新NISAについて②
前回、稚拙ではあるのですが、新NISAの概要を説明させていただきました。今回は2回目として新NISAを活用するにあたり、制度的に気をつける必要がありそうな次の3点を見ていきたいと思います。
①NISA口座での損失は損益通算できません。
②旧NISAからの移管はできません。
③分配金や配当はNISA口座には残りません。
それでは、順にみていきたいと思います。
①新NISA口座での損失は損益通算できません。
これは主にスポット購入の場合ですが、通常の証券口座においては特定口座においても一般口座においても、税制上、利益と損失の相殺ができます(確定申告が必要な場合がありますが・・・。)。
例えば・・・
A銘柄100万円で購入→150万円で売却=50万円の利益
B銘柄100万円で購入→80万円で売却 =20万円の喪失
と1年の間で2つの取引を行った場合、税制上は『50万円の利益ー20万円の損失』という形になり、利益の50万円ではなく、損得を差し引いた30万円に対して20.315%(復興税含む)の税金がかかります。
しかしながら、NISA口座で損失があった場合、他の特定口座や一般口座の利益と通算することはできません。(NISA口座は元々利益に対して非課税ですので、NISA口座内では損益通算の概念がありません。)つまり・・・
A銘柄100万円で購入→150万円で売却=50万円の利益(特定口座)
B銘柄100万円で購入→80万円で売却 =20万円の損失(NISA口座)
の場合は、特定口座の50万円に20.315%の税金がかかることになります。という事は株式相場でよくみられる・・・12月の益出し・損出し(12月に税金負担を考慮しながら含み損が出ている銘柄を売ったり、逆に利益が出ている銘柄を売ったりして、利益相殺する行為です。)の対象外となってしまうのです。それ自体、使い勝手がかなり悪いのですが、それ以上に問題な事がある気がします。それは・・・損を出している銘柄は売りにくいものです(せめて損益トントンになるまで持っておきたいという心理が働きます。って私だけ?)。この心理を税負担を減らすためと言う理由をつけ、損出しして株価上昇のストーリーが崩れた(誰もが株を買う時はこうこうこういう理由で株価が上昇すると思って買うものです。)不良資産化している値下がり株を売って身軽になることができ、次の投資へ向かうことができます。積立投資は淡々と積み立てる投資なので大きな問題ないと思われるのですが、スポット投資の場合は特に注意が必要だと感じます。気付いたら不良資産の残骸が山となってる・・・という状況になりかねません。また、旧NISAの時ほどではありませんが、新NISAでも年間の総枠が成長投資枠240万円と決まっていますので、すぐに売るという決断が鈍ることも考えられます。スポット投資をする場合は株価上昇の確度が高いものをしっかりと押さえたいものです。また、株価上昇のストーリーが崩れた銘柄はどこかで思い切って売るという決断も必要かもしれません。
②旧NISAからの移管はできません。
旧NISAの一般NISAは5年間と期間が短い為、6年目に入る前に5年の満期を迎えた株・投資信託を6年目のNISA枠を使ってNISAで持ち続ける(ロールオーバーと呼ばれます。)事が出来ました。今回、旧NISAから新NISAに変わるのあたって、旧NISAから新NISAへのロールオーバーはできない仕様となっています。
ですので、旧一般NISAで持っていた株や投資信託が期限を迎えそうなときに取れる行動は・・・
1.期限までに売る。
2.特定口座や一般口座に時価換算で移管される(時価換算ですので、NISA口座における利益分は課税されることなく移管される事になります。)。何も行動しないとこのパターンとなります。
3.いったん売却し新NISA口座で買い直す。
の3パターンになるのではないかと思われます。ロールオーバーに近いのは3つ目となりますので、5年経過時にまだ上昇が見込めるのであれば、3つ目の選択がいいと思います。ただ、売ってしまった後は気持ちもフラットな状態ですので、他に気になる株や投資信託等があれば、比較検討して上昇が見込める方を購入するのが吉ではないかと思います。
積立NISAの方は期間が20年と長い事もあり、まだまだロールオーバーの時期は来ませんが、期間が過ぎると一般口座や特定口座に時価換算で移管される事になります。
③分配金や配当はNISA口座には残りません。
これは悪い面ばかりではなく、運用方法次第ではあるのですが、複利効果を考えた場合、できる限りNISA口座に入れておき、投資金額は大きいままにしておきたいものです。ここで、複利効果って何?と思われる方もいると思いますが、これは投資の元本だけではなく、利益も元本に加え、投資を行っていく事により、より大きな金額を投資していく考え方となります(元本のみを投資していく考え方を単利と言います。)。
例えば『投資元本100万円を年利5%の利率で単利と複利で運用した場合』・・・
単利計算
1年目・・・100万円×1.05=105万円
2年目・・・100万円×1.05=105万円+前年の5万円
・・・
10年目・・・100万円×1.05=105万円+前年までの45万円
20年目・・・100万円×1.05=105万円+前年までの95万円
30年目・・・100万円×1.05=105万円+前年までの145万円
複利計算
1年目・・・100万円×1.05=105万円
2年目・・・105万円×1.05=110万2500円
・・・
10年目・・・155万1328円×1.05=162万8895円
20年目・・・252万6950円×1.05=265万3298円
30年目・・・411万6136円×1.05=432万1942円
となります。単利計算では30年後には150万円の利益(投資金額に対して150%)となりますが、複利計算では332万円強の利益(投資金額に対して332%強)と単利の場合と比べ、倍以上になってしまいます。最初は単利と複利では大きな差は出ませんが、時が経つと共に元本が利益によって雪だるま式に膨れ上がり、大きな差が出てきます。
特に積立投資(つみたて投資枠、成長投資枠問わず)の場合、超長期間の投資期間が想定されます。株の配当金や投資信託の分配金はNISA口座内で再投資されることなく、特定口座もしくは一般口座に無課税で払い込まれることになります。従って、その配当金や分配金の金額分、株価もしくは投資信託の基準価格は下がることになります。まぁ、株式の場合は積立投資での運用は少ないと思われ、スポット買い付けが多い上、『配当が多い=業績が良い』と考えられますが・・・。ですので、分配金の多い投資信託の場合、分配金が多いとお金が手に入ってうれしい反面、複利効果が削がれていることを自覚する必要があります。
ただし、運用方針によっては配当や分配金を重視し、しっかりとした配当&分配金を出してくれる株式もしくは投資信託を選ぶ方針も考えられます。
例えば・・・高齢になり、年金だけでは不足してしまう生活資金を配当や分配金で賄うという運用方針を立てた場合、仮に1800万円の生涯投資枠をすべて投資した場合、年間3%の配当もしくは分配金を頂けたら、年間54万円を頂けることになります。これだけでも老後2000万円問題(モデル家庭では年金収入のみでは月5.5万円ほど生活費が不足するとされています。)の大半を解決することができ、もし、夫婦で最大限活用することができたら月9万円の受取配当金もしくは分配金となり、若干余裕を持った生活を営むことができます。このような運用方針も当然アリだと思います。これは未来に向けて資産増加を念頭に置くか、今をゆとりを持って生活することを念頭に置くかで方針を考える必要がありそうな気がします。
と・・・ここまでが制度上の注意点となります。上手く説明できたかわかりませんが、次の私的な注意点はもっとぐだぐだな文章となる気がします。時間と寛大な心をお持ちの方は次のブログをお待ちくださいませ。