその修正値を掛けただけの計算ですので・・・自分で計算しておいてなんですが、なんだかなぁ~という感じもします。ただ、インフレ環境下にある場合はお金の価値は年を追うごとに棄損しちゃいますので、今より老後資金が必要になるのは確実なのではないかなぁとも思います。その頃には10万円紙幣とかも出ちゃったりしたりして・・・。

⑤取れる対策はあるの?

 じゃぁ、取れる対策はあるのかと問われると・・・月並みな事しか答えられない感じもします。収入の増加、支出の削減、健康で末永く働く、お金の置き場所を再考する・・・と言った感じじゃないでしょうか。

1.収入の増加
 去年今年あたりは大幅な賃上げがあり、政府も『骨太の方針』でも賃上げの定着を目指すようですが・・・急なお給料のアップはなかなか難しいのではないかなぁと思います。まぁ、今の労働市場は売り手市場となっていますので、転職などで収入アップなども考えられますが、今いる職場の居心地がいいのであれば、どのような環境になるかも分からない転職には二の足を踏むのではないかと思いますし、リスキーでもあると思います。
 となると・・・副業とかになるのかなぁ。でも働きすぎて体壊したら元も子もない・・・。好きな事をサイドビジネスとしてやるのであれば、良いのかもしれませんね。

2.支出の削減
 これは無理してやるとストレスになるし、今が楽しめないと、将来どころではない部分もあります。そこでお勧めの順番としては・・・

 まずは無駄な固定費の削減、これは保険に入りすぎていないかとか・・・利用頻度が低いサブスクやフィットネスクラブの会員費はないかとか・・・スマホの料金プランの見直しはできないのかとか・・・電気料金のプラン変更で安くならないかとか・・・になります。これらの変更は、いざやろうかと思いうとめんどくさくて腰が重くなりがちなものの、一度変更してしまえば、後は何もしなくても支出の削減となりますので、無駄を感じる部分があれば、一度見直した方がいいと思います。

 次にラテマネーのチェックとなります。ついつい必要もないのに買ってしまうものありませんか?例えば出勤途中でのコーヒースタンドでのカフェラテとか(ここからラテマネーと呼ばれています。)、コンビニでのついで買いとか(まぁ、私的にはコンビニ行くならドラッグストアあたりで同じもの買いますけど・・・。)、これらの出費は本当に必要なのかをしっかりと考え直すと、無駄な出費が減ります。ただ・・・一見無駄に見えても、自分自身の精神衛生上必要なものもありますので、無駄に見えてやめたけど、辞めたことでイライラしてしょうがないとかいう時は、何かしらのルールを決めて戻すのもあり(毎日だったのを週1にするとか、2日に1回にするとか・・・)かもしれませんね。

 ただ、食費などの体の根本を作るものに対しては、無駄な部分は省いてもいいかもしれませんが、体を壊しちゃいますので、ちゃんと栄養のバランスの取れた食事を心がける必要がありますね。また、過度なストレスが掛かる節約は心を蝕んじゃいますので、労力と見合わない節約はあまりお勧めできないかなぁ。

3.健康で末永く働く
 多分、これが一番の老後資金対策となるのではないかなぁと思います。現役の様にフルで働く必要はありません。体を動かして、社会とつながる事により、心身ともに健康に良いですし、程よいストレスと程よい楽しみ、そして多くはありませんがお金も頂けますので、良い事づくめです。
 まぁ、老後も働かせるつもりかっ!とお怒りの方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなストレス一杯に働く必要はありません。週に3日でも働きながら同僚との関係を楽しむイメージで働くと、健康年齢も資産寿命も伸びるのではないかと思います。

4.お金の置き場所の再考
 これはまぁ、投資という事になりますが、余剰資金はお金が勝手に増えてくれる場所へ置いておくのが一番です。金利が上がりそうな現状ではありますが、銀行預金ではまだまだ、ほぼお金が増えない状況です。iDeCoやNISAを利用し、現金とのバランスを取りながら、インフレに強いリスク資産に分散すると、資産寿命は勝手に伸びていってくれる思います。この場合は、経済活動により利益を生まないもの(FXや仮想通貨など)は避けて、債券や株式など一定の利率で利子をくれるものや経済の成長とともに育ってくれるものにお金を置くのがいいのではないかと思います(まぁ、投資は自己責任なのですけども・・・。)。


 さて、今回は巷でちょっとだけ騒ぎになった老後4000万円問題について考えてみました。もっとひどい結果になって驚愕していますが・・・これはあくまでも机上の計算であり、数字遊びでもあります。将来のインフレ率なんて誰も予想できません(と言いつつ・・・私的には1%~2%程度になるのではないかなぁって思っていますけど。)。ですので、老後○○円必要っ!とかはあまり思い悩まないで、今できる事をきっちりやる!という精神でいいのではないかと思います。無理をしないで今を楽しみながら、無駄な支出を減らし、長期目線で投資を行う・・・。今も楽しみ、老後も楽しめる・・・そんな生活ができればなぁと思います。

 最後に『投資は自己責任』という事は強調していいのではないかと思います。投資は自己責任・自己判断で行っても、(信用取引などをしなければですけど)どうせ無くなるのは投資に回したお金が限界です(まぁ、株は倒産があり得ますので全額没収までありえますが、投資信託だと全額没収はまずないと思います。)。その限りにおいて自己責任なのですから、変に怖がる必要はないのではないかと思います。また、それを心掛けながら投資を行うと、今世間を騒がせている投資詐欺に引っかかる事も減るのではないかと思います。あれは・・・思いっきり投資の責任もお金も他人に任せてしまう行為ですから・・・。少額から積立投資を行い、勉強をしながら、価格の変動に慣れていくのがいいのではないかと思います。

 参考先リンクとして総務省統計局の『家計調査年報』と2023年の『家計調査年報』を置いておきますね。

総務省統計局『家計調査年報』
総務省『家計調査報告(家計収支偏)20203年(令和5年)

今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。