令和7年度税制改正大綱の・・余り物?

さて・・・前回、前々回と令和7年度税制改正大綱について書いてきましたが、今回は書き洩らしたものの中で、私たちの生活に関係ありそうなものを書いていきたいと思います。書き洩れたものの中で一番大きなものは特定親族特別控除の創設でしょうか。まぁ、これは前回のブログのところで書くかどうか悩んだのですが、ボリュームの関係上、こちらに回しちゃいました。それ以外にも・・・子育て世代の住宅ローン減税の延長、子育て世代の生命保険料控除の拡充、結婚・子育て資金の一括贈与における非課税の延長、ガソリン税における暫定税率の廃止などが盛り込まれています。まだまだ色々書いてあるのですが、私たちの生活に密接に関係するのはこのくらいかなぁ。
順に見ていってみようと思います。
①特定親族特別控除(新設)の創設
②子育て世代の住宅ローンの減税拡充の延長
③子育て世代への生命保険料控除の拡充
④結婚・子育て資金の一括贈与における非課税制度の延長
⑤ガソリン税における暫定税率の廃止
①特定親族特別控除(新設)の創設
これは・・・103万円の壁の議論の時に話題になったお話ですね。働く学生さんが働きすぎて、お給料を貰いすぎると・・・そのお父さん・お母さんの扶養控除が無くなっちゃって、親の世代の手取り額が減っちゃうというお話がありました。特に大学生のお子さんの場合は、結構アルバイトしたりしますので、超えちゃって・・・お父さん・お母さんを困らせる場合が多いのではないかと思います。そこで大学生世代のお子さんに限ってですが、特定親族特別控除というものが新設されました。
具体的な特定親族特別控除の話に入る前に扶養控除は扶養される人の年齢によって所得控除される金額が変わります。どのようになっているかと言うと・・・
扶養する親族の年齢 | 所得税控除額 | 住民税控除額 |
16歳~18歳 | 38万円 | 33万円 |
19歳~22歳 | 63万円 | 45万円 |
23歳~69歳 | 38万円 | 33万円 |
70才以上①※ | 48万円 | 38万円 |
70才以上②※ | 58万円 | 45万円 |
※70才以上の②は直系尊属で同居している場合、①はそれ以外の場合です。
※年齢は基本的には前年12月31日現在で考えます。
と・・・こんな感じになるのですが、今回関係あるのは2列目の19歳~22歳までの、まぁ、大学生世代の特別親族と言われる世代の控除となります。まさにこの時代はアルバイトしまくって遊びまくる・・・(って、べんきょーせーよっ!って突っ込みはなしです。)楽しい世代であるのですが、アルバイトしすぎると両親の手取り額が減っちゃうという事態になりかねません。
しかも、この年頃のお子様を持つという事は、ご両親も働き盛り世代であり、ある程度の高給を頂いていることが予想されます。仮に所得税20%掛かるお給料を貰っている場合、所得税で12.6万円、住民税で4.5万円、合計17.1万円の減税効果が受けられなくなりますので、大きな問題です。
これまでにおいてどの程度までアルバイトで稼いでも問題なかったかというと・・・所得で48万円、お給料だけであれば103万円を超えたら、この扶養控除は無くなってしまい、学生さんが働き控えをしてしまう事になっちゃいます。だから、この問題も(学生さんの)103万の壁と言われていたのですね。
その問題を解決するために特定親族特別控除が新設されたのですが、どのように変わるのかというと・・・下の表の様になります。
お子様の合計所得金額 | 所得税の所得控除額 | 住民税の所得控除額 |
58万円超~85万円 | 63万円 | 45万円 |
85万円超~90万円 | 61万円 | |
90万円超~95万円 | 51万円 | |
95万円超~100万円 | 41万円 | 41万円 |
100万円超~105万円 | 31万円 | 31万円 |
105万円超~110万円 | 21万円 | 21万円 |
110万円超~115万円 | 11万円 | 11万円 |
115万円超~120万円 | 6万円 | 6万円 |
120万円超~123万円 | 3万円 | 3万円 |
123万円超 | 0円 | 0円 |
なんとなーく見たことあるような表ですね。たしか・・・配偶者特別控除もこんな感じで段階的に控除額が落ちていく感じだったと思います。ただ、その金額自体は違いますので、まったく同じという訳ではない様です。
この表を見ると・・・所得金額が85万円まで(お給料のみで言うと150万円まで)働いても特定親族特別控除として、ご両親は満額の控除を受けることができる様になります。それ以上働くと控除額が段階的に引き下げられ・・・所得金額123万円(お給料で言うと188万円)を超えると、ご両親の特定扶養控除(特定親族特別控除)が無くなっちゃうことになります。
ですので、大学生世代の皆さんのアルバイトとしては・・・お給料150万円までは何も考えずアルバイトができ、それを超えると、ご両親の扶養控除の減額を気にしながらアルバイトに精を出す・・・と言う風になりそうですが、国民健康保険の扶養の範囲内である130万円というのが両親に扶養されている大学生世代の方の年収の壁になるような感じがします。
②子育て世代の住宅ローンの減税拡充の延長
次に子育て世代の住宅ローン控除の延長です。これは居住用の認定住宅等を自分が住むために購入又はリフォームし、住宅ローンを組んだ場合、その残高に対して一定割合の所得税の税額控除(引ききれない場合は住民税からの税額控除もありますが、限度額があります。)を受けることができる制度です。細かな条件はありますが、今回は延長のお話ですので置いておいて・・・その適用を受ける住宅ローンの限度額は以下の様になっています。
住宅の種類 | 子育て世代 | それ以外 |
認定住宅 | 5000万円 | 4500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4500万円 | 4000万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4000万円 | 3500万円 |
その他の住宅 | 0円 | 0円 |
この金額を限度額として住宅ローンに0.7%を掛けたものが所得税から減税(13年間)されるのですね。まぁ、金利上昇の局面であり、大変ありがたいのですが・・・満額適用できる人はそこまで多くない気がします。仮に認定住宅を5000万円以上の住宅ローンを組んでマイホームとして購入した場合、子育て世代の場合、35万円の住宅ローン控除を受けることができるのですが、所得税で35万円というのは結構なボリュームです。住民税からの控除もあるのですが、これは『前年度の課税所得の5%もしくは97500円の低い方ですので、それなりの高給取りでないと、満額適用は難しいかもしれません。
また、この子育て世代の定義、認定住宅等の定義は以下の様になっています。

子育て世代とは・・・
①40歳未満で配偶者がいらっしゃる方
②40歳以上で配偶者が40歳未満の方
③19歳未満のお子様(扶養親族)がいらっしゃる方
これらのどれかを満たしている事となります。
認定住宅等とは・・・
・認定住宅
『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』に基づき、住宅を良い状態で長持ちさせるために決められた基準で設計・申請し、都道府県知事・市区町村長に認定された住宅の事です。
認定基準は劣化耐性や耐震性、省エネルギー性など、多岐にわたります。
・ZEH水準省エネ住宅
ZEHというのはゼロエネルギーハウスの事で、年間の一次消費エネルギー量を±0以下にする住宅の事です。そこに『水準』という文字が付くと、プラマイ0にするには太陽光発電等が必要だけど、太陽光発電等を付けなくて、家だけその基準を満たせばいいよーという事になります。具体的には『断熱等性能等級5』と『一次エネルギー消費量等級6』を一緒に満たすとZEH水準省エネ住宅となります。まぁ、太陽光発電がないだけ、お安くはなりますね。将来の電気代を考えると、太陽光発電有り無しのどちらがお得か分からない部分もありますが・・・。
・省エネ基準適合住宅
これはZEH水準住宅をちょっとだけ甘くした感じかなぁ。『断熱等性能等級4以上』、『一次エネルギー消費量等級4以上』の条件を満たす住宅となります。まぁ、これにおいては今年の4月から義務化となりますので、これ以下の認定基準の住宅は基本作られなくなると思います。
注意点としては、この認定住宅等以外の家を建ててマイホームとする場合、住宅ローン控除が0となってしまう事です(中古住宅の場合は上限2000万円(10年間)となります。)が・・・省エネ基準適合住宅が義務化されますので、その心配も少ないのかなぁと思います。また、私が住む鳥栖市での住宅販売のチラシを横目で見てみると・・・最近は値上がり気味ではあるものの、5000万円を超える物件はそうそう見当たりませんので、限度額いっぱい使うのは結構難しいかもだなぁ(都会では確実に越えそうですけど・・・)。
③子育て世代への生命保険料控除の拡充
生命保険料控除・・・これは旧契約(平成23年いっぱいまでに締結した契約)と新契約(その後に締結した契約)によって扱いが違うのですが、今回は新契約でのお話となっています。
新契約には『一般生命保険料』、『介護医療保険料』、『個人年金保険料』と3つの分類があり、所得税においてはそれぞれのカテゴリで4万円を限度(合計12万円)までの所得控除を受けることができます。それぞれのカテゴリでの所得控除金額は以下の様になっています。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
2万円以下 | 支払保険料の全額 |
2万円超~4万円 | 支払保険料×1/2+1万円 |
4万円超~8万円 | 支払保険料×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
その中で・・・一般生命保険料だけではあるのですが、下記の様に上限額が6万円に引き上げられる事になりました。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
3万円以下 | 支払保険料の全額 |
3万円超~6万円以下 | 支払保険料×1/2+1.5万円 |
6万円超~12万円以下 | 支払保険料×1/4+3万円 |
12万円超 | 一律6万円 |
ただ・・・これにも条件があって、23歳未満の扶養親族がいらっしゃる場合のみとなっています。また、一般生命保険料の控除額上限は6万円にはなるのですが、すべてを合わせた控除額の上限が14万円になるのではなく、12万円のままとなっており、この生命保険料控除をフル活用している方にはあまり関係ない変更になりそうです。
でも、この大学生世代までを想定していると思うのですが、お子様がいらっしゃる世帯において、主な働き手(お父さんもしくはお母さん)に不幸にも万が一の事が起こった場合、経済的に立ち行かない可能性が高いと思います。ですので、この一般生命保険を多めに掛け、リスクヘッジすることも大いにアリではないかなと思われます。それを考えると、この上限拡充はいい改正なんじゃないかなぁと思います。
ちなみにこの生命保険料控除のカテゴリとしては次のようになっています。まぁ、このこのカテゴリにおいては年末あたりに送られてくる年末調整用の保険料の支払い報告はがきに対象の保険がどのカテゴリなのかは記載してあるのですけどね。

・一般生命保険
一般生命保険は定期保険や終身保険、収入保障保険と言った主に保険を掛けられている人(被保険者)が不幸にもお亡くなりになったり、高度障害になって働けなくなったりしたときに保障される保険です。万が一の為の保険となっており、特にお子様がいらっしゃる世帯に置いては・・・保険をあまり好まない私であっても・・・残された家族の生活に必要な金額を計算した上で、過不足なく掛ける事が必要な保険じゃないかなぁと思います。
・介護医療保険
医療保険やがん保険、介護保険など、病気や入院などを契機に保険金が支払われる保険となっています。病院代等もバカにはなりませんので、その分を補填する保険ですね。保険をあまり好まない私としては・・・ある程度の資産をお持ちの場合(入院費等で生活が困窮する場合は別ですが)ですが、保険で病院費用を支払うより、保険料を投資などに回し、自分の資産から病院代を払った方が良い気がします。
・個人年金保険
これは老後の年金を目的とした保険で、老後資金の足しにする為に掛ける保険となっています。生命保険料控除の対象になるためには、その保険自体にある程度条件がありますが、この控除を受けることができれば、その控除分ディスカウントして老後資金を目的とした保険を掛けることができそうです。まぁ、私としては個人年金保険で老後資金を賄うのであれば、その保険料をiDeCoやNISAを活用して老後資金を確保した方が良い気もします。
この生命保険料控除においては金額は違えど住民税においてもあるのですが・・・それがどうなるのか・・・『所要の措置を講ずる』とだけありますので、今後なんか何らかの話が出てくるかもしれませんね。
④結婚・子育て資金の一括贈与における非課税制度の延長
これは2年間の延長だけだから、サクッと流しちゃいますねー。
結婚、子育てにはお金が掛かりますよね・・・。大変なことだ・・・。
ですので、その費用について直系尊属(ご両親やおじいちゃん、おばあちゃんなど)から贈与があった場合、その一定額は贈与税の対象からはずしちゃおーっていう措置があります。まぁ、銀行などと資金管理契約をしたり、その結婚、子育て目的でお金を使う度に領収書を提出しなくてはいけなかったり・・・と、かなりめんどくさい面もあるのですが、非課税枠は積極的に利用したい所でもあります。
この非課税制度は期限付きの制度なのですが、これが2年間延長される事になりそうです。延長前が2025年3月末まででしたので、2027年3月末までになったのですね。結婚・子育て資金の援助を受けたいなぁって思っている場合は急がなくてもよくなった感じかなぁ。
ちなみに金額は1000万円(内、結婚費用に関しては300万円まで)までとなっています。
⑤ガソリン税における暫定税率の廃止
これは書こうかどうしようか悩んだのですけども、いちおー税制改正大綱に書いてありましたので、書いておきます。というのも、『いわゆる「ガソリン税の暫定税率」は廃止する。上記の各項目の具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進める』とだけ書いてあり、また、同じ文脈で『いわゆる「103万円の壁」は国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる』とありますので、なんとなーく努力目標の域を出ない感じもするんですよねぇ。当然、いつから廃止するなんて全然触れていませんし・・・。期待しないで待っておきましょって感じじゃないかなぁと思います。
ちなみに今のガソリンのお値段はどの様に決まっているかというと・・・下の図の様になっています。


・本体価格・・・本来のガソリンの価格です。
・本則税率・・・28.7円。本来の税金です。
・特別税率・・・25.1円。今回話題になっている暫定税率です。
・石油税 ・・・2.8円。石油石炭税と温暖化対策税を合わせたものです。
・消費税 ・・・10%。上の4つに消費税を加えます。
今回は真ん中の特別税率である暫定税率の25.1円を廃止しようかどうしようか・・・と言う話になっているのですね。まぁ、石油元売りに対する補助金も削減されている昨今、この25円がガソリン代から引かれるとかなり影響大きいですね。この施策が実現されると私もドライブの回数が増えそう?ですので、国民民主党には頑張って実現させてほしいものです。
と・・・今回は前回、前々回で取り上げなかった令和7年度税制改正大綱の余り物?を書いてみました。まぁ、まだまだ色々と書いてはあったのですが、私たちの生活に色濃く影響しそうなものはこんな感じかなぁと思います。書けてないものもありますので、興味がある方は一度読んでみてもいいのではないかなぁと思います。難解(私には理解できなかったものも多かったです💦)ではあるものの、意外にハマったりしちゃうかもw。
と・・・今回のお話に関係ありそうなリンクを貼っておきますね。
自民党『令和7年度税制改正大綱』
国税庁『扶養控除』
国土交通省『住宅ローン減税』
国税庁『生命保険料控除』
国税庁『直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税』
※税制改正大綱以外のリンクは現在の制度で、大綱を織り込んだものではないです。
今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。