その壁を・・・ぶっ壊せっ!
今回の衆議院選挙で自由民主党・公明党の過半数割れとなり、政治の世界が混とんとしてきましたね。総理大臣はなんとか少数与党のまま、石破茂さんが勤める流れになっています。しかしながら、今までの様に法案を通す時に自民党内のみでの協議で済ませる訳にはいかないようになりました。そこで・・・キャスティングボードを握ると脚光を浴びているのが国民民主党となります。
その国民民主党の公約として『103万円の壁を178万円まで引き上げる』、『消費税減税』、『ガソリン税のトリガー条項の撤廃』、『再エネ賦課金撤廃』、『診療における高齢者窓口負担の変更』・・・などなど、様々なものが挙げられましたが、どの程度が実現するのでしょうか・・・?
今回はその公約の中において、今巷を騒がしている・・・103万円の壁の引き上げについて書いていきたいと思います。また、最後に完全な蛇足ではありますが、私なりに足りない頭で考えた、どのような対策がいいかなぁって言うのを書いてみたいと思います(突っ込みどころ満載なのは勘弁してくださいね💦)。
①今、協議されている103万円の壁って?
②どのような公約で、どんな影響がありそう?
③その有用性はどんな感じ?
④私的にはどうしたらいいと思う?
①今、協議されている103万円の壁って?
自民党・公明党・国民民主党で協議されている103万円の壁ですが、これはどのような壁なんでしょう。
お給料に対する壁はたくさーーんあって、その中の1つですが、その壁を簡単に挙げていってみたいと思います。
◇100万円の壁
100万円の壁とは住民税が掛かるかどうかのラインの事で、100万円を超えると・・・10%の所得割+5000円(お住いの市町村で若干違います。鳥栖市の場合は5500円)の均等割が掛かる事になります。今回の協議の結果、住民税の基礎控除額が増額になると、壁の上限が上がる可能性があります。
◇103万円の壁
現在協議されている壁となっており、このラインを超えると所得税が掛かる事になります。所得税は超過累進課税となっており、その課税所得により5%~45%の税率となります。住民税の所得割は一律10%ですが、こちらは稼げば稼ぐほど、税率が上がる事になります。
◇106万円の壁
これは税金の壁ではなく、社会保険の壁となっています。他にも条件はありますが、この壁(月のお給料8.8万円)を超えると厚生年金保険・健康保険への加入となります。また、この壁の条件の一つに会社規模条件がありましたが、今年の10月より51人を雇用する会社(それまでは101人以上でした。)に勤めている方が対象となりました。この壁に対しては別件ではありますが、会社規模・賃金要件(106万円の壁)を撤廃するかどうかの協議が行われています(まぁ、これは前々からの流れだったからなぁ。いずれそうなると思います。)。
◇130万円の壁
これも社会保険の壁となっています。上記106万円の壁の対象ではない方(50人以下の規模の会社で働いてらっしゃる方など)が国民健康保険・国民年金に自分で加入しないといけなくなる壁が130万円の壁と呼ばれます。
106万円の壁は手取り額が減るものの出産手当金や傷病手当金(健康保険)の給付や老齢厚生年金が老後にもらえたり、障害厚生年金や遺族厚生年金が貰えたりして、お得な面もあるのですが・・・この130万円の壁の方は壁を超えるメリットがほぼなく、かなりたっかーーーい壁となっているのではないかと思います。
◇150万円の壁
これはパートなどで働く方の配偶者の方の税金に係る壁となっています。パートなどで働いてらっしゃる主婦(主夫)の方の配偶者の方の『配偶者特別控除』と呼ばれる所得控除が減額され始めるラインが150万円となります。本来ならパートなどで働いてらっしゃる方のお給料が103万円を超えると、メインで働いてらっしゃる方の扶養控除(38万円)は無くなっちゃうのですが、配偶者の場合はこの配偶者特別控除がある為、150万円までは満額の38万円が配偶者特別控除としてメインで働いてらっしゃる方のお給料から所得控除されることになります。
ただ、大学生のお子様などの場合はこの配偶者特別控除は適用されませんので、従来の扶養控除である103万円を超えちゃうとお父さん・お母さんの扶養控除が無くなってしまう事になります。
◇201万円の壁
上の配偶者特別控除はお給料が150万円を超えちゃうと全部なくなるのではなく、段階を踏んで減額されて行きます。その最後の段階・・・配偶者特別控除が0円になるパートなどで働く方のお給料が201万円(正確には201万6000円)となります。まぁ、この辺までパートなどでのお給料が増えていると、あまり気にならないのではないかなぁとも思います。
この中で今話題に上がっているのは・・・基礎控除を75万円上げるかどうかの話題ですので、100万円の壁と103万円の壁という事になります。
②どのような公約で、どんな影響がありそう?
この所得税の壁について・・・今回の選挙において国民民主党が『手取りを増やしますっ!』という事で、103万円の壁の上限引き上げ(基礎控除額引き上げ)を公約に上げ、それに加え政権のキャスティングボードを握ったことにより、今、性急に議論を行っている所となります。なんか、盛り込む感じで議論が終わり、今は時期と金額をどうするか・・・と言う感じになっていますね。まぁ、これにおいては12月ぐらいに出る税制大綱にどのように織り込まれて行くのか・・・固唾をのんで見守る・・・と言う所でしょうか。
で、国民民主党の主張が満額通った場合の影響ですが、国民民主党の玉木代表のX(ツイッター)に下のような表がありましたので、抜粋させていただきました。リンクはX(ツイッター)に張るのもなんですので、国民民主党のHPにしております。
年収(給与所得) | 現在の負担額 | 控除引き上げ後 | 減税額 |
200万円 | 9.1万円 | 0.5万円 | 8.6万円 |
300万円 | 17.4万円 | 6.1万円 | 11.3万円 |
500万円 | 38.0万円 | 24.7万円 | 13.2万円 |
600万円 | 51.1万円 | 35.9万円 | 15.2万円 |
800万円 | 91.4万円 | 68.6万円 | 22.8万円 |
1000万円 | 141.5万円 | 118.7万円 | 22.8万円 |
国民民主党玉木雄一郎さんXより抜粋
どの年収帯の手取り額もアップすることにはなるのですが、所得税が超過累進課税である影響もあり、お給料が上がるほど減税額が多くなるのは気になるところです。しかしながら、確かに基礎控除が国民民主党における主張の満額まで引き上げられると、かなりの手取り増加が見込まれそうです。
しかしながら、これだけの大幅減税を行った場合、約7.6兆円の税収減が見込まれるとの試算もされており、財政的にはかなり厳しい所となりそうです。特に都道府県や市区町村においても住民税の減収を伴いますので、かなり財政が厳しくなる都道府県・市区町村も出てくるのではないかと危惧する声が多数上がっています。
③その有用性はどんな感じ?
7.6兆円の減税を伴う・・・今回の税改革ですが、その有効性はどうなんでしょう。これは何を目的にこの減税を行うかによって違ってくるのではないかなぁと思います。私の無い頭で考え得る目的は次の2つで、こんな感じになるんじゃないかなぁ・・・と思います。
1.単純にみんなの手取りを増やす
この目的は一部達成されると思います。ある一定以上のお給料を頂いていらっしゃる方であれば、この減税が行われた場合、自動的に手取り額が増える事になります。ですので、その点においては目標達成できると思います。ただ、パートなどで上の税・社会保険の壁を意識して働いてらっしゃる方にとって、その方自身の住民税・所得税は・・・実は壁ではないと思うのです。言うなれば・・・お給料が上がっていく都度、少しずつ負担が増えていく『坂』なのではないかなぁと思います。パートなどで働いてらっしゃる方の壁はそこじゃないんじゃないかな?というのが素直な感想です。
これにおいては今現状の税負担で103万円から給料が上がるごとの所得税・住民税の負担額の表を作りましたので、大体こんなかんじなのかなぁ・・・と見ていただければと思います。
お給料 | 所得税 | 住民税 | 合計 | 差額 |
103万円 | 0円 | 10000円 | 10000円 | ー |
110万円 | 3500円 | 14500円 | 18000円 | 8000円 |
120万円 | 8600円 | 24500円 | 33100円 | 15100円 |
130万円 | 13700円 | 34500円 | 48200円 | 15100円 |
140万円 | 18800円 | 44500円 | 63300円 | 15100円 |
150万円 | 23900円 | 54500円 | 78400円 | 15100円 |
※社会保険料控除は考慮に入れていません。基礎控除と給与控除のみで計算しております。
※所得税には復興特別税が含まれます。住民税の均等割りは5000円で計算しております。
このお給料帯であれば、お給料10万円上昇に対して15100円程度の税負担上昇(約15%の負担)となり、突然がっつり税金が上がるという訳ではなく、お給料が上がるにつれて緩やかに税負担が上がるという事になります。という事は、この所得税・住民税を意識して働き方を抑える事は少なく、もっと別の壁が働き控えを起こしていると考えられます。そして、壁が他にあるのであれば、この基礎控除額が引き上げられても、他に存在する壁を意識し、この基礎控除額の増額(減税)の恩恵も受けられない(手取りは増えない)のではないかと思われます。
という事で、現在フルタイムで働いてらっしゃる方など、壁を全部突破している方においては自動的に手取り増となり、年収の壁を意識し、調整しながら働いてらっしゃる方にとっては手取り増とならない税政策になるのではないかと思います。
2.主婦(主夫)、学生アルバイトの労働時間を増やし、人手不足を解消する
まぁ、これの答えは1.で書いたので終わった感じもするのですが、これについては・・・基礎控除額の増額(減税)だけでは如何ともしがたいのではないかと思います。この103万円の壁があまり意識されていないのであれば、この壁を遠のけたところで・・・働き控えが無くなり、パートなどで働いてらっしゃる方がより長い時間働いてくださるとは思えません。
という事は、他の壁との調整が重要になってくると考えられます。
④私的にはどうしたらいいと思う?
うーん、手取りを増やす政策・・・うれしい・・・嬉しいんだけど、なーんか費用対効果がなぁ・・・って感じもします。確かに、基礎控除額を上げると手取りは上がり、消費も増え、経済も回っていく感じもしますが・・・。減税目的であれば十分『ありっ』な政策とは思うのですが、国の政策であっても、会社の施策であっても、費用は小さく、効果は大きく・・・を狙うのが基本ではないかなぁと思ったりもします(なんか批判的だなぁ・・・。基本はうれしいのですよ?基本は・・・)。
今回の減税政策においては上で書いた『手取り増加』と『働き控え対策』の2つの鳥を落としたいと思うはずです。では、どうしたらいいのか?・・・足りない私の頭で考えてみました。手取り増加に関しては今回の基礎控除額の増額で十分対応できると思いますので、もう一つの狙い・・・働き控え対策について考えてみたいと思います。この働き控えにおいて、壁は4つあるのではないかなぁと思います。『もう一つの103万円の壁』、『106万円の壁』、『130万円の壁』、『会社独自の扶養手当の壁』です。これらについて何かいい手はないかと考えてみました。まぁ、稚拙な案ですので、お暇な方のみもうしばらくお付き合いくださいませっ。
1.もう一つの103万円の壁について
これは主に大学生さんだと思うのですが、ご両親の扶養控除に入る学生さんがアルバイトを行った場合、103万円を超えるとご両親(収入が多い方になるケースが多いと思います。)の扶養控除が無くなっちゃうことです。また、大学生の期間は『特定扶養親族』と呼ばれ、扶養控除の額が増額されます。通常の扶養控除の場合は所得税38万円、住民税33万(お年寄りを扶養する場合は若干増えます。)の所得控除なのですが、この特定扶養親族の期間は所得税63万円、住民税45万円に扶養控除が増額されるのです。まぁ、大学における学費は多大になる事が多いと思いますので、それに対する配慮なのではないかなぁと思います。
そして、ちょうどその頃は・・・ご両親も稼ぎ時な年齢であることが多く、仮にご両親のお給料に対する所得税率20%、住民税率10%であったと仮定した場合・・・
所得税 63万円 × 20% = 12.6万円
住民税 45万円 × 10% = 4.5万円
合計 17.1万円
と、対象の大学生さんご本人からの減少ではないものの、ご両親の手取りが17.1万円も減ってしまう事になるのです。そりゃー、ご両親も『103万円以上働くなよ?』っと息子さんもしくは娘さんに厳しく命令するわけです。
まぁ、ここにおいては『学生さんの本分はアルバイトじゃなく勉強でしょ?』という突っ込みは置いておきます。
という事で、1つ目の壁は扶養控除における103万円の壁となるのですが、これは学生である事を証明したら撤廃する・・・もしくは200万円程度まで引き上げれば、即解決するのではないかと思います。同時に配偶者特別控除も150万円を超えると階段状に減っていくのですが、これも同様に引き上げを行うとパートタイマーさんの働き控えも減るのではないかと思います。
これに関しては、今、働き控えを行っているのであれば、その限界点が伸びるだけですので、実質費用は掛からない(税収入は減らないもしくは微減)のではないかなぁと思います。
2.106万円の壁について
これは社会保険の壁なのですが、今まさに撤廃する様に協議がなされていますね。ただ、撤廃すると将来の保障が増えたり、病気や怪我、出産などで働けない時の保障があったり、良い面もあるのですが、手取り額は結構減ってしまいます。ざっくりですが、お給料の額面額の15%程度でしょうか。労使折半での支払いとなりますので、企業の費用負担が増える事も特に中小企業におていは問題となりそうです。これにおいては助成金制度などもあるのですが・・・なかなか認知が進まないのが現状かもしれません。
この問題はいい面も悪い面もあり、如何ともしがたい所ではありますが、私の無い頭で考えると・・・低等級(健康保険は50等級、厚生年金は32等級に分かれています。)の方の保険料率を下げて、等級が上がるごとに段階的に引き上げを行い、なるべく壁ではなく坂にする調整が必要かもしれません。これについては労使折半な所を使用者への配分を上げてみては?など議論が行われていますが、新規適用が増えて費用増加もある上に、そんなことまでできる企業さんはどれだけあるのだろう・・・って思っちゃいます。特に中小企業には厳しいのではないかなぁ。
また、収入要件を外すという話も出ていますので、それであれば、外すと同時に1等級(健康保険は63000円未満、厚生年金は93000円未満)の下に後1つか2つぐらい等級を作って、少ないお給料の人が過大な保険料を払う事が無いようにする配慮も必要かなぁと思います。
この施策は低所得の方の保険料率を下げる事が含まれますので、多少費用が掛かるというか、健康保険料・厚生年金保険料が減ってしまう可能性もあります。適用人数が増えますので、その分でカバーできるかもしれませんが、税金からのフォローが必要な可能性がありそうです。
3.130万円の壁について
これは超えてしまうと全くいい事がない、絶対に越えたくない壁となります。上の社会保険適用範囲が広がれば、かなり対象人数は減るとは言え、個人に雇われている方など・・・現状では0にはなりません。
この壁を越えてしまうと・・・どの程度悲しい事になるかというと、配偶者の方は第3号被保険者から外れる事になり、国民健康保険・国民年金の保険料を支払う必要が出てきます。お子様の場合においても・・・扶養から外れ、国民健康保険料の支払いが生じます(国民健康保険料は扶養に入ろうと外れようと20歳になったら払わないといけませんっ!)
もし、配偶者の方が第3号被保険者から外れた場合は令和6年度(鳥栖市40歳以上、給与収入131万円)で考えてみると・・・
国民年金保険 16980円 × 12か月 =203760円
国民健康保険 医療分72700円 + 支援分24000円 + 介護分21100円 =117800円
合計 321560円
と、保障の上乗せとか何もいいことないのに・・・年間32万円を超える負担が発生します。うーん、これは絶対に越えたくないですよねぇ。という事で、主婦(主夫)のパートタイムで働いている方でこの壁を越える方はごく少数ではないかと思います。という事は、この上限金額である130万円を大きく上げても保険料収入は大きく変わらないのではないかと思います。これも思い切って200万円ぐらいに上げると・・・働き控えは大きく減るのではないかと思います。追加費用も大きくはならないと思うし・・・。
4.会社独自の扶養手当の壁について
これにおいては働いてらっしゃる会社によって様々なのではないかと思います。扶養する配偶者がいらっしゃる方に手当を出したり、お子様の数によって手当を出したりしている会社さんはよく見かけます。しかも、その扶養の収入要件も会社によって様々なのですが、会社が把握しやすい103万円や106万円、130万円未満のお給料の配偶者がいらっしゃる方に支給する・・・としている会社さんが多いのではないかと思います。
当然、この手当の額が多いと・・・扶養される配偶者の方において給与設定額を超えてしまうともらえなくなりますので、働き控えが起こりえます。
これに関してはお勤めの会社次第・・・という事にもなるのですが、収入要件を緩和もしくは無くすか、出来る限り他の手当(子女手当など)に振り分けてしまうのがいいのかなぁとも思います。ただ、会社は星の数ほどありますし(って、言いすぎ?)、動きとしては徐々に・・・と言う感じになるのかなぁと思います。ちなみに公務員においても徐々に配偶者に対する手当はなくす方向の様ですね。
ちなみに基礎控除に対する私の考え方ですが・・・実際は変更なくてもいいかなぁ(おっと、爆弾発言だ💦)と思ってたりもします。所得税・住民税は収入に応じて上がっていきますので、壁にはなりえませんし、手取りが103万円を超えたからと言って、劇的に収入が減少してしまうという事もないですから。そして、すこーしずつ税金を負担していただいて、今回書いた分で必要な費用に充てるっと・・・すると、働き控えをしてた方の手取り額も増え、『減税なき手取り増加・働き控え対策』ができるのではないかなぁと思ったりもします。ちょっと手取り額増加の方はインパクトが足りないでしょうか・・・。まぁ、そう思う私は夢見がちなのかなぁ。
と、ここまで政策批判の様な論調になってしまいましたが、最近巷を賑わせている『103万円の壁引き上げ問題』について書いてみました。本当はもうちょっと穏便に書きたかったんだけどなぁ・・・まぁ、いっか。
今回の減税によって国の運営、地方自治体の運営がどのようになるのか・・・そして、どの程度の基礎控除金額の引き上げが行われるのか(行われるのは確定したみたいです。)・・・固唾をのんで見守っていきたいと思います。私的には小幅な引き上げでとどまって、上のような事に対する議論が深まるといいなぁ・・・と思っています。
最後にリンクを貼ろうかとも思ったのですが、適当なのが見つからなかったので、厚生労働省の助成金のページを貼っておきます。
厚生労働省『年収の壁・支援強化パッケージ』
今回も乱筆乱文、失礼しましたっ。